万太郎7年ぶりの植物学教室返り咲き、挨拶も小道具も“ドイツ一色”に

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-08-28 11:40
投稿日:2023-08-28 11:40

NHK朝ドラ「らんまん」~第22週「オーギョーチ」#106

 明治26年。徳永教授(田中哲司)に正式な助手として迎えられた万太郎(神木隆之介)は、7年ぶりに植物学教室に戻ってきた。そこは、以前とは違う空気が漂っていた。

 徳永教授に教授室に呼ばれた万太郎は、教室内の標本を充実させること、と命じられる。

 徳永にドイツの植物学の状況を尋ねた万太郎に、「標本を集めてきた歴史が違う。数で勝てるわけがない」と徳永。「勝ち負けでは……」と万太郎が口を挟むと、「勝ち負けなんだ、槙野。我が帝国大学は国家の機関だ。国の金で国家の求めに応ずるため研究している」と。

 徳永からも、大窪(今野浩喜)からも「古いんだよ、お前は。地べた這いずり回る植物学は終わったんだ」と言われる万太郎――。

【本日のツボ】

Guten Morgen(グーテン・モルゲン) by徳永教授の挨拶

 万太郎が大学を追放されてから、7年の月日が流れたというのがよくわかるエピソードでした。

 不老不死の草でも発見したのかというくらいまったく年を取らない万太郎に、どのくらい年月が経っているのか、つい忘れがちですが、確実に月日は流れていました。

 廊下には書架が置かれ、蔵書数も格段にアップ。通路が狭くて歩きづらそうですが(笑)。

 さらに、院生が責任者となり、学生たちが標本の検定を行うようになっていました。学生たちのやりとりを見て、一瞬にして間違いを正した万太郎、さすがです。が、裏を返せば、万太郎が、「一生を賭けて日本中の植物の名を明らかにする」とやっていた仕事が、もはや学生でもやれる作業でしかなくなっていることに。

 万太郎のモチベーションが心配になります。それにしても、万太郎への当たりが強い大窪。が、それも万太郎を思ってのことかもしれません。「俺は切られたよ」という大窪の不穏な言葉で終わり、ゾワリです。

「グーテン・モルゲン!」

 それよりもなによりも、7年ぶりの植物学教室で一番の変化は「グーテン・モルゲン!」という徳永教授の挨拶です。

 田邊(要潤)色を払拭するとはいえ、アメリカかぶれから、まさかのドイツかぶれに。

「さあ、植物学を始めよう!」という田邊のお決まりの台詞も、ドイツ語に変わっていました。付き合わされる植物学教室の皆さん、ご苦労様です。

小道具もドイツ風に

 教授室もドイツ風に模様替え。最初に目に飛び込んできたのは、兵隊さんの「くるみ割り人形」でした。チャイコフスキーのバレエ曲でおなじみの「くるみ割り人形」ですが、原作はドイツの作家E.T.A.ホフマンによる童話で、ハンドメイドの木製「くるみ割り人形」はドイツのお土産の定番でもあります。

