【「らんまん」第1週】まさかの母他界、朝ドラの主人公は変人が面白い

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-04-09 06:00
投稿日:2023-04-09 06:00

NHK朝ドラ「らんまん」~第1週「バイカオウレン」(4月3~7日放送)

 土曜の朝ドラは、月~金曜までの計5日間をギュッとコンパクトにまとめたダイジェスト。2020年度前期の「エール」から、制作現場の負担を軽減する働き方改革により、月~金曜は新作、土曜は1週間の振り返り=ダイジェスト、という現在のスタイルに変更されました。

 平日は学校や会社があるから見られないという人も、今週ちょっと見逃してしまったという人も、土曜のダイジェスト版を見れば安心、なんとかなる救済枠です。そんなダイジェストから、「らんまん」第1週「バイカオウレン」の感想を少々。

 春爛漫の候にスタートした朝ドラ「らんまん」。高知県出身、“日本植物学の父”といわれた牧野富太郎をモデルにした長田育恵によるオリジナル脚本です。

土曜日の“まとめ”も宮崎あおい

 これまで「エール」では朝ドラおじさんことバナナマン日村、「おかえりモネ」ではサンドウィッチマンがナビゲーターを務めるなど、土曜は特別扱いでしたが、今回は本編で<語り>を務める宮崎あおいが引き続き担当するようです。

「連続テレビ小説『らんまん』。いよいよ放送スタートです。個性豊かな草や花たち、そして魅力的な人々との出会いに満ち溢れた主人公・万太郎の物語。毎週土曜日、一緒に見守っていきましょう」

 本編と同じく<語り>を務める宮崎あおいが私たちに語りかけます。その声をバックに、今回の主人公・万太郎を演じる神木隆之介が登場。水辺で新種の草花を見つけ、手に取った草花に「初めましてー」と挨拶。どこから見ても陽キャな万太郎。が、神木くんの本格的な登場はもう少し先のこと。しばし幼少時代の万太郎(森優理斗)のエピソードを楽しむとしましょう。

病弱な主人公の悩み

 時は慶應3年(1867年)。わずか5歳にして酒蔵「峰屋」の当主の万太郎。祖父や父はすでに他界。祖母のタキ(松坂慶子)が本家を切り盛りしています。万太郎の母ヒサ(広末涼子)も病床にあり、万太郎自身も走るとすぐに熱が出てしまう。姉・綾は利発で男勝り。体も丈夫そう。しっかり者の頼れる姉です。

 ほかに、祖母に万太郎の世話役を命じられた使用人の息子・竹雄(井上涼太)。彼らが今後、万太郎を支えていくことになるのでしょう。

「生まれてこんほうがよかった」という大人たちの言葉に傷つき、家を飛び出した万太郎は裏の神社で天狗と出会います。悩みを打ち明けると、

「生まれてこんほうがよかった人ら、ひとりもおらんぜよ。この世に同じ命らひとつもない。みんな自分の務めをもって生まれてくるがじゃき。己の命と心を燃やして何かひとつことを成すために生まれてくるがじゃ。おまんも大きゅうなったらなんでもできる。望むものになれるがやき。さあ望みは? おまんはなにがしたいぜよ」

 万太郎に言葉を投げかける天狗の正体は土佐のヒーロー、坂本龍馬(ディーン・フジオカ)でした。

 いなくなった万太郎を探しに来た母は、白い花を見つけ、「おかあちゃんが1番好きな花。冬の間ずっと冷たい地面の下でちゃんと根を張って、春、真っ先にこんなに白くて可愛い花を咲かせてくれちゅう。この花はたくましい。命のちからに満ちちゅう」と万太郎に語りかけます。

「何て名前?」と聞く万太郎に、母は「名前は知らんき。どうしてこんな花が咲くか不思議じゃねえ」。

「春になったらおかあちゃん、あそこにおるね。また会おうね」

 そんな言葉を遺して静かに息を引き取った母。

 そして、春。約束の場所に来た万太郎は白い花を見つけます。

「咲いたねえ。見えんなっても命のちからに満ちちゅう。万太郎もね」という母の言葉に涙しますが、「さあ望みは? おまんは何がしたいがぜよ」という龍馬の言葉に、「わしはこの花の名前が知りたい!」と力強く答えます。その足元には、白い花が広がっていきました。

 第1週目にして母が他界するとは思いもしませんでしたが、その死によって、万太郎は生涯為すべきことを見つけたのでした。冒険の始まりに胸が高まります。

【第1週「バイカオウレン」のツボ】

「わしはこの花の名前が知りたい!」(万太郎)

 チビ万太郎(森優理斗)、大活躍の1週間でした。決していい子とはいえないところも気に入りました。蔵人たちへのねぎらいの言葉からは、人たらしの才能も感じられ、どんなチャーミングな人に成長するのか楽しみです。

 ディーンの龍馬との再会はあるのでしょうか。朝ドラの主人公はちょっと変人なくらいが面白いので、万太郎には期待できそうです。母・ヒサになりかわり、見守っていくとしましょう。

