“やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
最近、会う人会う人に「『国宝』見た?」と聞かれる。いかにすごい映画かを話したくて仕方がないという感じだ。
映画「国宝」は確かに予告編の段階で、これは見なくてはと思わせる迫力があり、気にはなっていたが、3時間の長丁場に耐えられるのか不安で二の足を踏んでいたが、遅ればせながら今週末に見に行く予定だ。
公開17日(6月6~22日)で観客動員数152万人、興収は21.4億円。公開3週目にして、週末興収ランキング1位を獲得。どんなにゴリ押ししてもダメなものはダメ。逆にいい作品であれば、勝手に広がっていくのが証明された形だ。
歌舞伎の世界を壮大なスケールで描き、主人公の立花喜久雄を演じたのは吉沢亮。長崎の任侠の一門に生まれ、父を抗争で亡くした後、上方歌舞伎の名門の長である花井半二郎(渡辺謙)に芸の才能を見いだされ、歌舞伎の世界に。
世襲が当たり前の歌舞伎界で才能を武器に希代の女形として脚光を浴びていく……。
吉沢とライバル役の横浜流星はこの役に挑むため、1年半かけて日本舞踊や歌舞伎の所作の稽古を積んできたという。
蒸し返すようだが、吉沢は昨年12月、深夜に泥酔状態でマンションの隣室に無断侵入する騒ぎを起こした。被害者とは示談が成立し、不起訴になった。
隣室の住人にしてみれば、深夜に知らない人に部屋に侵入されたら恐怖でしかないが、個人的にはこの報道を聞いてむしろ吉沢亮という俳優に親しみが持てた。
それまで国宝級イケメンと持ち上げられ、話題はもっぱらイケメン界隈のことばかり。トークも
弾まず、人間的な魅力が伝わってこなかった。だが、そんなイケメンサイボーグがやらかし、逆に親近感が湧いた。
ところで、間もなく吉沢主演「ババンババンバンバンパイア」も封切られる。元々2月公開の予定だったが、トラブルの影響で公開延期とされていたものだ。
こちらは漫画原作で主人公の森蘭丸は450歳のバンパイア。彼が狙っているのは至高の味わいである18歳童貞の血。銭湯の一人息子・李仁(板垣李光人)が18歳になるまでその成長と純潔をそばで見守っているというドタバタコメディーだ。
「国宝」の神がかった演技とは百八十度違うコミカルな役柄で、その振り幅に驚かされる。これぞプロの俳優だ。やらかしたからといって周囲もネットの声にもうろたえなかったのがよかった。
■過剰反応の世の中は変だ
それにしても昨今はネットの声を過剰に気にし過ぎ。田原俊彦のラジオでの不適切言動についても本人が反省して周りも許しているのだから問題ないと思っていたらNHKが「うたコン」への出演を見合わせたとか。
最近では永野芽郁や田中圭もだが、ものにもよるが、やらかしで一発退場の世の中ってなんだか変。
(桧山珠美/コラムニスト)
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