男を思い通りに操る快感
映画では「レンタル友だち」となっていますが、徳永えりさん演じるヒロインの望みは、男性を自分が行きたいところに連れ回したり、自分のわがままを聞いてもらったりと、限りなく男女交際に近いこと。レンタル彼氏に「あんまり恋愛っぽくしないで友だちとして楽しく一緒に飲んでほしい」というようなリクエストはたくさん来るそうなので、つまりは「レンタル彼氏」を借りているのとほぼ同じような状況だと思っていいでしょう。
さて、取材の一環としてレンタル男友だちを借りたヒロインは、彼からいきなり「月極プラン」を提案されます。月額5万円を支払えば、1ヶ月15時間まで彼を使い放題なんです。1時間の料金は3333円ですから、単発でレンタル彼氏を借りる一般的な相場は1時間5000円程度なので、少しお安め。絶妙な価格設定のように思えます。
レンタル彼氏に恋愛感情を持つとどうなる?
さて、ヒロインは月極でレンタル男友だちを借り始めたのですが、会えば会うほど情が湧くのが女心。自分が行きたいところに文句ひとつ言わずに付き合ってくれて、決して叱らず、いつもニコニコ笑っている。そんなイケメンがいたら、好きになってしまいそうですよね。実際、好きになってしまう女性は少なくないそうです。けれど彼にはお金を払わないと会えない。これはたまらなくせつないですね。
前原滋子さんの漫画「かれのお値段20万円」は、1970年代の作品であるにもかかわらず、イケメンを1日2万円で借りる女の子が描かれています。貯金が底をつきた彼女は日雇いの仕事を必死にこなして彼をつなぎとめようとしてその必死さが胸を打ちました。この漫画のように、有料男子にハマると、彼に会うお金を稼ぐために馬車馬のように働き出す女性も多いのです。ヒロインも次第に彼を呼ぶ回数が増える、つまり費用がかさんでいきます。リピートしたこと自体がもはや、惚れた合図のようなものです。
客に惚れられたらレンタル彼氏はどうなる?
彼氏だと勘違いし始めた女性に対し、レンタル彼氏はあくまでも仕事。ここで2人に大きな差ができます。女性はできるだけ安く長く男性と会おうと目論むようになるのです。少しずつ安くすればいつか無料になるのではという妄想を抱いているのですね。しかしレンタル彼氏は逆で、時給アップやブランド品などのプレゼントを狙い始めます。お互いの思惑が面白いくらい真逆に働くのです。
映画でもレンタル彼氏はヒロインと距離を取ります。「僕は男女関係にならないスイッチを持っている」などと言ってみたり、プライベートに立ち入らないし、立ち入らせようともしません。幸せなのはお金を払って会っている時だけという関係は、せつないものです。だって彼は、日常生活では他の女性と無料で会っているわけです。お金を積んだら彼女になれるかというと、そういう問題でもないのです。
レンタル彼氏の実態が見えてくる
それにしてもレンタル彼氏を演じる橋本淳さんには感動しました。絵に描いたような典型的レンタル彼氏像だったのです。何人ものレンタル彼氏に会ってきた私ですが「いるいる!こういう人!」と心底納得できました。ちょっと悲しそうに微笑みながら女性の後ろをついて歩く姿など、言動も完璧です。もしかしたら相当取材して役作りされてきたのではないでしょうか。
レンタル彼氏というのは、ホストと違い、外見をあまり盛りません。女性と一緒に歩いても大丈夫な感じの、ごくごく普通の格好をする人が多いんです。まさに映画に出てくる橋本さんのような感じなんで、つくづく感心してしまいました。実際に借りたらどんなことが起きるのかがかなりリアルに描かれているので、レンタル彼氏に興味がある人にはこの映画はおすすめです!
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