 北海道の熊がシャケを加えた木彫りの置物のようなものでしょうか。

 驚いたのは、とてつもなく大きな徳永教授ご自身の肖像画です。デスク横の国旗といい、あの万葉集を愛した徳永教授はどこへ……。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」嵩らの“腹痛”は史実とちょっと違う? 懐かしい2人の登場には狂喜乱舞! 生きていてよかった…
 東京に到着したのぶ(今田美桜)たちは、さっそく聞き込みを始めるが「ガード下の女王」はなかなか見つからない。みんなで屋台...
桧山珠美 2025-07-11 18:33 エンタメ
田中みな実"買い物姿"報道から探る亀梨和也との結婚のタイミング …神経質だった私生活が急に…
 7月3日発売の「女性セブン」が田中みな実(38)の買い物姿を捉えたことで、芸能記者たちが"強い確信"を深めている。注目...
2025-07-11 17:03 エンタメ
高橋真麻がフジ港浩一前社長、大多亮元専務を擁護の赤っ恥…容姿端麗な女性集めた“港会”の実態知らず?
 フジテレビが7月6日に放送した人権、コンプライアンス問題に関する検証番組「検証 フジテレビ問題~反省と再生・改革~」で...
2025-07-11 17:03 エンタメ
ローラは稲作写真、小島瑠璃子はジャガイモ収穫…コメ不足の夏を生きる世の人々の心に響く「芸能人の農業写真」
 タレントの小島瑠璃子(31)が7月9日にインスタグラムに投稿した写真がネット上で話題だ。  アップされたのは小島本人...
2025-07-11 17:03 エンタメ
内田有紀20歳下の妹・澪奈が話題…有村藍里、土屋太鳳、堀北真希"似てない姉妹"が売れるには?
 女優の内田有紀(49)の実妹であることを公表したタレントの澪奈(29)が8日、自身のインスタグラムを更新。7日に開催さ...
2025-07-10 17:03 エンタメ
映画「国宝」ヒットの背景…古典芸能を扱いながら幅広い観客の心を掴む
 吉田修一の小説を李相日監督が映画化した「国宝」が大ヒットしている。侠客の息子・喜久雄(吉沢亮)と、役者としての彼の才能...
2025-07-10 17:03 エンタメ
これぞ中村倫也! 主演ドラマ「DOPE」登録数急増で高まる“ポストSPEC”への期待
《これぞ見たかった中村倫也》なんて声が早くもネット上で飛び交っているのが、 King & Princeの高橋海人(26)...
2025-07-10 17:03 エンタメ
《やたら出てない?》テレビ局の小泉孝太郎"推し"に疑問の声…バラエティーMCの実力と実弟・進次郎農相の影響
《最近やたら出てない?》  そんな声が聞かれるのが、俳優の小泉孝太郎(47)。孝太郎は今バラエティー番組に引っ張りだこ...
2025-07-10 17:03 エンタメ
「あんぱん」メイコ、夢はお嫁さんでいいのか? 健太郎(高橋文哉)ともう1人の“三角関係”を妄想する
 東京出張の前日。みんなで取材する代議士の資料を確認していたのぶ(今田美桜)は、岩清水(倉悠貴)が話す「ガード下の女王」...
桧山珠美 2025-07-10 18:34 エンタメ
timelesz、新体制が“古参ファン”に受け入れられる日は来るのか? 旧ジャニ「シャッフルメドレー」不参加の賛否
 7月5日、櫻井翔(43)が総合司会を務める音楽特番「THE MUSIC DAY 2025」(日本テレビ系)が放送され、...
こじらぶ 2025-07-10 11:50 エンタメ
石田ひかり53歳、今を生きる女性に伝えたい“楽しく生きていく”ためのメッセージ|映画『ルノワール』
 1986年のデビューから、映画『ふたり』『はるか、ノスタルジイ』や、連続ドラマ『悪女』、連続テレビ小説『ひらり』、『あ...
望月ふみ 2025-07-10 11:50 エンタメ
国仲涼子には退所3カ月で早くも“出戻り”報道…芸能人独立の甘くない現実
 今年3月末で所属事務所のライジングプロダクションを退所したはずの女優の国仲涼子(46)。4月に個人事務所を立ち上げた夫...
2025-07-09 17:03 エンタメ
「あんぱん」琴子役で注目の鳴海唯の“カメレオン女優”ぶり 芸能界入りのきっかけを作った女優は誰だ?
 NHK連続テレビ小説「あんぱん」は15週目に入り、今田美桜(28)演じる主人公・のぶの新聞記者としての物語が本格的に始...
2025-07-09 17:03 エンタメ
清水賢治社長のセクハラ疑惑で掘り起こされるフジテレビの闇…「今日からシリケン」と“お触り続行”の過去
 フジテレビが7月6日に放送した中居正広氏(52)と、同局の元女性アナAさんのトラブルに関する一連の問題の検証番組「検証...
2025-07-09 17:03 エンタメ
「月曜から夜ふかし」で投票率が上がる? ギャルが「103万円の壁」言及で「今の自公が腐ってるっていうことだね」と視聴者納得
 7月7日放送のトークバラエティー「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)の放送内容に、視聴者の間で共感の輪が広がっている。...
2025-07-09 17:03 エンタメ
『あんぱん』ツダケンの“にゃあ”が秀逸だにゃあ!「月刊くじら」には色々とツッコミどころもあるが
『月刊くじら』創刊号は2日で2000部を売り切り、好調な滑り出しを見せる。嵩(北村匠海)は『月刊くじら』編集部に異動に。...
桧山珠美 2025-07-09 17:00 エンタメ