不妊症大国ニッポン…卵子凍結で産みたい人が産める社会へ

西史織 卵子凍結コンシェルジュ
更新日:2023-01-26 20:25
投稿日:2019-08-11 06:00
 子供を産みたい人がちゃんと産めるような社会にしたい。不妊治療で悲しむ人をゼロにしたい。これが私の願いであり、目標です。実際に不妊治療をして悩んだり苦しんだりしている人を近くでみてきました。

日本は世界一の不妊症大国

【01_卵子凍結】

 実は日本は世界一の不妊症大国。調査国全60カ国中、不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位なんです(2016年「国際生殖補助医療監視委員会」レポートより)。これは、私たちの知識不足と医療の両方に原因があると考えます。

 日本は医療の技術自体は高いのですが、法整備が遅れていることが問題です。欧米では自分の卵子が老化などが原因で妊娠できない場合、ドナーの卵子提供を受けることがメジャーですが、日本では倫理的観点から進まないという現状もあります。さらに知識不足から、独自の方法やサプリなどの間違った妊活をしているあいだに不妊治療が手遅れになるケースも多いようです。

独身でも正しい情報を知っておくことが大切

 つまり産みたくても産めなくて苦しんでいる女性がたくさんいる――。

 私はまだ結婚をしていないので、不妊治療の経験はないのですが、この問題は全く他人事とは思えませんでした。女性の社会活躍が当たり前となった日本では、私たちミレニアル世代はもっと晩婚化・晩産化になっていくでしょう。

 すると、必然的に高齢出産になり、不妊治療をするようになる割合が高くなります。これはどうにかしないといけない問題です。もっとも社会の構造を変えることは一朝一夕ではできませんし、そもそも個人でどうにかできるものでもありません。

 ですが、私たち自身ができることもあるんですよ!

 独身のうちから知識や情報を得て、自分の身体の状態をチェックする習慣や卵子凍結などの選択肢があることを知っていれば、もっと早く対処ができ、不妊治療をせずに済むかもしれない。これって、これから結婚や妊娠を望む私たち世代にとってすごく大事なことだと思うんです(私自身、卵子凍結を行っています。リアルな当事者目線も踏まえながらこの連載では実際にいろいろとお話ししていきたいと思っています)。

仕事と妊活を両立する難しさ

 私の先輩(30代前半・結婚5年目)は、4年ほど不妊治療に悩み、なかなか子どもを授かりませんでした。精神的にも肉体的にもすごく辛そうでしたし、何よりお仕事もされていたので両立するのに苦労していました。不妊治療では、身体のサイクルに合わせて通院しなければなりません。仕事が忙しいタイミングと重なると、治療のタイミングを逃してしまって次の月の排卵日まで待たないといけなくなることもあります。

 やっとの思いで予約を取っても、仕事帰りの19時にクリニックへ向かうと平気で1時間〜2時間待つことだってあるんですよ。何のための予約時間って感じですよね(苦笑)。その間、待合室で何してると思いますか? ほとんどの女性は仕事してます。黙々とパソコンを立ち上げてカタカタカタカタ……治療以前に画面とも格闘しています。想像以上にハードな現実です。

アメリカ女性は出産への意識が高い

 では、日本と同様に晩婚化が問題となってるアメリカはどうなんでしょうか?

 アメリカでは、女性(Female)と技術(Technology)を掛け合わせた「フェムテック」という分野が発達しています。技術の力で女性の健康問題やライフスタイルの悩みを解決する試みのことで、シリコンバレーを起点にニューヨークや複数の州でも認知され、ここ数年、卵子凍結などのサービスを行うスタートアップ企業も勢いがあります。

 個人の尊厳が守られ、女性の自立心が強い国ということもあり、ひとりひとりの意識も高いです。自身の妊娠可能な年齢を自覚し、20代後半になるといつ妊娠するかなどのライフプランとキャリアプランを考え直すという文化があるようです。

 卵子凍結においても、日本が年間約700人に対し、アメリカでは9000人弱が行っているというデータもあるんですよ。

 アメリカ女性は、生理期間は仕事を調整するなど合理的な働き方をしていますが、日本では我慢して“当たり前”。残念ですが、ツラくても無理をしなければならない場面が多いですし、ましてや出産計画を立てる意識はまだまだ低いのかもしれません。日本の女性も大事なことをちゃんと話せる社会になったらいいですよね。

自然妊娠に挑む期間が長い人は注意

 友達と「今日生理痛ツラい」くらいの雑談はしても、それ以上のことってなかなか話さないのが現実だと思います。例えば、「生理痛酷いんだったら、子宮内膜症の可能性もあるから病院行った方がいいんじゃない?」とか、「そろそろ卵子の質が落ちてくる歳だから将来の為に凍結しようと思うんだけど、どう考えてる?」とか話しませんよね。ほとんどが「いや、そんなこと知らないし」「分からない」というのが現状かもしれません。

