路線図を見て萌える 「腐鉄子」が楽しめる濃い演劇は超満員

内藤みか 作家
更新日:2019-05-09 06:00
投稿日:2019-05-09 06:00
 鉄子とは、鉄道好きな女子のこと。腐女子とは、BL好きな女子のこと。そしてこの2つの趣味が”合体”したのが腐鉄子という存在です。鉄道の路線図を見ながら「ここで半蔵門線が銀座線と重なって……」などとあらぬ妄想を楽しむなかなかレアな存在なのですが、そんな腐鉄子さんが楽しめる舞台『堕天使は薄い本を閉じて』に、行ってきました!

鉄道好きの究極の楽しみは、鉄道の擬人化!

 実は私も隠れ鉄子かつBL好きです。その中でも特に寝台列車が好きで、北海道に往復カシオペアという寝台列車で行ったほどです。まだ路線図を見て萌えるという腐鉄子にまでは到達できていませんが、その素養は十分にあるらしく、知り合いから「こんな舞台がある」と教えてもらった時は胸が踊り、勇んでチケットを予約してしまいました。

 今までも、鉄道を擬人化したBL風の舞台はいくつかあったのですが、今回の舞台に食指が動いたのは、それがBLだけにとどまらないからでした。普通の男女の話もあり、さらに百合(女の子同士の恋愛)もありと、てんこ盛りだというではありませんか。私もかねてより脳内で鉄道を機関車トーマスのように擬人化することがあるのですが、女性の車両もあるんです。たとえば東京モノレールは私の脳内では天使のような女の子キャラなので、女子化した鉄道にも強い関心がありました。

駅名連呼のマニア垂涎の脚本!

 実はこの『堕天使は薄い本を閉じて』(Bixbite Createプロデュース公演)、2018年に初演し、好評だったために、今回再演となった作品なのです。それだけにチケットも連日満員御礼の大人気。線路を思わせる舞台セットのなか、噂に聞いていた相当に濃いセリフのオンパレードが始まりました!

「ようこそここまで北参道!」

「これからどこへ池袋?」

 などなど、駅名がセリフにこれでもかというくらいくっついてくるのです!

 もう、それだけで鉄子なら脳内にあちこちの駅の光景が浮かび、確実に大興奮もの。駅名の連呼だけでも嬉しいのに、路線同士が複雑な人間模様を繰り広げるのですからたまりません。

意味不明寸前の濃厚マニアックワードの連発

 次第に関係がディープになってくると、とめどない空想に追い打ちをかけるような巧みなセリフが次から次へと覆いかぶさってきます。

「ほらみろ、もうお前の青山は一丁目だ!」

「口ではそう言ってても、こんなにも清澄白河だぜ、お前の水天宮前は」

 ああ……っ!

 最高すぎます……っ!

 よくぞこんな脚本を書いてくださいました!と拍手を送りたい思いで胸がいっぱいでした。客席でも笑いが起きたり、頷いていたりと、皆さんノリノリで見守っています。

 女優さんも出演するからか半数が男性客でしたが、みなさん喜んでくれているようです。かつてこんなことがあったでしょうか。殿方と一緒にこんなにも楽しめるBL舞台が……!

不倫も百合もいっしょくた

 こんなに濃いBLですでにお腹いっぱいですが、さらにこれに丸ノ内線と南北線の昼メロ的な不倫やゆりかもめでの同人誌即売会的な百合模様なども重なり、事態はどんどん、そう、東京の路線図のように複雑化していき、目が離せなくなっていくのです。個人的には丸ノ内線が私の脳内妄想と同じく色っぽい熟女だったのが眼福でした。

 BLにとどまらない妄想を繰り広げたうえに2時間以内でまとめたこの作品、あっぱれとしか言いようがありません。心憎いことに、物販コーナーまで駅名表示のようにデコレーションされていました。嬉しくなって台本も購入し、萌えゼリフを読み直してはニヤニヤしています。もっと大勢の腐鉄子さんに駅名シャワーを浴びていただきたいので、この作品がシリーズ化され、続編が上演される日を心待ちにしています!

