そんなえりのボスのもとにはウワサを聞きつけ、今日も悩みを抱えた女性が、ふらりと立ち寄ったようですよ。
1. トイレでの排尿痛がつらい…
今回は、けいこさん(29歳女性/仮名)からご相談をいただきました。
「ちょっと恥ずかしいんですけれど…。実は、排尿するときに痛みを感じることが多くて」
けいこさんは、声をひそめてえりのボスに言いました。
「それはいわゆる、排尿痛(はいにょうつう)ね。発熱や血尿などの症状はない?」
「はい。鈍い痛みやヒリヒリ感はありますが、他の症状はありません」
「膀胱炎の可能性があるわね。初期の膀胱炎は自然治癒することもあるけれど、泌尿器科の受診が必要なケースもあるから注意したほうがいいわ」
「受診ですか?」
「ええ。強い痛みが長引いたり、発熱や背部痛などの症状を伴う場合は必ず泌尿器科を受診してね」
「わかりました。今は比較的軽い痛みだと思うので、少し様子を見てみます」
えりのボスは、にっこり笑ってうなずきました。
「せっかくだから、今日は排尿痛のよくある原因と予防法、受診の目安について解説しようかしら」
「お願いします」
真剣な表情で聞き入っているけいこさん。これは放っておけません!
2. 排尿痛はなぜ起こるの?
「女性の排尿痛の原因で多いのが、膀胱炎よ。尿道から侵入した細菌が、炎症を起こしてしまうの。女性は男性よりも尿道が短いし、尿道が肛門に近い場所にあるから膀胱炎を起こしやすいのよ」
「そうなんですね…」
「とくに、トイレをがまんしたり、水分をとらなかったりすると膀胱炎を起こしやすくなるから注意してね。性交渉や生理、疲労などが引き金になることもあるわ」
「思い当たる節がたくさんあります。仕事中は水を飲まないし、トイレはがまんしているし…」
「ちなみに、膀胱炎は排尿痛だけじゃなくて、頻尿や残尿感、下腹部痛や血尿などを伴うケースもあるわ。それに膀胱炎以外にも、排尿痛を起こす病気はあるから注意が必要よ」
「たとえば、どんな病気があるんですか?」
「腎盂腎炎(じんうじんえん)や尿路結石、性感染症のクラミジア尿道炎などが挙げられるわね。ストレスや過労などが原因となって、細菌感染を伴わないタイプの膀胱炎になる場合もあるわ。
だから、症状がつらい場合や排尿痛をくり返すときには、泌尿器科を受診することが大切なの」
「わかりました」
「それじゃあ、ここからは排尿痛の予防に役立つ生活習慣についてお伝えするわね」
3. 排尿痛の予防と受診の目安
細菌感染による膀胱炎は、日頃の生活習慣によって予防することが可能です。よく排尿痛になる人は、次の予防法を試してみましょう。受診の目安も紹介します。
3-1. 水分をとり、トイレをがまんしない
きちんと水分をとり、トイレをがまんせず排尿することが膀胱炎の予防につながります。
水分摂取により尿が増えて、排尿回数が多くなるため膀胱内に侵入した細菌を排出することができるのです。
3-2. 十分な睡眠をとり、疲労をためこまない
免疫力が低下すると膀胱炎になりやすくなるため、良質な睡眠をとって疲れをためないようにしましょう。
なお、生理が膀胱炎の誘因になる場合もあるため、生理中はとくにしっかりと静養をとることをおすすめします。
生理中は膣のなかに雑菌が増えやすくなったり、汚れた生理用ナプキンに雑菌が繁殖したりして膀胱炎にかかるケースがあるのです。
3-3. 外陰部を清潔に保つ
外陰部を清潔にすると、尿道への細菌の侵入を防ぐことができます。
排尿・排便後にトイレットペーパーで拭くときは、前(尿道のほう)から後ろ(肛門)に向かって拭くようにしましょう。
性交渉後にシャワーで外陰部を洗い流したり、排尿したりするのも尿道への細菌の侵入を防ぐのに役立ちます。
なお、排尿痛をくり返しやすい人は温水便座の使用には注意しましょう。
外陰部の雑菌を尿道口に侵入させてしまうおそれがあるため、温水便座の使用を控えることをおすすめします。
