一部で「笑えない」という声があがる理由
たくろう反対派の意見をまとめてみると、「大喜利漫才だったが、それにしては答えが弱い」「素人っぽすぎて笑えない」などのコメントが多かった。
僕が思うに、反対派がたくろうの弱点として挙げているポイントは、実はたくろうの強みである。ただ、お笑いは「共感」の芸だ。自分の感性やこれまでの人生経験に合致しなけば、とことん分かり合えないのが「漫才」なのだ。
たくろうの漫才は共感を求める側面が非常に強い。簡単に言うとドンピシャでリアルな陰キャが言いそうな所を突いて、それに共感して笑ってもらうという軸でやっている。
それ故に一遍の曇りもなく明るい人生を送ってきた人や、お笑いに馴染みがなく見方が分からない人にとっては、笑いにくい芸風だったのだろう。
「大喜利が弱すぎる」という意見については、「それも計算ずくですよ」と言いたい。きむらバンドの振りに対して、赤木が面白い答えを返す、というのが基本的なシステムなのだが、明らかに答えに強弱をつけている。
この「弱」が気に食わない人も多かったのだと思うのだが、実はこの「弱」が漫才の機微を強調している。
皆様ご存じの通りだと思うが、漫才には台本がある。強い大喜利まみれのネタだと、この台本感が強くなって客が引いてしまうのだ。
たくろうは絶妙なタイミングで「今考えたんじゃないか?」と思わされるような生っぽい弱い大喜利を意図的に入れ込むことによって、台本を感じさせないリズム感を生み出している。これは並みの漫才師がやろうものなら、めちゃくちゃ冷めてしまう諸刃の剣である。
加えて、その弱い大喜利も、噛み締めるとセンスを感じる答えであり、漫才に深みを出している。まさに名人芸だ。
絶妙な演技と演出が笑いを誘う
また、たくろうは漫才で大事な演技も非常にうまい。細かく見てみると分かるが、赤木は時々ボケながら小さく笑ってしまうような仕草を入れている。「こんな答えをする自分が情けない」「苦し紛れで言っちゃったが、自分でも良くなさ過ぎて笑っちゃう」と言いたげな表情も見せている。
これが漫才の「生っぽさ」を演出し、より笑いを誘うのだ。今までにこの手法を使っている芸人は少なく、いたとしてもたくろうがダントツにうまい。
あとは丁度よい挙動不信感も、絶妙でたまらない。「たくろうのネタは漫才じゃない。コントだ」という意見もあったが、正真正銘漫才師で、間違いなくトップレベルの技術をもっている芸人だ。
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