 ミレニアル世代の私たちが10代の頃に学校で受けた性教育って、「性行為をしたら子どもができるから避妊しなさい」といった驚くほどザックリとした決まり文句ぐらいで、妊娠するための知識はきちんと教えられていません。それでいて大人になった今、先輩や友達が直面してるのは、「何回トライしても妊娠できない。なんで?」といった、どうやって妊娠するのか分からない状況です。

 分からなくて当然ですよね、だって性行為したら妊娠するとしか教えられてないんですもん。「子供ができない」となって、初めて妊活についてネットで調べたり、周りの友達に聞いたりします。

「あれ? なかなか妊娠しないな。でも、もうちょっと頑張ってみよう」と自然妊娠に挑む期間が長いと、不妊治療が必要な人も開始年齢が遅れてしまいます。

 時間は残酷で、年齢によって不妊治療の成功率は変わってきてしまうのです。

西史織
記事一覧
卵子凍結コンシェルジュ
金融業界で営業、IT業界で事業開発に従事後、27歳のときに将来のことを考え卵子凍結をする。その経験から、女性のライフステージと仕事の両立についてをライフテーマに活動。妊活をしている方や卵子凍結をしたい方へ向けたクリニック検索サイト「婦人科ラボ
」を運営。Xでの情報発信や、日刊ゲンダイ、日経xWOMANでの執筆も行う。

ライフスタイル 新着一覧


子ども同士のLINEにもドラマが!将来の夢はスパイに忍者…ピュアな感じがたまらん
 最近では、小学生でもスマホを持っている子が増えていますよね。連絡ツールとして友達とLINEを使いこなし、時代は変わった...
女はお嫁さん要員? 年収800万でも「行き遅れ」と見下される田舎の地獄
 西新宿の高層ビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、悠々自...
毒親の介護をしたくない 実家から逃げた女が「決別」のため払った金額は
 西新宿のビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、おひとりさ...
田舎を捨てた「独身女」は不幸ですか 絶縁した家族が来て…今さら何の用?
 いまだ残暑が残る9月の初め。月曜日のAM7:30。  すでに汗ばむ陽気に包まれながら、西村咲子は新宿西口の高層ビ...
職場で飛び交う「大人のちくちく言葉」4選。無意識に同僚・後輩のモチベを下げてない?
 人の気持ちを不快にさせる、ちくちく言葉。子どものちくちく言葉は「アホ」「バカ」「マヌケ」などストレートですが、大人にな...
“たまたま”に見覚えあり!尾道市立美術館の「ケンちゃん」ではないかぃ?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
大優勝!秋から元気な“開運最強”花5選。一輪挿しでも存在感たっぷりで映える1本を紹介
 台風10号の遠隔豪雨は、神奈川にあります猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも様々な影響を及ぼしました。大雨を睨みなが...
みんなどうしてる? 大地震の経験者が語る我が家のリアルな地震対策7選
 南海トラフ地震の危機感が高まる中、「我が家も地震対策を見直さないと」と思っている人は増えているようです。ただ、実際に被...
バツイチ女一匹「昭和の意地」を捨てたおじさまから商店会会長を任されましたよ…!
 前回、ポンコツ商店会再起動という渦に巻き込まれた私。とりあえず、様々な問題解決のため、床屋さんと元酒屋さんとの密なミー...
猫飼う40独女が準備する「防災グッズ」元カレのアレと被災した親の経験談が沁みる…
 9月1日は「防災の日」でした。地震や台風などに対する不安が高まっている今、災害に備えていますか? 私は、しなきゃしなき...
40代“子育て女”キャリア再形成に苦戦中。専業主婦→パートを経たその先のハードルが高すぎる
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。  最近、フ...
簡単!秋におすすめのアロマと桃尻・股関節・ふくらはぎ・内ももの鍛え方【調香師がチャート別に解説】
 適度な運動で汗をかくと健康になるのはもちろん、達成感で幸福ホルモンが刺激され、心や肌にも潤いを与えます。今回は、フェロ...
祝“たまたま”2nd写真集発売!「神表紙」の魅惑ポーズの裏側に迫る
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
水の中の緑のカーテン
 水底に沈んで  上を見上げているつもりになって  涼んでみる
「阿婆擦れ」は“当て字”。もともと男性にも使われていた
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
目指すは我が家でホムパ! プ~ンと漂う家の臭いの根源と3つのテッパン対処法
 自分の家の玄関を開けてふわっと嫌な臭いがした時、本当に凹みますよね。  わが家の臭いには、慣れてしまいがち。他人に気...