“桐島部活”への敬意、徳永助教授(田中哲司)実はいい人パターンだった

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-06-13 14:00
投稿日:2023-06-13 14:00

NHK朝ドラ「らんまん」~第11週「ユウガオ」#52

 石版印刷の技術を習得した万太郎。ようやく納得のいく刷り上がりになり、いよいよ、植物学の学会誌を大畑印刷所に注文する。

 学会誌の準備をしながら、未分類の標本の整理と検定をすすめてきた万太郎。それもすべてやり遂げ、大学の標本と自身が土佐から持ってきた標本を一緒にロシアへ送ることを田邊教授(要潤)に願い出る。

 学会誌送付の容認について、徳永助教授(田中哲司)から真意を尋ねられた田邊。

「水準に達していれば認める。が、そうでなければ、学会の名を語って出されては困るから、1冊残らず燃やさせる。むろん、金も出さない」と本音を語った。

 それを聞いた徳永は、論文に本気で取り組もうとしない学生にハッパを掛ける。

【本日のツボ】

「この人、うち、やめるってよ」(大畑印刷の娘・佳代の台詞)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 大畑印刷所の面々とも信頼関係を築いた万太郎(神木隆之介)。ついに石版印刷の技術を習得し、いよいよ次のステップへ。

 万太郎が「大将、お話があります」と刷り上がった植物画を見せ、「やっとまともな1枚が刷れるようになりました、ほじゃき……」と、大畑に話しかける。その仕上がりに目を細めつつも、「やめるのか」と勘違いする大畑。

 さらに「万さんがやめるってよ」と、イチ(鶴田真由)に向かって叫び、奥から出て来たイチも「えー、困るよ。うちが不満かい」と。

 さらにさらに、娘・佳代(田村芽実)まで出て来て、「この人、うち、やめるってよ」と職人たちに告げ、「おい、やめるのか」「岩さんが寂しがるぞ」「寂しいぞ」と三段落ちで引き留める職人たち。

 一連の騒ぎを黙ってみつめる竹雄(志尊淳)。万太郎が大畑印刷所の人たちに愛されていることを知り、その胸に去来するものは……。

「万さんがやめるってよ」という大畑の台詞に、「ん?」と思ったのですが、佳代の「この人、うち、やめるってよ」で確信しました。これは紛れもなく神木くん主演映画「桐島、部活やめるってよ」(2012年)を意識したものでしょう。

 脚本家長田育恵の遊びごころと、神木くん愛を感じる台詞とみました。

【おまけのツボ】

「問題。アサガオ・ヒルガオ・ユウガオ、1つだけ異なるのは、ど、ど~れだ」(徳永助教授の台詞)

 ヒルガオとユウガオを観察している万太郎に、突如、謎のクイズを出した徳永。そして、「私はユウガオが好きだ。『源氏物語』に出てくるから、私は日本文学が好きなのだ」と万太郎に打ち明けた。

 それを聞いた万太郎が「私も好きですき」と万太郎が言うと、「べんちゃらはいい」とツンデレ徳永。立ち去ろうとする後ろ姿に、「好きです。特に『万葉集』」と語りかける万太郎。

 すると、背を向けたまま「朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど」と口ずさんだ。後を受けて「夕影にこそ 咲きまさりけり」と詠む万太郎に、顔が少しほころんだ徳永。短歌を使って、氷解の瞬間を見事に描いて見せました。

 徳永助教授が実はいい人パターンに、「あさイチ」の華丸も大喜びでした。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


地殻変動!下剋上球児、うちの弁護士…視聴率では見えないバズり作品は
 シリーズものを除いた主要民放プライム帯ドラマ全12作の全話平均視聴率が5.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯=以...
こじらぶ 2023-11-25 06:00 エンタメ
ゴンベエ(宇野祥平)の素性が明らかに…上方新喜劇ばりの人情劇がグー
 ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、スズ子(趣里)は梅吉(柳葉敏郎)と今後のはな湯をどのようにしていくか相談する。  ...
桧山珠美 2023-11-24 16:11 エンタメ
母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ
「下剋上球児」で“令和のキムタク”になりそうなイケメン俳優は?
 2019年のドラマ、「3年A組-今から皆さんは、人質です」(日本テレビ系)を覚えていますか?  菅田将暉が教師役...
「らんまん」のデジャヴ? ヤバ藤化するダンサーの中山、秋山逃げて~
 内緒の話があると松永(新納慎也)から呼び出されたスズ子(趣里)は、梅丸のライバルである日宝に一緒に移籍しないかと誘われ...
桧山珠美 2023-11-14 16:15 エンタメ
木下優樹菜から迸るガチヤンキー魂!前言撤回、TV再登場するタチの悪さ
木下優樹菜様(元タレント・35歳)  やっぱりユッキーナ(木下優樹菜)様のヤンキー魂には惚れ惚れしてしまいます。 ...
堺屋大地 2023-11-14 06:00 エンタメ
市川染五郎は眉毛、堅あげポテト、ラ・マンチャの男なくしては語れない
 先日、歌舞伎で「ルパン三世」をやることが報じられました。題して、新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」。  ルパ...
上原多香子は不倫を繰り返す“恋愛単発ドラマ”の女王!続編不要体質の業
上原多香子様(女優、美容家・40歳)  元SPEEDの上原多香子様は、あまり役者業のイメージはないと思いますが、す...
堺屋大地 2023-11-14 16:23 エンタメ
スズ子覚醒!茨田りつ子(菊地凛子)と渋谷のり子の表情がオーバラップ
 歌うコツを掴んだスズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)とのレッスンを続け、その歌声はぐんと熱を帯びてきていた。  ...
桧山珠美 2023-11-10 14:30 エンタメ
“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...
大和玲子(蒼井優)の戒名に「礼」と「優」、位牌の細部にまで抜かりなし
 スズ子(趣里)たちは、大和礼子(蒼井優)が出産後に病院で亡くなったと知らされる。スズ子はお別れの会で、大和が梅丸少女歌...
桧山珠美 2023-11-03 14:30 エンタメ
スズ子のナレ出世、股野のナレ求婚…感動のシーンを描いて欲しかった!
 昭和12年、スズ子(趣里)が香川から戻ってきて3年。梅丸少女歌劇団は、秋山(伊原六花)のタップダンスとスズ子の歌を二本...
桧山珠美 2023-11-01 15:37 エンタメ
SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?
 嵐の二宮和也(40)がSMILE-UP.(旧ジャニーズ)からの独立を発表しました。  中丸雄一、山田涼介、菊池風...