「あんぱん」戦場での緊迫シーンにホッ。嵩(北村匠海)らの“偶然の再会”、まるでドラマみたい…は禁句です

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-06-16 16:27
投稿日:2025-06-14 12:30

第11週「軍隊は大きらい、だけど」#55

 小倉連隊に動員が下令され、嵩(北村匠海)は中国に行くことに。出発前日、嵩はひとり星を眺める八木(妻夫木聡)にこれまでのお礼を伝え、八木の横顔が描かれたスケッチを渡す。

【こちらもどうぞ】嵩(北村匠海)まさかのスピード出世! …で、階級“乙幹”ってなに?

【本日のツボ】

芸は身を助く!?

 ※※以下、ネタバレあります※※

 いよいよ嵩の所属する小倉連隊も大陸に行くことに。出発前日、嵩が仲間の似顔絵を描いています。酒を飲んで歌を歌って盛り上がる面々。嵩はその喧噪から離れひとり外にいる八木のもとへ。八木の横顔をスケッチしながら、これまでの礼を述べ、話をします。

 そこで、八木がなぜ嵩に肩入れするのかが明かされます。入隊の日に嵩が持っていた井伏鱒二「厄除け詩集」に自分と同じ匂いを感じたから、というものでした。

 持つべきものは「厄除け詩集」ですね。ヤムさん(阿部サダヲ)が言っていた<ハナニアラシノタトヘモアルゾ「サヨナラ」ダケガ人生ダ>(「勧酒」)の訳も載っています。ヤムさんに貰ったものなのかもしれません。

 これまでのお礼です、と八木に自分が描いた絵を差し出す嵩。そんな嵩に、「柳井、お前は俺と違って弱い。弱いものが軍隊でなんとかやっていくには要領を覚え、進級して力をつけるしかない。だが、戦場ではその伍長の階級章なんか、お前を守ってはくれん。弱いものから死んでいく」と八木。

 その言葉に、「自分は、なんとしてでも生きて帰りたいのです。何のために生まれてきたのか、その理由すら、まだわからないから。教えてください。自分のようなものが生き残るにはどうしたら……」と嵩が訊ねると、「弱いものが戦場で生き残るには、卑怯者になることだ。仲間がやられても仇をとろうなんて思うな」と言います。

 そして、翌日。戦場で敵の攻撃に立ち尽くす嵩を八木が庇います。攻撃してきたのは敵ではなく同じ日本兵でした。緊迫シーンがほんの一瞬だけだったのは幸いでした。

 場面変わって、中国の市場を康太と歩く嵩。そこで、岩男(濱尾ノリタカ)と再会。幼なじみ3人の思い出話が弾みます。前にも書きましたが、健ちゃんといい、康太といい、して岩男といい、こんなに偶然の再会があるものなのでしょうか。まるでドラマのようです(笑)。

 それはともかく、八木の横顔を描いた似顔絵をもった上官に「これを描いたのはお前か」と詰め寄られたところで、「ほいたらね!」となってしまいましたが、これは叱られるのではなく、むしろ、部隊の御用達絵描きに抜擢されるという流れになるのでは、と思ったり。芸は身を助く、といいますから。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ
こうでなくちゃ! 志尊淳の正解を「恋は闇」で見た。いい人よりも“妖しい姿”に妄想が駆り立てられる
 新ドラマ「恋は闇」(日本テレビ系)の志尊淳が良きです。  前クールの「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった...
「あんぱん」なんて贅沢!今が旬、河合優実の“目で語る”表現力と色気に驚く。俳優・ソニンのEE JUMP感を消した演技も見事
 なりたい夢を見つけたのぶ(今田美桜)は、女子師範学校合格に向けて猛勉強をし始めるが、成績が思わしくなく頭を抱える。同じ...
桧山珠美 2025-04-21 14:23 エンタメ
怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ
「あんぱん」登美子(松嶋菜々子)の登場が不穏…色っぽいけど。貴島中尉(市川知宏)は“あのキャラ”を意識?
 新聞社に出した漫画で賞金をもらい、ご機嫌の嵩(北村匠海)。一方のぶ(今田美桜)は、パン食い競走で転びそうになったところ...
桧山珠美 2025-04-17 16:02 エンタメ
カトパンへの嫌味に物議…新井恵理那は承認欲求のカタマリか、悪役を演じる聖人か?
 昨年3月、8年間出演して総合司会も務めていたテレビ朝日系の朝の情報番組『グッド!モーニング』を降板したフリーアナウンサ...
堺屋大地 2025-04-17 06:00 エンタメ
【募集】春ドラマ何見る? 面白かった&ガッカリを教えて!『最後から二番目の恋』『あんぱん』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「期待している」「面白...
笠松将、柳楽優弥を超えなければと思っていた。俳優業の“わからなさ”は「自分自身にビビッている感覚」『ガンニバル』シーズン2インタビュー
“この村では、人が喰われているらしい……”    2022年の年末にディズニープラス スターにて独占配信がスタートす...
望月ふみ 2025-04-15 06:00 エンタメ
「あんぱん」嵩(北村匠海)の“ジェラシー”がなんとも可愛い! 寛(竹野内豊)の診察シーンが見たかった
 昭和10年、高等女学校の5年生になったのぶ(今田美桜)は、ある日、貴島中尉(市川知宏)と再会。祭りのパン食い競走で使う...
桧山珠美 2025-04-14 19:03 エンタメ
15分の朝ドラで高揚感を得られるんだ! のぶ&嵩の“子役最終回”が見せた未来の夫婦関係
 久しぶりに登美子(松嶋菜々子)の顔を見て胸がいっぱいになる嵩(木村優来)だったが、登美子は困惑した表情を浮かべる。のぶ...
桧山珠美 2025-04-12 06:00 エンタメ
旧ジャニ会見から1年半、STARTO社の再興成否…CD売上と人権意識から考察、ファンは一体何を望む?
 2023年9月および10月、旧ジャニーズ事務所は創業者問題で2度記者会見を開いた。その後、同社所属タレントのテレビ・C...
こじらぶ 2025-04-12 06:00 エンタメ
「あんぱん」阿部サダヲの配合絶妙な演技。高知つながりで“しょくぱんまん”登場!
 元気のない家族のために力を貸してほしいというのぶ(永瀬ゆずな)の頼みに、草吉(阿部サダヲ)は1回きりの約束であんぱんを...
桧山珠美 2025-04-09 17:20 エンタメ
『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味
 2025年3月31日より、NHK連続テレビ小説『あんぱん』の放送が開始された。国民的キャラクター「アンパンマン」生みの...