脚本家の内館牧子さん死去…語り継がれる「アンチ終活」メッセージと、今を生き抜いた人生77年のドラマ

更新日:2025-12-27 17:03
投稿日:2025-12-27 17:00

 1992(平成4)年度後期のNHK連続テレビ小説「ひらり」などの脚本家で、女性で初めて大相撲の横綱審議会(横審)委員を務めた内館牧子さんが12月17日、急性左心不全のため東京都の病院で亡くなっていた。享年77。

「近年は『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『老害の人』など、老いを真正面から扱ったシニア小説を数多く手がけ、映画やドラマ化されて、喜んでいました。老いを前向きに受け止めて、心配しすぎず、やりたいことをして、刺激ある人生を追求していこうというメッセージでたくさんのシニア世代を勇気づけ、元気になったなど、大きな反響があったようです」

 とは、内館さんを知る脚本関係者。

「内館さんは60歳のときに心臓弁膜症と動脈疾患で倒れ、意識不明に陥りながらも、2回の大手術を受けています。そこから回復し、元気を取り戻した経験からのお考えだったそうです。やりたいことを優先し、終活や断捨離は一切せず、何よりも今を生きようとされていた。若い頃から老後を考えるのは不健康という考えでしたが、健康管理は『今を楽しむこと』として、過度な終活や老後準備を避けていた。いわゆる老後を意識するのは90歳になってからともおっしゃっていました。突然の悲報に言葉もありませんが、自らの人生を生き切ろうという意識など、大いに学ばせていただいた者はシナリオ関係にも大勢いると思いますよ」(同)

■「やり残したことにケリをつけるのが、本当の終活だ」のメッセージ

 前向きなエピソードのひとつとして、2017年4月に段差で転倒し、右足の基節骨と中足骨を複数骨折し全治6カ月と診断されたときのことが語られている。外出もままならなくなっていたにもかかわらず、その年の5月に行われた「第7回 忘れられない」表彰式に車椅子とギプス姿で出席し特別審査員を務めた。

「この前年、肺炎で欠席されていたため『2場所連続休場は恥ずかしい』などと相撲になぞらえて笑いをとりつつ、講評では看護の現場が『人間の生と死に関わる』ものであるとしてし、応募作から、患者視点の静かな描写など、看護師の謙虚さを褒め、看護師たちの待遇改善を訴えたのです。その後『看護師たちの力が実感できた』と振り返っていました」(出版関係者)

 不整脈や相撲やプロレス観戦を語りつつ、不整脈なども経験しながら、原稿執筆などを続けたらしい。

「2024年9月発表の小説『迷惑な終活』では、《やり残したことにケリをつけるのが、本当の終活だ》と帯にメッセージをつけ、75歳の主人公が高校時代の片思いの相手に謝罪するドラマを書かれていました。ご本人は高校時代から憧れていたロンドンへの長期滞在を夢見ていたことを明かし、60代であれば可能だったけれども、70代半ばでは体力的に厳しいとインタビューで語っていました」(同)

 かならずしも順風ばかりではない人生に前向きに立ち向かい、生き抜いた内館さんが人生でみせたドラマも、語り継がれることだろう。

  ◇  ◇  ◇

 内館牧子さんは生前、日刊ゲンダイのインタビューを受けていた。関連記事【もっと読む】「今度生まれたら」内館牧子氏…では、その様子を伝えている。

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