前髪に宿る女心とは何だろう
(なぜ鼻毛は若い頃から同じペースで生えてくるのに、毛髪はペースダウンするのだろう。白くなるし、抜けるし)
エチケットカッターで鼻毛を処理しながら、考えていた。この連載でもしょっちゅう書いているが、加齢によるヘアトラブルは悩みが尽きない。歳を取れば取るほど、白髪を染め、ツヤを出し…と対処法が増えていく。いっそのことすべてを投げ出して、自然現象のまま生きたいけれど、その決断もままならず。「髪は女の命」とよく言ったもので、個人の美的感覚に深く関わってくる。髪型ひとつで気分が変われば、自信も付く。
とはいえ、だ。ここ最近は美容院へ行くペースも3ヶ月に1回ていどになっている。毎度「白髪が生えてきた」などと、毎月、表参道に通うほどセレブではない。ついでに時間もない。若い頃はなぜ毎月通っていたのか(経済面なども)不思議だけど、今や後手に回った美容ケア。
(…前髪を切りたいんだけどなあ)
そう、今、10〜20代が前髪に命をかけているように、前髪のトーンでヘアスタイルは大きく左右する。鏡で自分の額を覗くと、伸びっぱなしで長さは目を超えていた。面倒なので何となく斜めに流していたけれど、どうにも野暮ったい。ああ、こんな時に思い出すのは漫画『ONE─愛になりたい─』(宮川匡代著:集英社刊)。拓実に恋していたのにうまくいかず、水泳部のノブオ先輩とつきあい始める、主人公のさちよ。先輩が「この髪は前髪かな?」(ニュアンス)と、優しくさちよの前髪を気にするシーンをいまだに覚えている。
いつか私も前髪を直してくれる恋人と幸せになると思い込んでいたが、前髪はひたすら自分でケアしている。
ふと、近所の小さな美容院に「前髪カット600円」と看板が出ているのを思い出した。いやいや、表参道の美容院に行きつけを持つのだから、近所で済ませては女の美学が廃る。そう思っていたけれど、おばさん力とはすごいもので「近くて安いなら最高」と、気分が変わった。
ライフスタイル 新着一覧

