映画「美女捨山」が深い 美人がいなくなれば世界はどうなる

内藤みか 作家
更新日:2019-04-04 06:00
投稿日:2019-04-04 06:00
 動画配信サイトGYAO!は、みんなもっと活用したほうがいいのでは、と私は常々思っています。何しろ無料で色々な映画を観ることができるし、配信内容も毎月のように変わるので、次々別の作品が楽しめるんです。映画見放題サイトは色々ありますが、完全無料で見放題なところは珍しいのではないでしょうか。

三丁目の夕日じゃない映画『二丁目の朝日』

 まず、作品のチョイスがなかなかマニアック。多くの動画配信サイトは、独自のオリジナル作品以外は、どこも似た様な作品群を流しているように見えるのですが、ここはひと味違うんです。たとえば、何か事件が起きた際に、それぞれのテレビ局が一斉にそのことを報じるのに、たった1局、テレビ東京だけが、マイペースで別の番組を流していることがありますが、それと似た感じを受けます。

 例を挙げると、以前『ALLDAYS二丁目の朝日』と言う映画が配信されていました。これは昭和30年代の新宿二丁目を描いた秀作で、仮面ライダーに出演していたイケメン俳優の三浦涼介さんも、女装姿で熱演されていました。こんな感じで、なかなか他ではお目にかかれない知られざる作品が密やかに配信しているので、ちょっとレアな映画を観たい人にオススメです。

美人は男をだますから、捨ててしまえ!

 今回私がGYAO!で掘り出した映画は『美女捨山』。美女判定を受けた女性は、20歳になると山に捨てられてしまうお話なんです! その理由は「美人は男をだます悪い生き物だから」。だますとか、キツネかタヌキと同じように忌み嫌われていたんでしょうか。

 この説には一理あるような気もしないではありません。綺麗な女性が男性を騙し、金品を貢がせるという話はいつの時代もあるからです。人を騙すなんて悪い生き物だ!と思う人が出るのも不思議ではありません。けれど! 女を騙して金品を貢がせる綺麗な男というのもいますよね? イケメンも山に捨てちゃわないと、不公平になるのではないでしょうか……。

美人が消えた世界はこんなにもシュール!

 物語では山に運ばれた美女をかくまう男と、かくまわれた美女たちとの交流を描いています。その男には妻がいるのですが、美女のあまりの美しさに気の毒になり、小屋に置いてあげるのです。それも10人近くも!食費だけでも大変なのでは、と心配になってしまいますが、男は彼女らにアクセサリーや服まで持っていってあげてます。貧しいはずのこの男のどこに、そんな資金があるのか、ヘソクリ使い込んでいるのでしょうか。

 そして男に世話されている美女たちが実に面白いんです。自分たちでこの状況を切り開こうというたくましさは見えず、ひたすら自分を着飾るだけ。こんな山奥で着飾ってもしかたないと思うのですが、鏡を見て自分の顔にうっとりしているのだから、なんとものんき。自分の服の洗濯すらもやりかたがよくわからないダメダメさです。そして美女が消えた村では男が次々と「ビジョタラズ」という奇病にかかって倒れていくのでした。

美女はこんなにもオトクな生き物なのだから

 奇病「ビジョタラズ」を治すには、美女のそばに行くこと。そうすると男たちは血気盛んになり、たちまち元気になってしまうのです。でも、美女はみんな山に捨てられているからどうしよう、というのが映画の流れ。姥捨山を描いた傑作映画『楢山節考』のオマージュ作品のようにも思えて、知っている人は楽しめるのでは。

 さて美女に貢ぐ男には嫁がいるのですが、この人がなんだかかわいそうでした。夫をつけていって、美女たちと楽しげに語らっているのを目撃してしまうのです。そして彼女らに刺激されて嫁も綺麗になっていく。すると夫が優しくなったのです。男の人が尽くしてくれるんだし、やっぱり綺麗でいるにこしたことはないな! と納得してしまうほどに、不思議と筋が通っている映画でした。めんどくさいのにどうして化粧なんてしなくちゃならないんだろう、などと疑問を感じている人にぜひ観ていただきたい、なかなか示唆的な作品でした。

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

ライフスタイル 新着一覧


バカにしてる、よね? 部下になめられる理由と上司が改めたい悪癖3つ
 キャリアアップはうれしいけれど、部下ができると「なんだかなめられている気がする…上司としての威厳がないのかな?」と新し...
そのあえぎ声、どこまでが本当ですか?
 素朴な疑問、と頭に付ければ何を聞いても許されるとは思っていないのだが、失礼を承知で、どうしても聞きたいことがある。 ...
いつだって癒しを提供…成長が楽しみな“たまたま”を愛でる
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
お正月にしめ縄って必要かぃ?「しめ縄」と「しめ縄飾り」の違いも解説
 今年もあと2週間を切りました。年末だというのにあまりの暖冬、ここ数日は少しは寒くなったものの更年期のワタクシは、本職の...
「女は見た目がすべて」の思い出に悶々…容姿いじりのトラウマの克服法
「女は見た目がすべて」なんて言葉が昔からあるように、男性よりも女性の方が外見を厳しく見られる傾向です。そして残酷なことに...
落ち込んだらシーラカンスのことを考えるといいかもしれない
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
人生初のぎっくり腰なぜ発症? 40女の激痛を救った意外なコスメは…
 齢46、人生初のぎっくり腰になりました。腰が砕け、身動きがまったく取れない状態に陥るって本当にあるんですね。  デス...
韓国は「ひとり飯」ほぼタブー! おひとり様=みじめな人認定で苦労した
 ちまたでは『孤独のグルメ』(テレビ東京系)や『ひねくれ女のボッチ飯』(テレビ東京系)、『めんつゆひとり飯』(BS松竹東...
2023-12-19 06:00 ライフスタイル
“たまたま”とももうすぐお別れ…去勢前のおやつシーンを激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
自然の石を積んだ石垣でできた江戸時代から続く「棚田の村」
 見知らぬ土地で、山道を越えて現れた見事な石垣に圧倒される。ここまで積み上げる労力を想像すると途方に暮れるし、これが自然...
妙齢って何歳? 三省堂 現代新国語辞典のいまっぽい凡例に注目
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
#3 結婚で“輪”から去る友人への寂しさ。心地よい独身生活で失ったもの
【#2のあらすじ】  ミュージシャンの沙恵は高円寺に暮らし、毎晩芸人の卵や音楽仲間と飲み歩いている。高円寺はうんざ...
#2 友達の結婚、喜べないのはなぜ? 勝ち組を裏切りだと感じてしまう記憶
【#1のあらすじ】  ミュージシャンの沙恵は高円寺に暮らし、芸人の卵や音楽仲間と毎日飲み歩いている。高円寺はうんざ...
「最終的には学歴!」すごいですねー(棒)高学歴義母のマウントLINE3選
 義母が高学歴だとなんとなく上品でスマートな人柄が連想されますが、現実では学歴の高さと人格は比例しないようです。実際には...
2023-12-16 06:00 ライフスタイル
#1 夢を諦めきれない32歳の女。高円寺で燻る芸人らと酒に溺れる日々
 この街は、まるでネバーランドだ。  いつもの店に行くと、いつもの仲間がいて、相変わらずのバカな話で盛り上がれる。...
母親が施設から帰ってくる夢…認知症の予兆を「ボケたな」で済ませない
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...