「ばけばけ」髙石あかりも岡部たかしも池脇千鶴も好演…NHK大阪の朝ドラはなぜ面白い?
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
新しい朝ドラ「ばけばけ」(NHK)がスタートして3週間。松江を舞台に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻セツをモデルに描くふじきみつ彦のオリジナル脚本だ。ヒロイン松野トキを演じるのは髙石あかり。「ベイビーわるきゅーれ」でのダブル主演(もうひとりは伊澤彩織)やドラマ「御上先生」の生徒役などでその演技力は保証済み。
もっとも「ブギウギ」の趣里、「虎に翼」の伊藤沙莉、「おむすび」の橋本環奈、「あんぱん」の今田美桜と続いたヒロインの中では断トツに知名度は低い。しかし、びっくりだったのは髙石の新人らしからぬ演技。初々しい演技を期待していたらとんでもない。その安定感たるや。
トキの父を演じるのは岡部たかし。「虎に翼」に続き2度目の父親役だが、この役は岡部しか考えられないほどハマっている。他にも母の池脇千鶴、祖父の小日向文世、さらには堤真一や北川景子と演技達者が揃っていて、画面にくぎ付けになることしばしば。
今週は「マッサン」の妻エリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスも登場。この先には映画「国宝」で注目の吉沢亮も登場する。
■東京制作の朝ドラをライバル視
「ばけばけ」の制作はNHK大阪(BK)。21年の「カムカムエヴリバディ」に出演したオダギリジョーが別の番組で「(大阪は)東京の朝ドラをめちゃめちゃライバル視している」と語っていたが、その秘密がわかるような番組を見た。
13日放送の「ヒロインたちが語る BK朝ドラ大特集」。
「これまでにBKが放送した朝ドラは48作品。数多くのヒロインがBKから巣立っていきました」といったナレーションで始まり、BK朝ドラのみで特番を作ったのだった。
BK朝ドラは東京制作の朝ドラが都会的な視点で社会の変化を描くのに対し、「地域の暮らし」「家族のぬくもり」をテーマに人間味あふれる物語を紡いできたうんぬん。MCは濱田マリと青木崇高で、その後ろのボードには「うず潮」「おはようさん」と歴代タイトルが手書きで書かれていた。
濱田はこれまでに4本、青木は2本のBK朝ドラに出演している。
「カーネーション」「てっぱん」「まんぷく」といった歴代朝ドラのヒロインたちがBK朝ドラの魅力を語ったが、一言でいうならアットホーム。BKの朝ドラに対する、あふれんばかりの愛と東京への対抗心がひしひしと伝わってきて面白かった。
ライバルがいてこそいいものが生まれる。BKのむき出しの対抗心は間違いなく出演者や制作スタッフの原動力になっている。
そんなことを踏まえた上で「ばけばけ」を見るのもまた一興。
(桧山珠美/コラムニスト)
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