「何者か」じゃなく ロングコートダディ兎が「俺自身」でいたいと思えるようになったワケ
【今週グサッときた名言珍言】
「お金に対する考え方が違うなって(笑)」
(兎/TBS系「サンデー・ジャポン」10月12日放送)
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10月11日に生放送された「キングオブコント」(TBS系)で、ついに念願の優勝を果たしたロングコートダディ。翌日は恒例の「サンデー・ジャポン」にそのまま生出演。自民党と公明党が連立を解消した話題から、かつてコンビを解消した過去があることを振られると、ネタ作り担当の堂前透(写真左)は「一方的に離脱を告げられて」と高市早苗総裁の言葉を借りて笑わすと、相方の兎(同右)もそれを受け、解散理由を公明党の主張に合わせて当意即妙にボケた。それが今週の言葉だ。
もちろん、実際の解散理由は違う。そもそも2人が出会ったのは、吉本の養成所NSC大阪校だった。兎は学生時代、周りに流されやすい性格で、美容師になりたいという友人と共に、特になりたいわけではないにもかかわらず美容専門学校に入学。だが、わずか2カ月ほどで自主退学してしまう。自堕落な生活をしているのを見かねた姉から「中学の頃は芸人になりたいって言ってたやん」と言われて、NSCに入学した(キャリアデザインセンター「Woman type」2025年3月3日)。
兎は、何組か組んでは別れを繰り返す中で、堂前と出会った。お互い、増田こうすけの漫画「ギャグマンガ日和」が好きだったことから意気投合。兎は周囲より自分が面白くないことが分かり心が折れて、地元・岡山に帰ろうと思っていたときに、堂前に誘われてコンビを結成した(吉本興業「月刊芸人」21年5月15日)。
しかし、09年のコンビ結成から4年目を迎える頃だ。オーディションバトルの結果が振るわなかったことと、先輩芸人が後輩100人ほどを集めて海に旅行へ行った際、まったく馴染めなかったことが重なって、兎は再び心が折れた(同前)。堂前に解散を持ちかけたのだ。
だが、兎は1カ月ほどで後悔した。お笑いが「むちゃくちゃやりたく」(同前)なったのだ。けれど、自分で言った手前、言い出しにくい。そんなとき背中を押したのはやはり周りの友人だった。「絶対に言うべきだ、言って断わられてもいいやん」と言われ、4カ月後、再結成を提案したのだ(同前)。
当時は「周りと自分を比べ過ぎてた」と兎は振り返る。「だからもう人と比べるのは辞めよう」と思い直した(「Woman type」=前出)。何より、堂前は誰よりも兎という人間を面白がってくれる。だから兎は「『何者かになりたい』とかじゃなくて、俺は『俺自身』でいたい」(同前)と思えるようになったに違いない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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