ryuchellとpecoの離婚を考える2本の映画 2022.9.10(土)

コクハク編集部
更新日:2022-09-10 13:02
投稿日:2022-09-10 06:00

【ネタバレあり】理解してくれる存在がいる心強さ

 どちらの主人公も、突然“女装”に目覚めたのではなく、リリーの言葉を借りれば「もともと私の中にいた」。それが何かの弾みで表面化して、再びもとの場所に押し込めることは難しい状況になったところから、物語が始まる。

 彼ら(彼女ら)がカミングアウトを経て、肉体的にも精神的にも「女性」に近付こうとする姿は、不安ながらも期待にあふれて解放感と多幸感たっぷりなのだが、見ている方からすると、時に痛々しく危なっかしい。

 そんな状況で、深刻だけども最悪ではないところで踏みとどまることができたのは、彼らを理解して受け入れ、サポートしようと決めた女性陣の存在が大きい。

「リリーのすべて」のゲルダは、性別適合手術で女性に近付くリリーに「あなたに面倒を見てもらったけど、私は自分の人生を生きる。あなたも同じよ」と突き放されても、命を懸けて女性の肉体を求めるリリーに最期まで付き添った。

新しい「家族の形」とは何か

「彼は秘密の女ともだち」のクレールは、物語の終盤でダヴィッドが交通事故に遭い、意識不明になったことをきっかけに、ヴィルジニア(女性の恰好をしたダヴィッド)に惹かれる自分と向き合う。

 お互いの気持ちを確認した後、女性、女性化した元男性、その前妻との間に生まれた子どもという、ステップファミリーとしても珍しい形に収まった。

 映画の最後のシーンでは、2人が一緒になることを決めた時から7年後の家族が描かれていた。学校に娘を迎えに来たダヴィッドとクレール。ダヴィッドは、以前は好んで着ていた過剰に色っぽいドレスや金髪のウィッグの代わりにブルネットの地毛を伸ばし、細身のパンツを履いていた。

 傍らのクレールのお腹が大きいようにも見えたから、この7年間で彼らなりの「家族の形」を育んできたのが分かる描写だった。

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