「みんなが見たい」の信念から 太田光は一人で責任をかぶっても「事件」を起こす
【今週グサッときた名言珍言】
「緊張してんの!」
(太田光/TBS系「お笑いの日2025」10月11日放送)
◇ ◇ ◇
今年のTBS系「お笑いの日」では、明石家さんまと太田光による夢のコラボレーション漫才が実現した。コンビ名は、それぞれの年齢を示した「古希還暦」。司会の濱家隆一に呼び込まれるやいなや、太田はいつものように客席に飛び込んで行き、濱家に取り押さえられる。仕切り直して漫才を始めると、自己紹介で「ビートたけしです」とボケようとするも、噛んでしまった。それをさんまにツッコまれ、叫んだ一言が今週の言葉だ。
そもそも、このコンビが実現したのは、スタッフに相談された太田の事務所タイタンの社長・太田光代が、半ば冗談で「例えば、さんまさんとか」と名前を出したのが発端だった。それを真に受けたスタッフがさんまと交渉。太田本人の知らぬ間に、いつしか「太田さんがどうしても、さんまさんとやりたいと言っている」というふうに伝えられ、ブッキングに成功したという(TBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」2025年10月14日)。
さんま本人は、当日の生放送中、引き受けた理由を「太田やからというだけ」と答えている。自分のために力を尽くしてくれた人の頼みとあらば、駆けつける「情」の人なのだ。
それは、太田も同じだ。今回の漫才中、太田は渦中の「広末涼子」や「米倉涼子」といった名前をぶっこんだ。これは事前にTBSにはもちろん、さんまに対しても言っていないことだった。それは「さんまさんが承諾したとか、TBSが承諾したつったら、そっちに迷惑かかる」(同前)という太田なりの配慮なのだ。
同じようなことは以前もあった。今年の元日「新春!爆笑ヒットパレード」(フジテレビ系)でのこと。漫才中に太田は「日枝、出てこい! Aプロデューサーって誰?」と発し、物議を醸したのだ。
このような番組に出る際、爆笑問題は事前に番組に台本を提出するという。それは、他のコンビとのネタかぶりを防ぐことや、それまでの経験から「このネタ、通しましたよね? あなたの局は」と“証拠”を残す意味合いもあるという(「爆笑問題カーボーイ」25年2月18日)。だが、フジの件のセリフは入れていなかった。相方の田中にも言わず「俺ひとりの判断にしなきゃダメ」だと考えたのだ(同前)。
責任を一人でかぶってでも“事件”を起こす。そこには「テレビって“事件”が面白いじゃん。みんな事件が見たい」(BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」25年5月19日)という信念があるからに違いない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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