介護で見も心もすり減って
直美さんは唇を噛みしめた。
「最近は義父の認知症が進んで、対応が大変なんです。オムツ替えは慣れましたが、朝の3時にたたき起こされて『朝メシはまだか?』と怒鳴るんです。私が『朝食は7時からですよ』と言っても、『とっくに過ぎてるじゃないか!』と怒り狂ってしまって…。
腰の悪い義母は、義父とは別な部屋で寝ており、起こすのはためらわれました。夫にも対応を求めましたが、『家のことは直美に任せているんだから、起こさないでくれ』の一点張り。もう体も心も疲弊しています」
夫が疑い始めた?
今は唯一の救いが、浩介さんとの逢瀬だという。
「浩介さんは『僕も水道修理の仕事を減らして、両親の介護を手伝おうか?』と言ってくれたのですが、断りました。一度だけ、夫が『浩介は離婚してから、やたら実家で夕飯を摂るようになったな。がめつい嫁と別れたのはいいけど、同居する孫の育児を手伝わなくていいのか?』と、怪訝な顔をしたことがあったんです。
その時はドキッとしましたね。私は『授かり婚とはいえ、まだ新婚なんだから、大丈夫だと思うわよ 』と明るく告げたのですが、少しだけ怪しんでいるようにも見えて…」
深夜に義父がリビングに
そんな折、恐れていたことが起こった。
「ある夜、いつものように浩介さんと夕食後にキッチンで晩酌をしていたんです。その日はお酒がすすんで、午前1時を回っていました。
――昨晩、夢に直美さんが出てきたんだ。すごく嬉しくて…でも、朝、目覚めて夢だと知って、空しくなった…。
浩介さんがしんみりと告げてきたんです。
――嬉しい。私も寝る前はいつも浩介さんの温もりを思い出しているの…。
私も思いをこめて、切なげな笑みを浮かべました。
――1泊だけでもいい。旅行に行けないだろうか?
――無理よ。お義父さんやお義母さんの介護もあるし、だいいち勝久さんが許してくれないわ。
互いの手が重なろうとしていた、まさにその時、
――お前ら、何してるんだ!
唐突な怒声に振り向くと、パジャマ姿の義父が、仏頂面で立っていたんです」
続きは次回。
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