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

エンタメ 新着一覧


歌手・秋元順子さん「トークショーがメインのミニライブをやっていきたい」
【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】  秋元順子さん(歌手/78歳)   ◇  ◇  ◇  58歳でメジャーデビュ...
2025-09-15 17:03 エンタメ
世界陸上《やっぱ織田裕二!》とファン歓喜も…TBSの「二度と切れない」ジレンマに不安の声
 織田裕二(57=写真)が《キター!》と大盛り上がりだった。9月13日、世界陸上の東京大会が国立競技場で開幕。TBSの中...
2025-09-15 17:03 エンタメ
世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性
 9月13日に開幕、TBSが中継する「東京2025 世界陸上」に熱視線が集まっている。注目されているのは、アンバサダーと...
2025-09-15 17:03 エンタメ
Snow Manの1人勝ちに歯止めをかけるか?timeleszとSixTONES、激化する“2番手争い”の行方
 嵐の活動休止以降、長らくSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所/以下SE社)は様々な指標でSno...
こじらぶ 2025-09-15 11:45 エンタメ
芦田愛菜から上白石萌音、ヒコロヒー…好感度抜群の「本好き」タレントはこんなに
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】  先日、昔、住んでいた街に行ったら駅前にあった書店がドーナツ屋に変わっていた。今や...
2025-09-14 17:03 エンタメ
三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束
 週刊文春が報じた、坂口健太郎(34)と一般女性との同棲生活。その陰で、田中圭(41)とキム・ムジュン(27)との二股不...
2025-09-14 17:03 エンタメ
悠仁さんには秋篠宮家への世間の風向きを変える力がある
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】 「殿下、ズボンが太すぎます」  これは週刊新潮の昭和35(1960)年9月5日...
2025-09-14 17:03 エンタメ
横浜流星が“レア動画”に降臨!でも…あれっ? 大河ドラマで「国民的俳優」となった代償か
 今年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に主演し、興行収入120億円を突破して歴代実写邦画2位となった映画『国宝...
堺屋大地 2025-09-14 11:45 エンタメ
有吉弘行の“体形イジリ”&時代錯誤の演出に限界説も浮上…「夏休み」特番に《老害化?》の声
《芸能人の夏休み自慢って需要ある?》《芸能人の豪遊見たくない》  番組が放送される前からそんな声がネット上に目立ってい...
2025-09-13 17:03 エンタメ
アインシュタイン稲田直樹が“男前マインド”キャラ確立…容姿いじりがコンプラアウトの中で際立つ人間力
 お笑いコンビ「アインシュタイン」の稲田直樹(40)の好感度が、爆上がりしている。  昨年7月、稲田名義のインスタグラ...
2025-09-13 17:03 エンタメ
小泉今日子“降臨”で新宿2丁目が大盛り上がり…浜崎あゆみ、深田恭子、さらにトレンディー女優からのゲイタウン列伝
 キョンキョンこと、小泉今日子(59)がアジア最大級のゲイタウンとして知られる新宿2丁目に「降臨」と報じられ、話題になっ...
2025-09-13 17:03 エンタメ
板野友美はプロ野球選手の夫の稼ぎに頼らないセレブ生活…海外展開で目指すは“小嶋陽菜超え”
 暮らしぶりが“セレブすぎる”と話題なのが、元AKB48の板野友美(34)。自身のYouTubeチャンネルで「【新居】初...
2025-09-13 17:03 エンタメ
『あんぱん』津田健次郎に演技賞を差し上げたい。東海林の“最後”が完璧だった。ひとつだけ残念だったこと
 東海林(津田健次郎)の訪問からほどなくして、琴子(鳴海唯)から手紙が届く。そこには東海林が上京した本当の理由が書かれて...
桧山珠美 2025-09-13 11:30 エンタメ
キムタクYouTube登録者数が200万人目前…かつてのライバル中居正広氏と“雲泥の差”のナゼ
 木村拓哉(52)の公式YouTubeが登録者数200万人に迫る勢いだと話題になっている。  インスタグラムでは故ジャ...
2025-09-12 17:03 エンタメ
坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず
 驚きの交際が「週刊文春」(9月18日号)で明らかになったのが、俳優の坂口健太郎(34)。  坂口の同棲相手と報じられ...
2025-09-12 17:03 エンタメ
「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は
 今年4月の「二股不倫」スキャンダル以来、事実上の芸能活動休止状態にある女優の永野芽郁(25)が、《衝撃の三角関係》と9...
2025-09-12 17:03 エンタメ