タナケン(生瀬勝久)の決め言葉、「どうだろうね」に込められた真意

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-01-22 15:16
投稿日:2024-01-17 15:55

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第15週「ワテはワテだす」#74

 スズ子(趣里)は、不安を抱えたまま喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との舞台稽古を続けていた。

 なんとかしようと、スズ子はタナケンにアドバイスを求めるが、相変わらずタナケンからは何も言うことはないと言われてしまう…。

 そんなある日、スズ子の家に小夜(富田望生)が泣きながら訪ねてくる。小夜は恋人のアメリカ兵(ジャック・ケネディ)に捨てられたのだという。

 それを聞いたスズ子は、アメリカ兵を探しに家を飛び出していく。

【本日のツボ】

「どうだろね」(タナケン)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 稽古場でスズ子の演技に対しては何も言わず、スズ子と絡む劇団員の配役を変えます。そのせいでスズ子は役を降ろされた田中(西村直人)に、「調子が狂ったじゃないか。いつもどおりやれていれば中村なんかに役を取られなかったんだ」「間もズレてるし、やりにくいったらありゃしない」と文句を言われます。

「ワテ、間がずれてるってホンマでっか?」とタナケンに尋ねるも「どうだろうね」といつもの返事。タナケンの「どうだろうね」、だんだんツボってきました。

 そういえば、萩本欽一も教えを乞うと「聞いちゃ駄目」と言うとか。つまり、どちらも「自分で考えよ」ということでしょうか。

「福来スズ子の歌しか知らん人に、もっとアンタの魅力を知ってもらいたい」

「相手にされへんのはしんどいです」と凹むスズ子に、マネージャーの山下(近藤芳正)は「もう少しだけ踏ん張ってみまへんか」となだめます。

「福来さんのマネージャーになってから近くであんさんの歌を聴いてました。ふと不思議やなあと思ったんです。福来スズ子よりも達者に歌う歌手はほかにもおる。それでもみんなこぞって福来さんの歌を聴きにきまっしゃろす。それはあんた自身が面白いからや。福来さん、ワシは福来スズ子の歌しか知らん人に、もっとアンタの魅力を知ってもらいたい」と説得。

「ええこというなあ、じいは。その通りや」とスズ子からその話を聞いた愛助(水上恒司)も納得するほど山下の言葉には打たれました。

 自分のことをちゃんと見て理解してくれる心強い味方がいるのだから、タナケンの「どうだろね」にもめげず、きっと頑張れることでしょう。

【おまけのツボ】

「コラァ、アメリカ~!」

「騙された~」と泣きじゃくる小夜のために、サムのところに向かうスズ子。あの小さな体で「コラァ、アメリカ~」とぶつかっていく勇ましさ。それもこれも小夜ちゃんのため。サムに流暢な英語で話しかけ、その後、いろいろと話を聞いてきた様子。

 そんな話をしながら、「ふたりのこともっぺん考え直してあげたらどうや」とスズ子に優しく語りかける愛助。ちゃぶ台を挟んでのふたりのシーン、素敵でした。

 愛助がどんどん頼もしい存在になっていて、とてもスズ子と9歳も年の差があるようには見えません。どこから見てもお似合いのふたりです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


