まさかの同居…悲しみと憎悪が止まらない
――つらかったですね。
「はい……さらにショックだったのは、しばらくすると、Rさんは私を『H子さん』と呼び、何もなかったかのように会話してきたことです。何かの書物に『できる男は非情である』とありましたが、彼も同じです。悲しさと共に、言い知れない憎悪が膨らんで……それが彼に対してなのか、姉に対してなのかあいまいですが……。
驚いたのは、結婚後は私の両親の望みでRさんが同居するということです」
――同居ですか?
「はい、私の家は3階建てで、1階はピアノ教室と広めの空き部屋、2階がリビングとキッチン、両親の部屋。3階は姉と私の個室でした。シャワーやトイレも2つずつあります。
結婚後は姉夫婦は1階で暮らし、両親は2階、私は3階に住むことになりました。
結婚をきっかけに姉は『ピアノ教室は午後の数時間に減らし、主婦業や夫のサポートをしたい』ときっちり計画を立てていましたね。そして、いずれ生まれてくる子供のためにもいい環境を整えたいと」
同居を快諾した彼の意外な過去
――続けてください。
「Rさんも嫌な顔など見せず、むしろ喜んでいましたね。のちに分かったことですが、彼は北陸の田舎で生まれ、小学生の頃、両親が交通事故で亡くなったので、親戚の家を転々とさせられたようです。大学は奨学金で進み、必死に勉強して知人と共に起業したIT会社を成功させた苦労人でした。
私と付き合っていた時は微塵も見せなかった彼の生い立ちを知り、正直、驚きました……。幼くして両親と死別したことが彼を『義理の家族と同居』という、少々ハードルの高い環境にもOKさせたのかと……いえ、むしろ家族を持てると喜んだのかもしれません。
話はとんとん拍子に進みました。ささやかな結婚式に合わせて引っ越しをして、新婚旅行はナシ。
私が水商売をしていることは、察しがついたんじゃないでしょうか。夜中に酔って帰ってくる姿や、派手なドレス姿をいくども見られましたから……。もちろん、彼も家族も、私には直接言いませんし、私も極力家族との接触を避けていました……」
エロコク 新着一覧