「自慰行為」の語源になった人物の悲劇。“悪いこと”と罰された本当の理由

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
更新日:2025-09-15 11:45
投稿日:2025-09-15 11:45
 職場や近所、SNS界隈に現れる「残念な人」、いますよね。実は今から約2000年前から現在に伝わる「聖書」にも「残念な人」がいるのです。

 SNSで聖書を面白くわかりやすく伝える活動を続けている上馬キリスト教会ツイッター部のMAROさんは、世界的なベストセラーの聖書は「人間の残念さの歴史」とし、残念だからこそ救われ、人からも神様からも愛されるのだと解説しています。

聖書のなかの残念な人たち』(笠間書院)より聖書に登場する人たちの「残念」な失態エピソードを一部抜粋・編集してご紹介します。

兄の代わりを命じられたオナン

 ヤコブの12人の息子の1人、ユダは、兄弟たちから離れて暮らすようになりました。そこでエル、オナン、シェラという3人の息子に恵まれました。やがて彼らが成人すると、長男のエルはタマルという妻を迎えました。しかしエルは、その後ですぐに死んでしまいました。

 父ユダは次男のオナンに言いました。「兄エルのために、タマルとの間に子どもを作りなさい」。つまり、兄の代わりに弟がタマルを妻としなさい、ということです。

 しかし現代の感覚と違うのは、弟オナンと兄嫁タマルの間に子どもができたとしたら、その子は兄エルの子として扱われる、という点です。

 当然その子孫はみんなエルの子孫だということになります。オナンは生まれる子を自分の子であっても自分の子として扱えないということなのでした。

 現代の感覚ではかなり違和感を覚える言いつけですが、当時はこれが一般的なルールでした。家の長男だけが家の子孫を残せるルールだったんです。

【読まれています】部下の妻に恋をして…不適切な関係に焦がれた男の末路。色恋沙汰のスキャンダルの恐ろしさ

「自慰行為は罪だ」という認識広がった

 これにオナンは不満を抱き、表向きはタマルと一緒に寝たのですが、性行為をした振りだけして、実は自分でいわゆる「自慰」をして、子どもができないようにしていたのでした。

 聖書の記述で言えば「兄に子孫を与えないように、兄嫁のところに入ると地に流していた」ということになります。

 このことについて神様は怒り、オナンを殺してしまいました。そしてこのエピソードにより、オナンは「自慰」を意味する「オナニー」という、ちょっと恥ずかしい単語の語源になってしまいました。

 オナンは聖書では、ほんの少ししか登場しない地味なキャラなんですが、そんなちょっと恥ずかしい単語として、後世まで何千年もその名が残ることになってしまったのでした。

 このエピソードから、「自慰行為は神様が怒る行為だ、罪だ」という認識がかなり広がったのですが、神様が怒ったポイントは本当にそこでしょうか。

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
記事一覧
1979年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒、バークリー音楽大学修了。宗教法人専門行政書士。約11万人のフォロワーを持つXアカウント「上馬キリスト教会」(@kamiumach)の運営を行う「まじめ担当」。著書に『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)、『人生に悩んだから「聖書」に相談してみた』(KADOKAWA)、『上馬キリスト教会ツイッター部のキリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)など多数

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


言いすぎー! 思春期な“我が子”のトンデモ暴言集。「うるせえ、スメアゴル」に笑っちゃったよ
 子どもから大人へと移行する時期と言われる思春期は、子育ての修羅場。私たち親も「反発したい年頃よね」と分かっているけれど...
元タレントが見た過酷な現実。芸能界で“誰かのお気に入り”になった女と拒んだ女の分かれ道
 世間を揺るがす芸能界の黒い噂。ニュースとして報じられ、真実が明らかになることも増えました。現在は清浄化が行われている芸...
ありえない“パワハラ職場”経験談6選。「先輩の指示で話せないの」って小学生かよ!?
 パワハラが問題視される時代ですが、今もなおパワハラが原因で退職に追い込まれている人が少なくないようです。今回はパワハラ...
43歳、推し活でお金は減った。でも後悔はない。“推し”と過ごしたあの頃の私を誇りに思う
 アラフィフに差しかかる少し前、私はK-POPの“推し”と出会いました。これまでも長くオタ活を続けてきましたが、その出会...
芸能人も公表…パニックに陥ったら「ダメな人間だ」と責めないで“怖い”と思っていい。今の自分を受け入れる大切さ【専門家監修】
 2012年に59歳で亡くなったロック歌手・桑名正博さんとアン・ルイス(68)の長男でミュージシャンの美勇士さんや、タレ...
魅惑の“にゃんたま”ツーショット♡ 2匹の背比べ、真の勝者は意外なところに?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【動物&飼い主ほっこり漫画】連載特別編「春山先生 幼少期の思い出」
【連載特別編】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場!  11月下旬発...
【女名の植物クイズ】夏の花で「あの有名映画の主人公」と同じ名前の品種があるのは?(難易度★★★☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
理解不能すぎ!義実家の謎ルール6選。「トイレの水は3回分ためて流す」ってありえる?
 家事のやり方、生活の仕方、人付き合い……それぞれの家庭ごとに存在する「謎ルール」ってありますよね。それが義実家の謎ルー...
花火大会の“有料化”が増えた背景。3万円の高級席も…若者世代は「お金を払って見る」が当たり前?
 今夏も花火大会が大盛り上がり。特に日本三大花火大会の長岡花火は、開催直後のSNSでは観客が撮ってアップした写真や動画が...
まだまだ帰省したくない…私が使った言い訳LINE集。“本当にありそう”な絶妙なウソで切り抜けた!
 この夏、義実家や実家に帰省したことを後悔している人もいるでしょう。「帰省せず1人でゆっくりしたい…」と願う皆さんのため...
めんどくさ! 意味不明な“ママ垢”ルールにゲンナリ…。「成長自慢は禁止」ってなんでよ?
 妊娠出産が初めてだったりママ友がいなかったりすると心細いですよね。そんな中「情報がほしい」「仲間がほしい」と、SNSで...
スナックに「客が来なくなる理由」はどこに? バブル時代とは違う、令和のシビアな現実
 みなさん、ぜひスナックに行ってください! 絶対楽しいから大人になったら一軒くらい行きつけのスナックを…!!  と...
ギャー! 旅行先での恐怖体験6選。友人が車窓を見て真っ青に…満面の笑みを浮かべる人物が
 楽しいはずの旅行で、身の毛もよだつような恐怖体験をしたことはありますか?   この記事では、夏の暑さを吹き飛ばす...
大昔から「究極のモンスターペアレント」は存在した!? 激怒した親がトンデモ行動に…盲目的な愛が生んだ悲劇
 職場や近所、SNS界隈に現れる「残念な人」、いますよね。実は今から約2000年前から現在に伝わる「聖書」にも「残念な人...
ダンディな“にゃんたま様”の色気にメロメロ♡ これはもう、ガン見です
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...