松岡昌宏のその後を決定づけた“ウラ代表作”
【あの頃、テレビドラマは熱かった】#9
「LOVE&PEACE」
(1998年/日本テレビ系)
◇ ◇ ◇
1998年もフジテレビのドラマは強かった。反町隆史の「GTO」は全話平均28.5%でこの年の全体でトップ、江角マキコの「ショムニ」と深田恭子&金城武の「神様、もう少しだけ」はともに18%台スタートから最終回28%台と盛り上がり、平均で軽々20%超え。いずれも看板枠の月9以外の枠だ。
で、月9はというと、前年10月クールに平均で30%超えを果たした「ラブジェネレーション」の疲れか、1、4、7月期といずれも20%を超えていない。そして10月期、「月9でも1作も20%を超えない」という状況を阻止したのが、木曜劇場「眠れる森」。木村拓哉と中山美穂のダブル主演によるサスペンスは全話平均25%超えを果たし、意地を見せたのだった。
いや野沢尚さんの脚本もすごかったのだけど、こうして数字を見ると「神様、仏様、稲尾様」ばりにキムタク様がすごい。古すぎか。
そんな98年、あまり語られていないが印象に強く残ったのが、「LOVE&PEACE」。SMAP中居正広が月9「ブラザーズ」で寺の次男坊を演じていた4月期の、日テレ系土9だ。もうひとりの“マサヒロ”松岡昌宏が97年の「サイコメトラーEIJI」、99年の「サイコメトラーEIJI2」で土9らしい現実離れした能力を持つヒーローを演じたはざまで、スーツ姿の新米刑事を演じていた。
Jアイドルとしてかっこよく事件を解決するヒーローではなく、亡くなった兄夫婦の子供を引き取って父親代わりになるという役どころ。80年代のこの枠の代表作「池中玄太80キロ」で西田敏行が演じた“玄太”を思い出させるキャラで、その名も“建太”。大ヒット作へのオマージュのはずだ。そんなこと誰も言ってないけど。
ドラマは建太と子供たちとのエピソード、ちょっとした恋のバトル、後輩役の鳥羽潤とのからみ、先輩刑事の大仁田厚、上司の古尾谷雅人も含めた刑事としての現場などがバランスよく配置されていた。後半には“所轄”と“本庁”の力関係や、建太の兄夫婦の死に関する闇の部分を描きながら、ヒーローとして敢然と悪に立ち向かう刑事ドラマ要素も入り、明るいだけでなくシリアスな松岡も堪能できる展開に。当時21歳の松岡は、実年齢より少し上の役柄に器用に対応していた。
たぶん“松岡昌宏の代表作”として挙げる人はほとんどいないと思うが、僕はこのドラマがその後の松岡を決定づけたと勝手に思っている。
そして今年6月の末、例の“国分問題”での松岡の“男気会見”を見たとき、僕の頭の中にはTOKIOが歌ったこのドラマの主題歌が流れていた。Love&Peace。
(テレビコラムニスト・亀井徳明)
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