3-4. 受診目安
排尿痛や血尿が長引いたり、何度もくり返したりする場合は泌尿器科を受診してください。
とくに、38℃以上の高熱や、腰・背中の強い痛みを伴う場合はすみやかに受診しましょう。
細菌の感染が腎臓に及んで腎盂腎炎を起こしている可能性があり、腎不全に至るリスクがあるため迅速な対処が必要です。
4. 排尿痛には漢方薬もおすすめ
「排尿痛を伴う膀胱炎を、何度もくり返してしまう」という人には、漢方薬もおすすめです。
漢方薬のなかには「排尿痛」に効果が認められているものもあり、泌尿器科などで自然由来の治療薬として処方されています。
膀胱炎は膀胱にたまった過剰な水分と熱による炎症やストレス、過労、冷えなどが原因で生じると考えられています。そのため、
・水分代謝をよくして尿の排出を促す
・膀胱の粘膜を保護する
・からだを温めて、膀胱の機能を正常化する
・炎症を抑える
・血流をよくして免疫力を上げる
などの働きのある漢方薬が用いられます。
漢方薬は膀胱炎の症状を根本的に改善し、膀胱炎になりにくいからだづくりを目指すので、排尿痛をくり返す人にはとくにおすすめです。
<排尿痛でお悩みの人におすすめの漢方薬>
・五淋散(ごりんさん):膀胱にたまった熱をとり去り排尿痛に働きかけるとともに、水分代謝を促して排尿させる漢方薬です。過労やストレスで膀胱炎をくり返す場合の使用にも向いています。
・猪苓湯(ちょれいとう):排尿を促して菌を排出させ、膀胱の粘膜を保護します。排尿異常や口の渇きがある人の排尿困難、排尿痛、残尿感などを改善します。
・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):比較的体力があり、熱感や痛みがある人の排尿痛や尿の濁り、残尿感などに用います。気(エネルギー)の停滞により熱がこもって、排尿痛や尿のにごりが起きている場合に有効です。
実際に漢方薬を服用する際には、体質や症状に適したものを選ぶことが重要です。自分に合わない漢方薬を選んでも十分な効果は得られず、場合によっては副作用が出やすくなることも…。
漢方薬に詳しい医師・薬剤師に相談して、自分に適した漢方薬を見極めてもらいましょう。スマホで気軽に相談できる、オンライン漢方個別相談サービスも便利です。
「対面だと排尿トラブルの話をするのが恥ずかしい」という人でも、ネットなら気兼ねなく相談できますよ。気軽にチェックしてみましょう。
5. 排尿痛で、もう悩まない!
「えりのさん、おかげさまで排尿痛のことがよくわかりました。今日からさっそく、予防法をとり入れたいと思います」
けいこさんは、えりのボスに深々と頭を下げました。サロンに来たときは不安そうだったけいこさんですが、今はすっかり晴れやかな表情です。
「お役に立ててうれしいわ。痛みが長引くときは、無理せず受診してね。また気になることがあったら、いつでもサロンにいらっしゃい」
優しい表情でサロンを去っていくけいこさんを、えりのボスは笑顔で送り出しました。
★サロン「コクハク」のオーナー えりの
顔と口調は若いものの、年齢不詳。タヌキか妖怪の噂も囁かれる謎めいた主人だが、ココロやカラダ、健康に関する知識はズバ抜けており、何気にハイスペック。ムスメ時代に苦労してるため、自分より“後輩”の女にはしあわせになって欲しいと願っている。愛称は、えりのボス。
(漫画/腹肉ツヤ子)
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<この記事の監修者>
あんしん漢方薬剤師 中田 早苗(なかだ・さなえ)
デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
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