 あいみょんの主題歌「愛の花」も爽やかな朝にふさわしいのですが、ドラマを盛り上げる阿部海太郎の劇伴がとても心地よく、注目ポイントです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


『虎に翼』の週タイトルになぜ「?」はる記“主婦乃手帖”で一発逆転なるか
 直言(岡部たかし)は寝たきりでろくに食事も取ろうとしない。そんな様子をはる(石田ゆり子)は心配していた。  一方...
桧山珠美 2024-04-30 13:50 エンタメ
大谷結婚モロ被りの不穏も何のその!各世代イケメン網羅のキムタクドラマ
 木村拓哉(51)主演ドラマ「Believe-君にかける橋-」(木曜21時、テレビ朝日系)がスタートしました。待ちに待っ...
永瀬廉は大人の色気、髙橋海人はヘタレの真逆 確かに築くキンプリ2人体制
 昨年より、2人体制となったKing & Prince(以下、キンプリ)の永瀬廉(25)と髙橋海人(25)。4月期に始ま...
こじらぶ 2024-04-27 06:00 エンタメ
岩ちゃんか仲野太賀か…優三株の上昇、高等試験に落ち続ける原因判明!?
 突然、猪爪家に検察が押しかけ、はる(石田ゆり子)は直言(岡部たかし)が贈賄で逮捕されたと告げられる。  証拠品と...
桧山珠美 2024-04-26 16:45 エンタメ
まるでコント!寅子との恋フラグは立たず、崖から落ちる花岡(岩ちゃん)
 親睦を深めるためハイキングに行くことになったが、花岡(岩田剛典)たちの態度に溝を感じ、浮かない気持ちの寅子(伊藤沙莉)...
桧山珠美 2024-04-24 14:35 エンタメ
ガンちゃん登場! 目の前にビール瓶2本…寅子の酒豪ぶりは母のはる譲り説
 本科と呼ばれる明律大学法学部に進学した寅子(伊藤沙莉)たち。法改正が行われ、女子も正式に弁護士になるための試験を受けら...
桧山珠美 2024-04-22 15:40 エンタメ
「366日」、髙橋海人「95」学生服コスプレ繚乱!関口メンディー何留?
 新ドラマを見ていて気づいたことがあります。それは過去と現在を行き来するドラマで、俳優さんたちがそのまま高校時代や大学時...
すわ、嫁姑戦争勃発か!? 月のもので結束力まで描く脚本の妙
 実際の事件を調べるため、まんじゅうを作ってみることにした寅子(伊藤沙莉)たち。すると涼子(桜井ユキ)が急に謝罪したいと...
桧山珠美 2024-04-19 15:50 エンタメ
「お月のもの」ネタ再び、寅子らの生理談議にマスターのヘンな気遣い
 よね(土居志央梨)は貧しい生い立ちを明かし、涼子(桜井ユキ)や寅子(伊藤沙莉)など、同級生らが恵まれていることに憤りを...
桧山珠美 2024-04-18 16:50 エンタメ
森香澄は“嫌われる女”を演じてる説 「女子アナ」抹消計画を進行中!?
 元・テレビ東京の「女子アナ」で、昨年3月に退社してフリーに転身後、バラエティ番組を中心に引っ張りだことなっている森香澄...
堺屋大地 2024-04-17 06:00 エンタメ
朝ドラ史上初の快挙!ヒロインの月のもの(生理)事情が描かれた
 生徒数が減り、存続の危機に陥る明律大学女子部。宣伝のため2年生の寅子(伊藤沙莉)たちは先輩の久保田(小林涼子)・中山(...
桧山珠美 2024-04-15 15:48 エンタメ
平野、神宮寺、岸のNumber_i返り咲きの春! 欲いえばもっともっと…
 さくら満開の春、Number_iがテレビに帰ってきました平野紫耀(27)、神宮寺勇太(26)、岸優太(28)、お久しぶ...
「ニャニャニャニャニャ」寅子の必殺技!いずれ強い虎になる“伏線”か?
 判決の日。寅子(伊藤沙莉)たちの予想は外れ、妻が着物を取り戻すことが認められる。大喜びする女子部の面々だったが、よね(...
桧山珠美 2024-04-12 18:20 エンタメ
不祥事芸人・フジモンの賛否両論の復帰劇!実は吉本への貢献度が抜群?
 昨年10月に当て逃げ事故を起こして活動自粛していたフジモンことFUJIWARA・藤本敏史が、3月23日放送の『さんまの...
堺屋大地 2024-04-12 06:00 エンタメ
寅子「あきらめたらそこで終わり」はもしや…名作漫画のイズムにニヤリ
 傍聴した裁判について尋ねた寅子(伊藤沙莉)に対し、穂高(小林薫)は皆で議論してみるよう促す。  暴力を振るう夫か...
桧山珠美 2024-04-11 15:25 エンタメ
トラコ入学、伊藤沙莉は表情筋を自由に操る女優…男装の山田よねにも注目
 昭和7年。晴れて「明律大学女子部法科」に入学した寅子(伊藤沙莉)のクラスには女子の憧れの的の華族令嬢・桜川涼子(桜井ユ...
桧山珠美 2024-04-08 18:38 エンタメ