【今回の女ことば】べっぴんさん
美人を指す言葉に「奇麗」や「べっぴん」があります。
「奇麗」は姿、形、顔立ちなどが、花やかに美しいさま。(広辞苑 第7版)
ちなみに「奇麗」「綺麗」はどちらが正解? どちらも正解でしょうか。
「綺」は常用漢字ではないため、記者ハンドブック(第14版)では『きれい・奇麗』。ただ「綺」は名前に使える人名用漢字なので、一般的に『綺麗』も使われているのかもしれませんね。
「べっぴん」の意は、
・「美人」のやや古めかしくてくだけた言いかた。(例解 新国語辞典 第10版)
・主として会話などに「美人の」意で使われた古めかしい漢語。(日本語 語感の辞典 第1版)
・その由来は「別品」で、特別にいい品物。(三省堂 国語辞書 第8版)
芳根京子主演のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(2016年度下半期)も、<心をこめて「べっぴん=別品」の子供服作りに邁進するヒロインの物語>がテーマでした。
「べっぴんさんだね」「いつも奇麗ですね」
仮に誉め言葉や冗談として「きょうも、べっぴんさんだね~」「いつも奇麗ですね」と発言しても、セクシュアルハラスメントや外見至上主義のルッキズムにもとられかねない昨今。
人事院の「これってセクシュアル・ハラスメント~理解度チェック」には、こんな設問があります。
《女性職員にはいつも「綺麗だね」と褒めている》
でもって、その答えはセクハラに【なる場合も】と明記されています。
解説文は【たとえ褒め言葉でも、言い方によっては女性を軽視していたり、性的な観賞の対象としてしかみていない場合があり、セクシュアル・ハラスメントになります】。
『声にならない声』
この「なる場合」は、職場での人間関係や環境などによるのかもしれませんね。上司や先輩から言われるから笑ってごまかすなど、人によっては『声にならない声』もありそうですし。
男女雇用機会均等法などの改正や、中小企業を含む全企業で労働施策総合推進法(パワハラ防止対策)が義務化され、ハラスメント相談窓口の設置や防止研修なども行われています。
それでもいかんせん、ハラスメントをしている本人に自覚がなければ、すべて他人事のように聞き流されるだけ、という困った現状も……。
ハラスメントは男女の性別関係なく起こり得ることで、自分が加害者になる場合だって考えられます。
厚労省の「あかるい職場応援団」のサイトでは、<「男らしい」「女らしい」など、固定的な性別役割分担意識(男性は外で働き、女性は家庭を守るべきである、といった性別に基づく役割意識)に基づいた言動は、セクシュアル・ハラスメントの原因や背景になってしまう可能性があります>と注意喚起しています。
前出の理解度チェックや、この「あかるい職場応援団」のサイトでいま一度、確認してみてはいかがでしょうか。
(日刊現代校閲/タダ美)
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