先生どうして辞めちゃうの? 保育士さんが一斉退職する理由

小阪有花 子どもの心スペシャリスト
更新日:2019-05-09 04:32
投稿日:2019-05-08 06:00
 保育園で問題になっている保育士さんの一斉退職。子供たちだけでなく保護者の心にも傷を負わせかねない問題ですが、なぜこんなことが起きるの?と不思議に思っている方も多いと思います。
 今回は、私自身も保育園の現場で担任を受け持った経験者として、保育士さんが仕事を辞めたくなってしまう理由についてお話します。

保育士さんが辞める理由はお金だけじゃない

 保育士さんはお給料が安いから続かないんだ、と思ってる方は少なくないようですが、保育士の給料は年々少しずつですが上がっています。

 区によっては家賃補助の上限が10万円まで出るなど、全然お金が稼げない仕事といったイメージからは抜け出しつつあります。

 にもかかわらず、保育士さんは減っていく一方……どうしてでしょうか?

・いじめも少なくない人間関係

 保育園は女性が多い職場のせいか、どうしてもいじめが起こりやすいです。

 私もいじめられた経験がありますが、いじめる側の保育士さんはプライベートがあまりうまくいっていなかったり、日々の重労働に疲れている方が多いです。自分の思い通りにいかないと八つ当たりするように、保育の仕方にあれこれとケチをつけてきます。

 世代によっては保育方針がズレていたりするので、そういった時に話し合いができないこともあり、自分がいる意味はないのでは?と考え、殻に閉じこもってしまう保育士さんも多いんです。

・出世=自分がしたいことではない

 保育園の世界には出世がありません。もちろん厳密にはあるのですが、出世した先は室長や園長など、現場をまとめる役割りや経理管理などになります。

 保育士さんを目指した人は子供が好きだから“愛情をたくさん与えたい”と思っている人たちです。それなのに、出世をすると現場を離れることになり、子供とのかかわりが少なくなってしまいます。

 自分の思い描く保育園を作りたい、という気持ちから園長を希望する方もいますが、大半の保育士さんは、子供たちとかかわり続けたいのです。結果、出世を拒む人も少なくありません。

 出世を考えなければ同じ園に長くいる理由もないので、園を辞めることへの抵抗が少なくなりやすいのは確かです。

・残業が多く仕事を家に持ち帰ることも

 保育業界はまだまだアナログの世界です。近ごろは少しずつデジタル化が進んできてはいますが、いまだに国に提出する書類が手書きであったり、修正液の使用が禁止なので、書き直して修正液を使った後に書類をコピーし直したりと、地味な作業が続きます。

 日誌も毎日書かなくてはならないほか、週案や月案、個人表と書き物が多く、月の制作物やイベントの準備などがあります。子供たちがお昼寝できなかった日は、園で仕事を終わらせることができず、家に持ち帰らざるを得なくなります。

 そして翌朝も早い。こういったことが続くと「書類に追われるために保育士になったわけではない……」と途方にくれてしまう人も多いのです。

・体を壊して働けなくなる保育士さん

 保育士さんは命を預かる仕事なので常に神経を張っています。しかし、相手は体力が無限にあるのでは?と思えてくるほど元気いっぱいの子供たち。

 何人もの子供たちと本気で向き合うためには、かなりの気力と体力が要求されます。そこで無理をしてしまった結果、腰痛などを起こして仕事を辞めざるを得なくなる保育士さんが多いのが現状です。

・とにかく異性との出会いがない

 いつも疲れているので仕事が終わった後に遊びに行くのが辛いし、遊びに行っても朝が早すぎるため、時間が気になってしまいます。もちろん職場での出会いなどほとんどなく、結果、気がつけば出会いがないまま一年が過ぎ……なんてことも普通にあります。

 仕事は出会いを求めに行く場所ではないことはわかっていますが、やはり異性との出会いが皆無に等しいのは、結婚前の女性にとって悩みのタネであるのも事実です。

大好きな保育士の仕事を好きでいられるように…

 保育士さんは子供が大好きだからこそ、子供たちにしてあげたいことがたくさんあります。しかし現実は環境が整わないため満足のいく保育ができず、ジレンマを抱えてしまいます。

 また、疲れ果てため息をもらす姿を子供に見られるのが辛く、好きだからこそこんな自分を見せたくないと、園を離れてしまう保育士さんもいるんです。

保育士の退職は防げない問題ではない

 保育士さんが辞めてしまう理由をいくつも並べてきましたが、これらは決して防ぐことができない問題ではありません。

 保育士さんの頑張りをしっかり評価してあげる仕組みや、適材適所で役割りを与えることでやりがいを感じてもらったり、園内の人間関係は良好かなど、気を配るだけでも全然違います。

