美や若さへのすさまじい執着に…
そこからは互いのことを話しました。彼は大学卒業後に上京し、現在はインバウンドを対象とした美容医療の仲介をしているそうです。日々「老い」に怯えていた私に、修二君は意外なことを告げてきました。
――僕はいくつかの美容クリニックを担当しているけれど、最近の女性は、美や若さへの執着がすさまじいね。
――美しさや若さは女性にとって宝物よ。気持ちはわかるわ。
――いやあ、それが度を過ぎてる。『せっかく日本の名医を紹介されたんだから』って、患者たちは望む限りの美容整形をやっていくんだ。
シワを消すためにヒアルロン酸注射やボトックス注射を射ちまくるのはまだマシなほうで、耳の後ろを切って皮膚を引き上げるフェイスリフト、脂肪吸引、プロテーゼ隆鼻術、エラ削り、人中短縮、唇をふっくらさせるヒアルロン酸注入、埋没法や目頭切開の二重まぶた、涙ぶくろ…僕からしてみれば、『健康的』を通りこして『人工的』で気持ち悪い。
――人工的…?
――ああ、その点、咲子はいい年の取り方をしている。理想的だよ。
――も…もうオバサンよ。
――謙遜しちゃダメだよ。君は昔と変わらずきれいだし、かわいいよ。
――謙遜だなんて…でも、ありがとう。
褒められたくすぐったさ、そして、コンプレックスから男漁りを続けている自分がとてつもなく惨めになりました。
しばらくして、
――修二君、結婚は?
気づけばそうたずねていました。
――ああ、一度したけどダメだったな…バツイチだよ。咲子は?
――バツナシの独身。恥ずかしいわ。田舎で30歳と言ったら、子供が2~3人いてもおかしくない年齢よね。
――そんなの人それぞれだよ。君さえよければ、これからも時々会わない?」
またしても救ってくれた彼とは結婚も視野に
15年ぶりの再会、そして彼なりの美容医療に対するポリシーを知り、咲子さんはバー通いをやめた。
彼女は語る。
「実は今、修二君と交際しているんです。13歳の時にイジメから救ってもらって、またしても美や老いに対する恐怖心から救いの言葉をもらった感じ。彼に『そのままの咲子が素敵だ』と言ってもらえることで、自分に自信が持てたんです」
ゆくゆくは結婚を視野に入れているという2人。運命という言葉は軽々しく使いたくはないが、これはまぎれもなく咲子さんを救った「運命の再会」ではないだろうか。
(了)
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