5歳年上の副編集長にバレバレ
【vol.8】
「お前がおらんと寂しいんやけど」とかわいさ溢れるひろしの深夜電話から、初めて会ったその次の日に、再びひろしのお家に行くことになったわたし。セックスした後に編集部へ戻って仕事をしていたわたしにぼんやりと着実に朝日が注ぎ込みます。
時計を見るともう7時。締め切りギリセーフ。ホッとして編集部のホワイトボードの名前の欄に「14:00 風呂、仮眠」と記入して、タクシーを拾います。ようやく築地の家に帰宅して、すべてを脱ぎ捨てて熱いシャワーを浴びてアーモンドミルクを飲んで髪も乾かさずベッドに倒れ込み、起きたら13時過ぎでした。
メールチェックなどいろいろしながら、玄米を解凍し卵ご飯を食べて、男ウケNo.1のジーンズ地でできたダイアン フォン ステンバーグのシャツワンピースに肌色のストッキングを履き、レースのパンプスに脚を滑り込ませます。いい具合にVネックで屈むと少し谷間が見える系、襟は控えめに立てて(新元号の最中の昭和)、早速、編集部へ――。
席に向かうと10年来の仲間である5歳年上の副編集長が「お前、ピッカピカじゃん。昨日ヤッた?」と言うので、だらしない笑顔で「ふふふ。分かります~?」と答えながら、18時に彼の家に行けるような算段を画策します。
「今夜は何してるんや」のLINE電話
そうするとひろしからLINE電話。途端に胸に溢れる愛しさと多幸感! 副編集長のニヤニヤ目線を気にしながら、いそいそと社内の通話ブースへ移動します。
「今夜は何してるんや」
「会いに行きます」
「そうやったな。肉はどうや」
「(そういう話だったけど忘れているのかな)うれしいです♥」
「18時に明治屋はどうや」
「はい、向かいます。早く会いたい」
「なんやねん。昨日、勝手に帰ったくせに(照)ほんなら18時な」
ブチっと切れる電話。早朝にかかってきた電話で話したことを忘れていることって、わたしもよくあるのでさして気にもとめずにいましたが、のちのち、こういうことが2人の関係に怖いくらいシリアスに影響を及ぼしてきます。わたしは話していたのにひろしが忘れていて激昂されたり、ひろしは話したつもりになっていたのにわたしは知らなかったり……。年齢のせいだと気づくには、時間がかかりすぎました。
わたし、今世紀、最上。
なんて、話していると悲しすぎるので電話のモテテクをひとつ。他人行儀な敬語会話を電話でしているときの、不意のタメ口なデレトークは効きますけん、お試しください。
入稿が終わったので、今日は緩やかな日だし、と思って16時からホワイトボードに「NR リサーチ」と記し、編集部を出て向かった先は美容院。気合いを入れたいデートの前は必ず美容院に行きます。特に相手との関係が初期であればあるほど、とりあえず最初はきれいなヘアスタイルで行けば、今夜の勝率は100%です(なんの)。
シャンプーとセットだったら45分弱、銀座なら3500円くらい、恵比寿・広尾なら4500円強でやってもらえます。銀座、恵比寿、新宿で安くヘアアレンジをやってくれる美容院を持っておくと、デートは勝ったも同然ですからね(なんの)。
今回はちょっと高いけど広尾の方に行き、ふわふわカールにしてもらい、待ち合わせの明治屋に向かいます。明治屋の2階、女子トイレで365度自分をチェックします。
わたし、今世紀、最上。
うん。これくらいの自信を持たないと、小心者のわたしは好きな人に会えないのです。
昨日会ったばかりで、恋か性欲か分からないけど、よく分からないわたしはセックスしたら全員好きになってしまうので、セックスした後なのにこんなに会いたいモードになってくれる男性って超レアなんです。手を合わせて拝みたいくらいのありがたさを覚えてしまうのです。
セックス後のアフターケアがナチュラルにパーフェクトな男性、至高。それが恋ではなくただの性欲でも、うれしいものなのです。
待ち合わせの明治屋1階に15分前に降りると、ひろしはもうすでにいました。待たせてないけど待たせた気分の申し訳ない反面、浮き足立っているのはわたしだけじゃないんだって、ちょっとうれしい気分。彼はわたしの姿を見て、
「ほぅ」
と嘆息し、とても気に入ってくれているようでわたしも満悦です。今夜のひろしのペニスの硬さとお腹につく角度は保障されたようなもんです。
って……
こんなに買う!?
こんなに買う?
このひと、何?
って喜ぶよりドン引きしたわたしですが、わたし同様、ひろしも恥ずかしがり屋で人見知りだったようで、後から聞いた話なのですが、わたしの好きなものが分からないから、とりあえずカートに入れて様子見したそうです。
特にわたしは牧草牛しか食べないので、サシがバリバリの100g2990円みたいなお肉はあんまり、っていう気分でした。でも初デートのスーパーで意見を戦わせるわけにはいきません。
プリティウーマンのリチャード・ギア扮するエドワードが「君が何を好きか分からないから」とビバリー・ウィルシャー・ビバリーヒルズ・ア・フォーシーズンズ・ホテルのルームサービスで、すべての朝食メニューを頼んだジュリア・ロバーツ扮するヴィヴィアンな気分で、黙って彼のお家に搬入されます。
わたしとしては、玄関開けたら5秒で挿入みたいな突っ込まれたい欲が高まっていますが、自制、自制、ドルチェ、我慢しなさい。
ということで81歳のディナークッキングスタートです。
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