カクテルを手にした女の笑顔…鉢合わせを試みることに
更新は15分前だった。
『大磯のプールでプチリゾート気分♪』そんなコメントと共に、カクテルを手にした女の笑顔があった。
その場所は、今暮らしている平塚の自宅から車を飛ばせば30分もしない場所にある。私は、自然に身体が動いていた。
「カンタ、莉奈、プール行こうか」
散らかった部屋で寝転がっていた子供たちは飛び起きて目を輝かせた。
ほぼ地元ではあるが、このリゾートホテルのプールに来るのは、実は初めてだ。
いつか行きたい、いつか行きたい、と夏が来るたびに思っているのだけれど、入場料がそこいらのプールの10倍以上するので、結局いつも市民プールや海水浴で済ませてしまっている。
慶士はいわゆる大手の商社マンで、収入はある方だと思う。だから、値段なんて気にしなくてもいい。だけど、借家暮らしの下流家庭で慎ましやかに育った私の意識がそうさせてしまうのだ。
ここは、東京のお金持ちが行く場所だと思っていた。友達が何かの伝手で無料券をもらったと言っていた時はすごく羨ましかったくらい。
――彼も、最初は地味で庶民的だったはずなのに。
私と夫との出会いは、江ノ島でのナンパだ。彼の人生はじめてのナンパが私だったという。
ギャルだった私、社会人デビューの彼
当時私はギャルで、まだ高校生だった。慶士は大学の四年生。焼けた肌の集団の中で、ひとりだけ白い肌の彼が物理的に輝いていた。
最初はなんとも感じなかった。だけど、時折出る方言や、純粋そうなところが憎めなくて、有名な大学だったこともあり結局私からグイグイ押すようになり、付き合いにこぎつけた。
そして、彼が大手商社に就職し、私も高校を卒業するタイミングで運よく妊娠が判明した。もちろん、そのまま結婚。大手商社は駐在があるから、早めの結婚が喜ばれるらしい。
ここまでは、順調だった。
慶士は社会人デビューをしてしまった。
雪国で生まれ育った彼は、2浪で大学に合格するまで勉強漬けだったと言っていた。大学時代は周囲の洗練された年下のチャラ系エリートたちの中のグループにいながらも、なかなか殻を破れないでいたようだった。
入社後、しばらくは同僚たちに私の存在を隠していたそう。多忙や付き合いを言い訳に、合コンやキャバクラにも行っていたとか。
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