謎を深めただけの「ラストインタビュー」 藤島ジュリー景子の話題の本を読んで「それはあり得ない」と思った部分

更新日:2025-07-27 10:58
投稿日:2025-07-27 10:55

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」

 2年前の2023年5月14日、藤島ジュリー景子(旧ジャニーズ事務所代表取締役)は「ジャニー喜多川の性加害事件」について「謝罪動画」を公開、同時に公表した文章にこう書いた。

 何も知らなかったのだから、批判されても答えようがない、という開き直りともとれる物言いが、さらなる批判を招いたことは記憶に新しい。

 そして今月18日、そのジュリーが「ラストインタビュー-藤島ジュリー景子との47時間-」という本を出した。版元は新潮社。インタビュアーは小説「イノセント・デイズ」などで知られる作家・早見和真。

 新潮社の名物おばちゃん重役の中瀬ゆかりが仲介したようだが、本を出すというのはジュリーの強い意志だった。最初、早見はこの話を週刊文春の竹田聖編集長に持っていって、連載インタビューすることになっていたというのだ。もし、それが実現していたら内容は随分違ったものになっていただろう。

 早見のスタンスは、ジュリーの言ったことはそのまま載せる。その言葉の裏は取らないというものだ。

 さっそく読んでみたが、早見には失礼な言い方になるが、ジュリーの「言いっ放し」本である。

 ジュリーの冒頭の言葉を、個別具体的に語ってはいるが、結局、「知ろうとしなかったことって、こんなに糾弾されなければいけないことですか?」「それでも、私は自分から知ろうとしなかったので。私の生きる術だったんです。深追いして傷つくことを恐れて、知らない方がいいと思ってしまう。はぁ……。それは今回の件に限らず、私は万事そうなんです」と自分の穴に潜り込んでしまう。

 叔父のジャニー喜多川についてはこうである。

「小さい頃に限らず、二人でご飯を食べたことは一度もありませんでした。印象に残っていることでいえば、『少年隊』がデビューする前に、アメリカでいろいろなショーに出そうとしたことがあったんです。その時期に通訳として一緒に連れていかれたことがありました。そのときにしゃべることはありましたが、そのくらいですかね」

 ほとんど話したことがないのだから、性加害についてなど知るわけはない。文春がジャニー喜多川の性加害問題を連続追及し、ジャニーズ事務所が名誉毀損で訴えた裁判で、高裁は「彼のセクハラについては認定した」。だが、母親メリー喜多川の、「本人が無罪だといっている。負けたのは弁護士のせい」という言葉を今でも信じていると言っている。さらに、「メリーがジャニーの蛮行に気づいていなかったことはあり得るのか」という質問にも、「それはあり得たと思います。(中略)母も弟であるジャニーの性癖を知ろうとはしなかったでしょうから」。

 それはあり得ない! 文春が追及する8年前に週刊現代がジャニーの「ロリコン趣味」を取材したとき、メリーは記者に対し体を張って阻止しようとした。さらにメリーは、「弟は病気だから」と周囲に漏らしていたのだから。

 ジュリーは、自分が手掛けた「嵐」の成功に母親のメリーが嫉妬して決定的な溝ができ、以来、まともに話したことがない。ジャニーとメリー両方と会話もなかったのだから、性加害のことなど知るわけはないと言い募る。

 本を出せばまたいろいろ言われるがという問いには、「私はもうたくさんのものを失ってきましたから。これ以上なくすものはないと思うので」と最後まで開き直る。

「嵐」成功までの秘話や「SMAP」解散の舞台裏など、ファンなら喜ぶであろうエピソードもある。だが、全体としては「ジュリーという謎」をさらに深めただけの本と言わざるを得ない。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

エンタメ 新着一覧


永野芽郁が「清純派」って誰が言った? 批判するのはお門違いなワケ。江頭2:50への“涙”も大正解!
 日曜劇場『キャスター』(TBS系)で共演中の韓国人俳優であるキム・ムジュンを自宅に連れ込みお泊りし、なんとその翌日に妻...
堺屋大地 2025-05-02 06:00 エンタメ
「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている
 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ...
桧山珠美 2025-05-01 19:16 エンタメ
なにわ男子・道枝駿佑は“肉食女子”から守られたのか?「キャスター」男性俳優陣が気になるよ
 芸能界広しといえども清純派と呼べるのは芦田愛菜だけ。長年、そう訴えてきましたが、今回の一件が図らずともそれを証明したの...
共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている
 昭和11年、家族や嵩(北村匠海)に見送られ、のぶ(今田美桜)は女子師範学校の寮に入る。軍国主義の担任・黒井雪子(瀧内公...
桧山珠美 2025-04-28 18:40 エンタメ
「あんぱん」最後まで毒親だった登美子(松嶋菜々子)。去っていく彼女に問うてみたいこと
 受験したのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の明暗が分かれる。静まり返った柳井家で、寛(竹野内豊)たちに頭を下げる嵩。そこ...
桧山珠美 2025-04-26 12:50 エンタメ
春ドラマの評判を調査!『最後から二番目の恋』は令和の鬼渡?『あんぱん』『対岸の家事』の感想は
 2025年4月期も話題のドラマが続々スタート! 多すぎてどれを見るのか迷ってしまう…。そんな人のために忖度なしでドラマ...
「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ
こうでなくちゃ! 志尊淳の正解を「恋は闇」で見た。いい人よりも“妖しい姿”に妄想が駆り立てられる
 新ドラマ「恋は闇」(日本テレビ系)の志尊淳が良きです。  前クールの「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった...
「あんぱん」なんて贅沢!今が旬、河合優実の“目で語る”表現力と色気に驚く。俳優・ソニンのEE JUMP感を消した演技も見事
 なりたい夢を見つけたのぶ(今田美桜)は、女子師範学校合格に向けて猛勉強をし始めるが、成績が思わしくなく頭を抱える。同じ...
桧山珠美 2025-04-21 14:23 エンタメ
怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ
「あんぱん」登美子(松嶋菜々子)の登場が不穏…色っぽいけど。貴島中尉(市川知宏)は“あのキャラ”を意識?
 新聞社に出した漫画で賞金をもらい、ご機嫌の嵩(北村匠海)。一方のぶ(今田美桜)は、パン食い競走で転びそうになったところ...
桧山珠美 2025-04-17 16:02 エンタメ
カトパンへの嫌味に物議…新井恵理那は承認欲求のカタマリか、悪役を演じる聖人か?
 昨年3月、8年間出演して総合司会も務めていたテレビ朝日系の朝の情報番組『グッド!モーニング』を降板したフリーアナウンサ...
堺屋大地 2025-04-17 06:00 エンタメ
【募集】春ドラマ何見る? 面白かった&ガッカリを教えて!『最後から二番目の恋』『あんぱん』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「期待している」「面白...