渡辺徹とマヨネーズ愛「ありがとう!(撮影)しないでね!」と至福の表情で…
【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#248
渡辺徹の巻
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初めてお会いしたのは役者というより、バラエティー番組には欠かせない人気タレントになられてからでした。関西の有名店のシェフがゲストの好きなものを目の前で提供しながらのトーク番組で「マヨネーズを使った料理」という番組始まって以来、初の「調味料指定」でした。結果、料理は「エビマヨ」に決まり、関西で一番おいしいと評判のシェフに来ていただきました。
渡辺さんは人懐っこいあの笑顔で、ひとりひとりの目を見つめながら、こちらの心の中へ入り込んできそうな親近感あふれる表情で握手をされ、見事な人ったらしぶりに私も一瞬でファンになってしまいました。その後、何度かご一緒しましたが、全く変わらない態度で、まるで旧知の間柄のように接してくださる。自然にこういうことができたから、名だたる女性タレントさんのサブにつかれて存在感を発揮されたのだと思います。
そんな渡辺さんもマヨネーズのこととなると我を忘れて語る語る(笑)。「こんなおいしいものはない」「すべての料理はマヨネーズに通ずる」と大絶賛。マヨネーズ愛はとどまることを知らず「(白ごはんに)かけてかけて! 家じゃ女房に監視されてるからできないんだもん!」とマヨネーズごはんを懇願。お茶碗に少しだけごはんを入れてマヨネーズをかけると「ありがとう!(撮影)しないでね!」と至福の表情で召し上がるのでした。伺いたいことは山ほどありましたが、すっかりマヨネーズに持っていかれました。
渡辺さんが大ファンだったという奥さまの榊原郁恵さんとのなれ初めや結婚話も、「僕が近づこうとする行動が不審だったみたいでしばらく嫌われてました。あとは押しの一手です。朝起きたら隣に郁恵さんがいるのが夢みたいでしたね」と本当にうれしそうに話されていたのが印象的でした。突然の訃報に、あの爽やかな笑顔と奥さまのことを照れながらもうれしそうに楽しそうに話しておられた姿が思い出されました。郁恵さんも「主人のポジティブな考え方に救われました」とコメントされていましたが、本当にいらっしゃるだけでその場が明るく和む太陽のような方でした。
「太陽にほえろ!」で石原裕次郎さんと共演されたお話も「ホントにやさしくしていただいたんですが……初対面で肩を叩かれて『はい!』と答えたんですけど、ガチガチに緊張してて、何を言われたのかわかってないんです」と苦笑。
誰とでもすぐに仲良くなれる卓越したコミュニケーション能力が多くの仲間に愛された理由でしょう。本当に笑顔のすてきな方でした。
(本多正識/漫才作家)
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