『大脱出3』が示した“地上波じゃ絶対無理”なお笑いの可能性。攻めたバラエティの生存戦略とは

小政りょう ライター
更新日:2025-10-26 11:45
投稿日:2025-10-26 11:45

一方、配信コンテンツならではの問題点も

 数々の有料コンテンツが配信に移行することで作品の質が維持、あるいは高まっていくのは喜ばしいことですが、やはりテレビで育った視聴者にとっては、寂しい部分があります。

 一番が「感想や面白さの共有ができない」ということです。どんなに面白いコンテンツがあっても、ネタバレに気遣うあまり、具体的な感想が言えず、口コミやSNSなどで感動が伝播しづらい部分があります。

 ネタバレは特に禁止されているわけではありませんが、マナー的な暗黙の了解と、「お金を払って見ていない人に面白さのタダ乗りはさせたくない」という微妙な心理が働き、話すことを躊躇わせている部分が心のどこかに生まれます。

 かつて、面白いテレビがあれば次の日の学校や職場で話題になり、テレビや新聞のニュースも話題をとりあげ、その盛り上がりに一役買っていました。その結果、流行や誰もが知っているスターが生まれやすく、世間の中に一体感がありました。

木村拓哉主演ドラマも配信に移行

 現在は、バラエティのみならず、今まで地上波で放映されていた野球・WBCやボクシングのタイトル戦、木村拓哉主演ドラマ『教場』の一部ストーリーまでもが、配信に移行しています。良質コンテンツが配信主流となりつつある今、配信を見られる人と見られない人とが分断され、文化や流行に格差が生まれている状況です。

 興味のない番組やスポーツを「やっているから」ということで惰性で見ることはなくなりましたが、人々の共通言語や「たまたま見た番組が面白かった」というような偶発的な感動が消えてしまうのは残念でなりません。

 これからも、多くのコンテンツが有料配信で放映されるようになると思います。地上波の制約から解放された優良な作品が産まれ、求めている人に届きやすい環境になるかもしれませんが、国民が一体となって盛り上がるような流行は、配信で作ることはできないでしょう。

 寂しい部分はありますが、多様性重視・個人主義になってきた時代の流れとして当然のことなのでしょうね。

小政りょう
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映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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