 理不尽な上下関係は起きていないか? 仕事に追われて助けを求めるスタッフもおらず孤独になっていないか? 運営側がケアしてあげることで、少なくとも一斉退職などといった事態は防げるのではないでしょうか。

 保護者の方も気が気ではないと思いますが、子供が嫌いになった、という理由で辞める保育士さんはほとんどいません。そこは信じてあげてくださいね。

 子供のためだけではなく、保育士さんが働きやすい職場環境も、皆さんで考えてみてもらいたいです。

小阪有花
記事一覧
子どもの心スペシャリスト
保育コンサルタント。アイドル時代の旧芸名は小阪由佳。「ミスマガジン2004」グランプリで芸能界デビュー。09年に引退後、保育園の先生を経て現職に。チャイルドカウンセラー、幼児食インストラクター、ベビーシッター、家族療法カウンセラーなどの資格を持つ。
XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


花屋が一押し!敬老の日に「マリーゴールド」を贈りたい理由。長持ちさせるコツはある?
 今年もシビれるくらい暑い夏でございました。  最高温度は毎日のように体温超え。心配していたのは作物の生育。備蓄米...
賛成or反対? 職場にいる“2世社員”への本音。本人的には「バレたくない」ってなんで?
 あなたの職場に、親が会社の中心人物である「2世社員」はいますか? コネ入社ゆえに対応が厄介だったり、逆に出先では信頼さ...
「都合がいい時ばっかり!」未熟な若妻にイライラ…53歳の義母が下した“自己防衛”作戦
 息子が結婚をすれば、息子の妻(いわゆる「お嫁さん」)も家族の一員。だけど、“家族”だからこそ生まれる“摩擦”や“モヤモ...
業界人「あの子、お気に入り枠だから」の噂。芸能界に渦巻くタレント達の“自尊心と屈辱”のはざま
「この子、社長のお気に入りだから」  そういう一言を、私は何度となく耳にしてきた。現場に漂う空気は一瞬で変わる。誰...
ストレスとは「心のコップ」がたまること…自分からのSOSに気付く意外なヒント【専門家監修】
 2012年に59歳で亡くなったロック歌手・桑名正博さんとアン・ルイス(68)の長男でミュージシャンの美勇士さんや、タレ...
公園でのケガも学校のせい! ラスボス級“モンスター保護者”のヤバすぎる行動6選
 学校などに対し、自己中心的な要求をしたり理不尽に怒鳴り込みに行ったりするモンスターペアレント。そんな保護者に悩み、現場...
“イケにゃん”の貴重な大胆ポーズ♡ テレビ番組に夢中なプリンスの休日
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
部下の妻に恋をして…不適切な関係に焦がれた男の末路。色恋沙汰のスキャンダルの恐ろしさ
 職場や近所、SNS界隈に現れる「残念な人」、いますよね。実は今から約2000年前から現在に伝わる「聖書」にも「残念な人...
昼寝中の我が子がいない! 育児の恐怖体験エピソード。前世の記憶にゾッ…
 今回は、育児の恐怖体験エピソードを集めてみました。これらは誰にでも起こり得る出来事。育児真っ最中の方はぜひ参考にしてく...
【漢字探し】「嫁(ヨメ)」の中に隠れた一文字は?(難易度★★☆☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
“クレクレ”ママがご降臨! 金持ちなのに「ランドセルもらえない?」って引くわ…ケチすぎLINE3選
 今回ご紹介するのは「ケチだな」と思ったLINE。ケチなのか、ケチではなくフェアなのか、人それぞれ基準は異なりますが、あ...
それ入れちゃう!?  我が家の「かさ増し食材」を大公開。節約×ダイエットにもベストな10選
 メニューの定番の食材を、別の食材で「かさ増し」させたことはありますか? 食費の節約、栄養バランスの調整、ダイエットなど...
「じゃ、誕プレとデート代返して」ってケチすぎない!? 相手の“本性”に幻滅したLINE3選
 あなたが信頼している彼氏や親友は、別の顔を持っているかもしれません。  もしも、そんな相手の本性を目の当たりにし...
「大金に手が震えた」若手芸人が打ち明ける“営業”の実態…VIP相手の席で抱いた違和感の行方
 世間を揺るがす芸能界の黒い噂。ニュースとして報じられ、真実が明らかになることも増えました。現在は清浄化が行われている芸...
推し活ロス、将来の不安…独女にこそ「サウナ」を勧めたい。暑苦しい場所が“居場所”に変わった理由
 外出もままならず、仕事も減り、推しにも会えない――そんなコロナ禍の真っ只中、アラフィフ独女の私が偶然出会ったのが「サウ...
媚びない女は憧れる女性へ、スナックママが「一匹狼を目指すな」と伝える真意
 スナックのママといえば、たいがい激動の人生を歩んできたことが多く、その会話は含蓄に富んだものばかり。  今回はつ...