太陽とシスコムーンとの共通点にザワッ Z世代に人気のIS:SUEがたまらん
 6月7日、太陽とシスコムーンの楽曲がサブスク解禁され、40代を中心としたお祭り状態になっていましたね。懐かしすぎて私も...
よねと轟の新「相棒」爆誕!男と女“くっつく思考”に冷や水を浴びせた
 花岡(岩田剛典)が違法である闇市の食べものを一切拒否して栄養失調で亡くなったと聞き、衝撃を受ける寅子(伊藤沙莉)。花岡...
桧山珠美 2024-06-10 16:20 エンタメ
“マッチ先輩”近藤真彦がうたコン降臨!ヤンチャ返上?謙虚な発言に驚き
 4日放送のNHK「うたコン」は「作曲家 筒美京平特集」。尾崎紀世彦「また逢う日まで」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」、...
花岡死す「栄養失調で死亡」見出しの衝撃…“甘党男子”桂場は和洋イケる口
 穂高(小林薫)は法の道へ導いて不幸にしたと寅子(伊藤沙莉)に謝罪し、新しい仕事を紹介すると言い出す。しかし寅子はむしろ...
桧山珠美 2024-06-07 15:30 エンタメ
公園ランチの約束は叶うのか? 花岡の“しょんぼり言動”が不穏すぎる
 ホーナー(ブレイク・クロフォード)から子供たちにとチョコレートをもらった寅子(伊藤沙莉)は、公園で花岡(岩田剛典)に再...
桧山珠美 2024-06-06 17:00 エンタメ
いよいよ裁判官編。NHK制作陣の遊び心、8時14分過ぎに見たり
 昭和22年3月。新しい日本の憲法に希望を見出した寅子(伊藤沙莉)が向かったのは法曹会館。そこには空襲で被害を受けた司法...
桧山珠美 2024-06-03 16:05 エンタメ
「虎に翼」お宝物件!三山凌輝はピアスにアクセジャラジャラの“チャラ”男
 先週のNHK朝ドラ「虎に翼」第9週「男は度胸、女は愛嬌?」は、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)にとって、悲しみの連続でした。...
刮目!伊藤沙莉“静”の演技、「佐田優三 仲野太賀」表示も期待は泡沫に…
 これまでの後悔と秘密をすべて打ち明けて、直言(岡部たかし)は安らかに亡くなった。  寅子(伊藤沙莉)は何事もなか...
桧山珠美 2024-05-30 19:10 エンタメ
古谷徹は“あの役”降板?声優不倫騒動の後始末、カギは「キャラの私物化」
 レジェンド声優・古谷徹(70)の不倫報道が世間を騒がせている。 『文春オンライン』よって報じられた37歳年下女性...
優三も草葉の陰で苦笑い? 前代未聞な別れの“懺悔”は直言らしい名場面に
 直言(岡部たかし)は栄養失調と肺炎でもう長くはないと診断される。直言が大事なことを隠していたと知った寅子(伊藤沙莉)の...
桧山珠美 2024-05-30 18:50 エンタメ
「見るんじゃない」と直言。ダチョウ倶楽部の“押すなよ、押すなよ”を彷彿
 直言(岡部たかし)の体調が優れない。寅子(伊藤沙莉)と直明(三山凌輝)はマッチ製造の仕事を紹介してもらい、はる(石田ゆ...
桧山珠美 2024-05-28 15:30 エンタメ
視聴率苦戦だから失敗に物申す!山下智久と錦戸亮、5年ぶり民放作の意義
 山下智久(39)が主演を務める「ブルーモーメント」(フジテレビ系)、錦戸亮(39)がキーマンとして出演する「Re:リベ...
こじらぶ 2024-05-25 06:00 エンタメ
「おいしいものは一緒に」出征前の河原デート。はて?初回を思い出すと…
 寅子(伊藤沙莉)は訪ねてきた後輩の小泉(福室莉音)から、女子部が閉鎖されることになったと知らされる。  今年は高...
桧山珠美 2024-05-24 15:30 エンタメ
優三の優しさシャワー全開!寅子のゴロゴロ床入り作戦も大成功だった神回
 昭和17年3月。直言(岡部たかし)の工場は軍からの注文が途切れず、順調に稼働を続けていた。戦時下で食べ物が貴重になる中...
桧山珠美 2024-05-21 15:30 エンタメ
朝ドラヒロインは「大日本国防婦人会」と揉めるのがお約束
 結婚した寅子(伊藤沙莉)は弁護の依頼も来るようになり順調な日々を送る。  ある日、手伝いとして働くよね(土居志央...
桧山珠美 2024-05-20 15:30 エンタメ
角界一の美容力士・翔猿らが明かした脱毛&モテ事情、全力で推したいのは
 圧倒的な強さと精神力、鍛え抜かれた筋肉美、昭和の名横綱“ウルフ”千代の富士、整った顔立ちと沸き立つ色気がたまらない“各...