戦後80年の節目…デタラメな音楽特番がこれから増えそう
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
戦後80年、放送100年ということで、この夏は関連番組が盛りだくさん。メモリーイヤーを機に過去を振り返るのは大いに結構だが、なかには便乗商法のようなものも散見し、なんだかなあという感じ。
例えば、11日の「昭和平成令和 日本人を支えた80年80曲」(日本テレビ系)。1945年から2025年まで80年間を1年1曲ずつ厳選し、計80曲を紹介したが、選曲に疑問あり。
そもそも1年1曲というのはあまりにも無謀過ぎるが、それも基準があるのなら納得もする。その年に一番売れた曲だとかレコード大賞受賞曲だとか。あるいは視聴者の投票によるものとか。
しかし、「日本人を支えた」という曖昧さ。45年を代表するのが並木路子「リンゴの唄」、47年の笠置シヅ子「東京ブギウギ」などはいちいち目くじらを立てる人もいないが、年代が現在に近づくにつれ、覚えている人も多くなり、さらに21世紀に入ってからは老若男女が知る曲は生まれにくくなっている。つまりその年を代表するのはこの曲と明言できるものを選ぶのは困難だ。
ちなみに、81年は松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」だが、調べてみたら同じ年に、寺尾聰「ルビーの指環」や松山千春「長い夜」、都はるみ「大阪しぐれ」などのヒット曲があった。
これらを差し置いて松本伊代って……。なにかと日テレに貢献するヒロミへの忖度か。
さらに20年代。20年がSixTONES「Imitation Rain」、25年がtimelesz「Rock this Party」。そうまでして旧ジャニーズをねじ込みたいか。日本人のひとりとして言わせてもらうが、この歌に支えてもらったことなどありませんから。
司会は堺正章・小泉孝太郎・SixTONES。それぞれ、昭和・平成・令和の代表ということなのだろうが、結局、船頭多くしてまとまりなし。
うれしかったのは86年の小林旭「熱き心に」で本人による歌声も聴くことができたことだが、小泉ら若手のMCはまだまだ。マチャアキが50年代あたりの美空ひばり、灰田勝彦、トニー谷、石原裕次郎らの顔ぶれを見て「全員と共演しています」と発言したにもかかわらず、スルー。自慢話のひとつくらいさせてあげろよ、と思った。そこは中間世代である小泉がフォローしないと。
この番組に限らず、昨今、この手の音楽特番はスタッフらが知っている曲を都合のいい企画にして並べている気がしてならない。そもそも80年間には膨大なヒット曲がある。ある程度の知識、見識などがなければ、視聴者を納得させられるものにはならない。若者受けを狙うにしても、それなりの人物でなければ。
節目の年ということで、安易な音楽番組がこれからたくさん放送されることを危惧する。
(桧山珠美/コラムニスト)
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