“縁切り”祈願し続ける女の執念。他人が不幸になろうとも「彼が私と結婚しますように…って」

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2025-07-11 11:45
投稿日:2025-07-11 11:45

3度目のデートで関係を

 春香さんからお礼を口実に食事に誘い、初デートは夜景が美しいイタリアン。お互いが大のミステリー小説好きとわかり、話題は尽きなかった。

 しかし、彼の左手薬指には結婚指輪が光っている。

「複雑でした。それでも、帰り際に『また一緒に食事ができるかな?』って聞かれて…もう舞いあがりましたね。3度目のデートで関係を持ってしまいました」

 25歳という年齢は、女にとって将来を考える節目ともいえる。少なくとも春香さんはそうだった。不倫の恋に悩んだ夜は数えきれなかったという。

「彼は『春香と一緒にいると心が安らぐ』って言ってくれるんです。でも、将来の話は一切なくて…このままじゃ都合のいい女で終わるかもって思ったら怖くなって。『北陸の両親が結婚を急かしてきて、お見合いを勧められた』と嘘をついて、本音をぶつけました」

 悦也先生の答えは、以下のようなものだった。

「4歳の娘さんが再来年に小学校受験で、今は離婚を切りだせない。でも合格したら必ず妻に話すって…。奥様は歯科医をしているから、離婚しても経済的には問題ないそうです。狙っているのは白金にあるお嬢様学校らしくて、親子面接もあるし、もう少しだけ待ってほしいと言われました」

縁切り榎に並ぶ数々の絵馬

 一度だけ、彼の妻と顔を合わせたこともある。

「病院に着替えを届けにきた奥様に、受付で声をかけられました。派手ではないけれど、整った顔立ちで綺麗な人でしたね。私が奪おうとしている人の奥様って、こんな人なんだ…と思ったら、逆に絶対に負けたくないって気持ちが強くなったんです」

 春香さんの執念は、縁切り榎へと向かった。

 恋バナをしていた友人が、「DV彼と別れたくて縁切り榎に行ったら、すぐに別れられた」という話をしてくれたのがきっかけだった。

 板橋本町駅から歩いて5分ほどの場所にある縁切り榎は、住宅街と商店街に溶けこむように立っている。噂を聞きつけた人々が行列を作り、皆どこか神妙な顔をしていた。

「初めて行った時、もっとおどろおどろしい場所かと思ったけれど、意外とこじんまりしていて…千円で絵馬を買って、奥様との縁切りをお願いしました。『E先生が奥さんと離婚し、私と結婚しますように』って」

 絵馬掛けには、似たような切実な絵馬がびっしりとかかっていた。

「『口うるさい姑と縁が切れますように』『モラハラ上司が退職しました。ありがとうございます』から、『A子、流産して』なんていう恐ろしいものまで…。皆、追いつめられてるんだなって思いました」

蒼井凜花
記事一覧
官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
オフィシャルサイトYouTube

関連キーワード

ラブ 新着一覧


今さら聞けない「ガチでリアルな離婚話」それは幸せか不幸か
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。「私、バツつきました!」と誰かの話を聞いても驚かない時代ですが、離婚する時の...
山崎世美子 2022-10-22 06:00 ラブ
信頼の証とはいえチョイ面倒…愚痴が多い彼氏の心理と対処法
 彼氏と過ごしている時間に愚痴ばかり聞かされると、気分が滅入ってしまいますよね。また愚痴が多い男性は、将来出世しなさそう...
恋バナ調査隊 2022-10-21 06:00 ラブ
セックスレスの彼がその気になる寝室3カ条 お勧めの香りは?
 セックスレスに悩む女性が少なくありません。恋人やパートナーと一緒に眠る時、セックスに至らない時、女としての魅力がないの...
内藤みか 2022-10-20 06:00 ラブ
絶対家に行っちゃダメ! LINEで学ぶモラハラ彼氏との別れ方
 世の中には、女性に偉そうな態度をとり、精神的苦痛を与え続けるモラハラ彼氏が存在します。でも、ストレスが溜まり心も傷つく...
恋バナ調査隊 2022-10-19 09:42 ラブ
好きなのになぜNG? スキンシップが苦手な女性と男性の本音
 好きな男性には自然と「触れたい」と思う女性が多いでしょう。しかし一方で「好きでもスキンシップは苦手……」と、悩む女性も...
恋バナ調査隊 2022-10-19 06:00 ラブ
LINEの返信が来ない…仕事で忙しい男性と連絡をとる方法は?
「片思い中の男性から連絡が来ないっ」  スマホを握りしめ、通知が来るたびにカレじゃないとガッカリして連絡を待ち続ける…...
若林杏樹 2022-10-19 06:00 ラブ
30代女子なぜ恋愛が億劫に?男性への理想は切り捨てられます
 30代以降の恋愛って、よくも悪くも20代の頃とは変わってくる。世間の30代女子を見る目は、やっぱり20代とは違う。 ...
ミクニシオリ 2023-01-08 19:30 ラブ
文化系男子の好きなタイプは?流行追うよりmyセンスで勝つ
 ワイルドな体育会系男子も魅力的ですが、物静かで知的、自分の世界観やセンスを持っている文化系男子も根強い人気がありますよ...
恋バナ調査隊 2022-10-17 06:00 ラブ
【LINE】指先までお前でいっぱい…ポエマー彼氏にドン引き!
 あなたは、好意を抱いている男性からポエマーのようなLINEが届いても、変わらずに好きでいられるでしょうか?  今回は...
恋バナ調査隊 2022-10-16 06:00 ラブ
40代婚活女子必見「年下彼氏の将来性を見極める」方法とは?
 40代になって婚活をしている女性は、多くの経験を積んできたからこそ「年下彼氏」ができた時に、頼りなく感じて将来を不安に...
恋バナ調査隊 2022-10-16 06:00 ラブ
抜いたヒゲを並べて楽しいの?夫の許せないクセを暴露します
 無意識にしてしまう「ささいなクセ」は、男女問わず誰にでもあるもの。そうとはわかっていても、一緒に暮らす夫の「不快なクセ...
恋バナ調査隊 2022-10-15 06:00 ラブ
「事実婚は既婚者ではない」独身と偽る夫にモヤモヤする女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2022-10-15 06:00 ラブ
「戸籍汚れずラッキー」事実婚の夫は独身だと偽りリスク回避
「冷酷と激情のあいだvol.112〜女性編〜」では、事実婚の手続きを終えている夫・タカノリさん(仮名)が、今でも外に対し...
並木まき 2022-10-15 06:00 ラブ
なんなん?男も服も「人の物が欲しくなる女」の心理と対処法
「隣の芝は青く見える」といいますが、よく見えるだけでなく我慢できなくなってしまう人もいますよね。恋愛においては、人の彼氏...
恋バナ調査隊 2022-10-15 06:00 ラブ
「離婚したいけど心配」なら独身に戻ってよかった話を読もう
「一生を共にする」と誓った相手でも、さまざまな理由から離婚という選択をする夫婦は少なくありません。ただ離婚に踏み切る前は...
恋バナ調査隊 2022-10-14 06:00 ラブ
「アラフォーが勝てるプロフ」で年下男子とマッチング率UP!
 マッチングアプリで年下のイケメンに何度もいいねしてるのに、ちっともマッチングしない……。そんな悩みを抱えているアラフォ...
内藤みか 2022-10-13 06:00 ラブ