「あんぱん」寛先生(竹野内豊)の戒名になるほど…人柄を表すようでGJだ

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-05-27 16:07
投稿日:2025-05-27 14:35

第8週「絶望の隣は希望」#42

 寛(竹野内豊)が亡くなり、悲しみに暮れる柳井家。千代子(戸田菜穂)はのぶ(今田美桜)と弔問に来た羽多子(江口のりこ)を誘って献杯する。草吉(阿部サダヲ)は、帰って来たのぶに、嵩(北村匠海)に持っていくようにとあんぱんを渡す。そのころ嵩は、空き地のシーソーにポツンと座っていた。

 寛の言葉が次々に浮かび、涙を流す嵩。そんな嵩に、のぶはそっとあんぱんを差し出し、寛への後悔を口にする嵩にそっと寄り添う。

【こちらもどうぞ】「あんぱん」のぶの決断に寅子を思い出す…朝ドラヒロインから現代女性へのメッセージか?

【本日のツボ】

醫光慈寛信士

 ※※以下、ネタバレあります※※

 月曜早々、寛先生(竹野内豊)が亡くなり、その悲しみも癒えぬまま、本日はもう遺影でのご登場で驚きました。戒名は「醫光慈寛信士」。醫は医者の医の旧字です。“慈悲深く、町の人の光となった医者、寛”というような意味の、まさに寛先生のお人柄がわかる素敵な戒名です。天宝和尚(斉藤暁)がつけたのでしょうか。グッジョブです。

 ちなみに余談ですが、“信士”はランクでいうとそこそこ。その上には、居士、院信士、院居士……などとまだまだありますから。

 柳井家は、お手伝いさんもいて、洋食を愛し、モダンな暮らしぶりをしていたので、てっきりお金持ちかと思っていましたが、案外、そうではなかったのかもしれません。ご霊前もあまりにも質素でしたし。時代なのか土地柄なのか、なにか事情があるのかもしれませんが……。

 それにしても、寛先生は御免与町で唯一の医者、みんなが世話になっている人で、町をあげてのお別れシーンがあってもよかったのでは!? そういう場面もなく、なぜかのぶと羽多子だけが弔問に訪れるという不思議。

 夫に先に逝かれた者同士、「ウイスケ(ウイスキー)」を吞みながら、想い出話を語り、「あの人に、怒っちゅうがです」「あてもや」という羽田子と千代子の場面はよかったです。見たところ、水割りではなく、ストレートで吞んでいるようで、さすが高知の女は酒に強い、と感心しました。

嵩のいたたまれない気持ち…

 そのあとの、いつものベンチで嵩による寛先生名言回想シーンもじんとしました。ヤムおんちゃんからのあんぱんをのぶに渡され、ガブッとひとかじりし、噛みしめるように食べて「おいしい」と言う場面もグッときました。これを見て、お口があんぱんになった人は多いはず。本日、日本中のあんぱんが売り切れてしまうかも、です。

 そんなふうに、ヤムおんちゃんのあんぱんに元気をもらった嵩でしたが、「うちは嵩の一番古い友達やき」というのぶの言葉に、想いを告げることはできませんでした。「のぶちゃん、ずっと伝えたかったことがあったんだ。ぼくは……やっぱりいいや。のぶちゃんのいうとおり、のぶちゃんは僕の一番古い友達だから」。

「これからもよろしく」「こちらこそ」と、お互いに言い合った後のなんともいいようのない間が、嵩のいたたまれない気持ちを表しているようにも見えました。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


茨田りつ子の覚悟、ラスト3分の急展開!弟子入り志願者の名に一抹の不安
 警察から解放されたスズ子(趣里)は、三尺四方の中だけで自分の歌を表現するのは難しいと悩んでいた。  警察署で自身...
桧山珠美 2023-11-28 15:27 エンタメ
日中戦争の影響じわり、スズ子が「カカシみたいなワテ」になった
 スズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)が東京で一緒に暮らし始めて1年、梅吉は何をするわけでもなく酒を飲むだけの毎日を過ごして...
桧山珠美 2023-11-27 15:10 エンタメ
羽生結弦を癒すのはプーさん…自由に恋愛もできないなんて気の毒過ぎる
 羽生結弦にはまったく驚かされてばかりです。  今年、8月4日に電撃婚を発表したときも、ビックリでしたが、そのわず...
地殻変動!下剋上球児、うちの弁護士…視聴率では見えないバズり作品は
 シリーズものを除いた主要民放プライム帯ドラマ全12作の全話平均視聴率が5.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯=以...
こじらぶ 2023-11-25 06:00 エンタメ
ゴンベエ(宇野祥平)の素性が明らかに…上方新喜劇ばりの人情劇がグー
 ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、スズ子(趣里)は梅吉(柳葉敏郎)と今後のはな湯をどのようにしていくか相談する。  ...
桧山珠美 2023-11-24 16:11 エンタメ
母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ
「下剋上球児」で“令和のキムタク”になりそうなイケメン俳優は?
 2019年のドラマ、「3年A組-今から皆さんは、人質です」(日本テレビ系)を覚えていますか?  菅田将暉が教師役...
「らんまん」のデジャヴ? ヤバ藤化するダンサーの中山、秋山逃げて~
 内緒の話があると松永(新納慎也)から呼び出されたスズ子(趣里)は、梅丸のライバルである日宝に一緒に移籍しないかと誘われ...
桧山珠美 2023-11-14 16:15 エンタメ
木下優樹菜から迸るガチヤンキー魂!前言撤回、TV再登場するタチの悪さ
木下優樹菜様(元タレント・35歳)  やっぱりユッキーナ(木下優樹菜)様のヤンキー魂には惚れ惚れしてしまいます。 ...
堺屋大地 2023-11-14 06:00 エンタメ
市川染五郎は眉毛、堅あげポテト、ラ・マンチャの男なくしては語れない
 先日、歌舞伎で「ルパン三世」をやることが報じられました。題して、新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」。  ルパ...
上原多香子は不倫を繰り返す“恋愛単発ドラマ”の女王!続編不要体質の業
上原多香子様(女優、美容家・40歳)  元SPEEDの上原多香子様は、あまり役者業のイメージはないと思いますが、す...
堺屋大地 2023-11-14 16:23 エンタメ
スズ子覚醒!茨田りつ子(菊地凛子)と渋谷のり子の表情がオーバラップ
 歌うコツを掴んだスズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)とのレッスンを続け、その歌声はぐんと熱を帯びてきていた。  ...
桧山珠美 2023-11-10 14:30 エンタメ
“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...