先日、その給付対象から、性風俗事業者だけが除外されたとして、関西地方でデリバリーヘルス(デリヘル)を営む業者が訴訟を起こし、その第1回期日、国側は「性風俗業は本質的に不健全」と主張したとの報道を目にしました。
SNSに流れてきた一本の動画
原告のデリヘル業者の代表者(30代女性)の「国は、性風俗業が社会の一員であることを認めてくれませんでした。持続化給付金や家賃支援給付金は、困っている事業者みんなが受けられる救済です。そんななか、性風俗業だけが救われませんでした」という陳述を読み、そんなことがあっていいのかと憤っていたところ、SNSのタイムラインに一本の動画が流れてきたのです。
印象的なルックスに、力強いリリック。性風俗業への差別反対をラップで歌い上げる清水くるみさんは、なぜ生業として性風俗業を選んだのか、そして今回のことについて、どう考えているのか。お話を聞かせていただくことにしました。
清水くるみさんてどんな人?
――そもそも清水くるみさんは、どんなお仕事をされている方なんですか?
清水くるみさん(以下清水) もともとは、4年くらい前にストリッパーとしてデビューしました。それから1年ちょっとの間、温泉場のストリップ劇場をメインにまわった後に引退。いまはイベントなどでのストリップ風のパフォーマンスをメインにしています。あとは、新宿二丁目にある「bar星男」というバーで日曜日にママをしていたり、「SELF PRODUCE」という風俗店でも働いています。
――「SELF PRODUCE」は、どういった特徴を持ったお店なんですか?
清水 在籍している女性が、プレイのスタイルを決めることが出来るんです。M性感でもいいし、デリヘルでも女王様とか、手コキなどでも。性風俗で働きながら、なにか個人的な活動をされている方が多いですね。「ホンクレch」を運営しているYouTuberのすーさんや、「手コキ研究会」代表で性感染症予防活動をしている今賀はるさんが在籍しています。
それ以外には、自分で企画した写真集の制作や販売、頼まれればエッセイを執筆したりもします。これらの活動をまとめて“坊主ストリッパー”と呼んでいます。
「ハダカノオシゴト」が生まれたきっかけ
――“坊主ストリッパー”というくくりで、表現活動をされているのは、どうしてですか?
清水 坊主頭が一番自分に似合う髪型だと思っていて、ただ「髪は女性の命」とかって昔は言われたりしましたよね。性を売ることに関すると、やっぱり女性らしい容姿でいたほうが売れると思うんですけど、わたしはそうじゃないところでできないかってことを考えて。性別にこだわらずに、自分らしくいながら、性のことを発信していけないかっていうことで、自分の好きなスタイルとしてやっています。
――そういうふうにご自身の好きなスタイルを貫いているところが、清水さんの魅力ですが、性を通して発信したいことは、どういったことなのでしょうか。
清水 息がしやすい世界が作れたらって思っています。みんな、ジェンダーに囚われ過ぎていたり、もしくは、性のことをあんまり言えないっていう状況がある中で、自分を開放できる瞬間、息がしやすい時間・空間があったほうがいいと思うので、ゆっくりそういうふうになっていったらいいなって。
――「ハダカノオシゴト」というラップを発表したのは、どういう思いからですか?
清水 ラップ自体は去年の夏に作ったんですけど、ちょうどその頃、新型コロナで世間の不安も大きい時に、ある社会福祉士の方が、その時の状況と絡めて、性風俗とそれを包括する社会構造についてSNS上で批判をして、性風俗業関係者の中ではかなり話題になったんですね。わたしは新型コロナと絡めて、性風俗への否定的な意見を主張したり煽るのは悪質だなって思って。
ちょうど同時期に、「女の子のためのストリップ劇場入門」(著:菜央こりん 刊:講談社)という漫画が発売されたんですが、そのタイミングでストリップも性的搾取だとSNS上で、バッシングされて。ちょうどその頃、わたしとしては、仕事の上で自分の成長を感じたり、仕事がより楽しくできるようになった時で、世間とのギャップを感じたんです。その気持ちをラップにしたいと思って、リリックを書いて昨年の8月には歌詞は完成していたんですが、そこから実験ラットさんに編集いただいて、MV作って……ってちょっと時間がかかってしまって、今年の1月にようやく発表できました。
完全に勢いで作ったんですが、言いたいことは「風俗もほかの仕事と一緒」っていうこと。
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