スズ子の出産と愛助の死から2日 初めて泣くスズ子、愛子の泣き声かぶさる

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-02-02 16:28
投稿日:2024-02-02 16:25

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第18週「あんたと一緒に生きるで」#86

(C)NHK
(C)NHK

 スズ子(趣里)が出産してから2日。羽鳥善一(草彅剛)と麻里(市川実和子)の家族が見舞いにかけつけ、スズ子は幸せな時間を過ごす。

 しかし、スズ子はまだ、愛助(水上恒司)のことを知らされずにいた。

 そんな中、スズ子は、山下(近藤芳正)と坂口(黒田有)の様子がおかしいことに気がつき、2人になにかあったのかと聞く。

【本日のツボ】

(写真:iStock)
(写真:iStock)

母は強し!

 ※※以下、ネタバレあります※※

 スズ子の出産と愛助の死から2日。生まれたばかりの愛しい我が子を抱き、幸せを噛みしめるスズ子。

 そんな彼女を悲しみのどん底へ陥れるようなことを誰が言えるでしょうか。この世の終わりのような顔をした山下&坂口。あまりにも不自然な態度にスズ子もなにかおかしいと気づきます。

 意を決した山下がついに、「福来さん、ボンは亡くなりました」と。息をのむスズ子。

 と、ここでオープニングがスタート。いつものように主題歌「ハッピー☆ブギ」が流れるのですが、その違和感たるや…。

主題歌挿入のタイミングに違和感

 明るくパワフルな楽曲にいつも元気をもらっていましたが、この日ばかりはミスマッチ。正直、邪魔でした。たしか、「カムカムエヴリバディ」では主題歌が放送開始後、12分過ぎた頃に流れるという回がありましたが、今回もなんとかならなかったか、と。

 気を取り直して。愛助の死を知ったスズ子は窓辺を向いたまま抜け殻のようになってしまいました。

 泣いたりわめいたりするわけでなく、呆然自失、ただ黙って時間だけが過ぎていく…。それを見守る山下&坂口。無音の時間が悲しみを増幅させます。

 ようやく、口を開いたスズ子、「なんで、ワテの大切な人、早うに亡くなってしまうんや…ワテも死にたい」と。

 その言葉を聞いた山下、「ツラいのはあんただけやおまへん」。声を震わせて、「ワシかて、坂口かて、矢崎も。なにより社長は…。あんなええ子がなんでこんな早う死ななあかんのや…ボン」と涙ながらにスズ子に語りかけます。

「こうなったらボンの分まで100歳まで生きたろか思いますけど。ほんまに、ほんまにボンの分まで生きられるんは、福来さん、あんたしかおれへんのです」と。

「あんたはボンの分まで生きなアカンのです。ワシらができることはなんでもします。何があってもあんたを支えますから。…次、次、『死ぬ』言うたらどつきまっせ」と。

「愛子、お母ちゃんなあ、あんたと一緒に生きるで」

(C)NHK
(C)NHK

 矢崎が持ってきた封筒の中には、箱根で撮った2人の写真と、愛助からの最後の手紙が入っていました。箱根で撮り合ったモノクロの写真と、仲睦まじい2人、笑っている愛助の映像がオーバラップします。

 そして、愛助からの手紙を読むスズ子。「スズ子さん、つらいことがあったら歌ってください。そして、今、スズ子さんの横で可愛い顔してる赤ちゃんを見てください。その子は僕らの宝物や。きっとその子と一緒なら、何があっても生きていけるはずや」と。

「愛助さん」そこで初めて泣くスズ子。スズ子の泣き声に、愛子の泣き声がかぶさり、愛子の元へ向かおうとするスズ子。愛子を胸に抱き、「愛子、お母ちゃんなあ、あんたと一緒に生きるで」と。


 三鷹の家。縁側で並んで座る愛子と愛助。愛助は愛子を抱っこしています。場面変わって病室のベッドで愛子を傍らに眠るスズ子。さらに場面が変わり、今度は愛助がシャボン玉を吹き、愛子を抱っこしたスズ子と3ショットに。

 シャボン玉が上がる青空がラストカットでした。そのバックにはスズ子がアカペラで歌う「ラッパと娘」が流れます。

 その歌声は最初の頃の「ラッパと娘」にはない哀愁がありました。

 そして、来週はいよいよ「東京ブギウギ」。予告にはお父ちゃん、梅吉(柳葉敏郎)が愛子を抱いている姿もあり、愛助ロスを吹き飛ばす楽しい回になる予感です。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


石田ゆり子に新会社設立報道 「お金は紙だから」という独自哲学…50代女性は不動産に夢中?
 NHK連続テレビ小説「虎に翼」で、伊藤沙莉(29)演じるヒロインの猪爪寅子の母はるを熱演している女優の石田ゆり子(54...
2024-04-11 17:03 エンタメ
寅子「あきらめたらそこで終わり」はもしや…名作漫画のイズムにニヤリ
 傍聴した裁判について尋ねた寅子(伊藤沙莉)に対し、穂高(小林薫)は皆で議論してみるよう促す。  暴力を振るう夫か...
桧山珠美 2024-04-11 15:25 エンタメ
立川晴の輔が「笑点」新メンバーに抜擢! 談志の孫弟子が大喜利の座布団に座る意義
 落語家の立川晴の輔(51)が、3月いっぱいで卒業した林家木久扇(86)に代わり、7日放送の「笑点」(日本テレビ系)で大...
2024-04-10 17:03 エンタメ
トラコ入学、伊藤沙莉は表情筋を自由に操る女優…男装の山田よねにも注目
 昭和7年。晴れて「明律大学女子部法科」に入学した寅子(伊藤沙莉)のクラスには女子の憧れの的の華族令嬢・桜川涼子(桜井ユ...
桧山珠美 2024-04-08 18:38 エンタメ
“お騒がせ”青井実アナが心機一転、なにわ男子の道枝駿佑と似てるって⁉
 世の中の人がNHKに持つイメージといいますと、「真面目」「お堅い」「地味」といったところでしょうか。  そんな中...
逃げ恥の百合ちゃん役が“頭のいい女は頭の悪いふりをするしかない”発言
 穂高(小林薫)に出くわしたことで女子部への出願が母・はる(石田ゆり子)にばれてしまった寅子(伊藤沙莉)。  娘に...
桧山珠美 2024-04-05 15:30 エンタメ
「虎に翼」語りは尾野真千子 NHKアナと俳優のナレーションの違いは?
 寅子(伊藤沙莉)がお見合いに苦戦する中、親友の花江(森田望智)は寅子の兄・直道(上川周作)との結婚準備を順調に進めてい...
桧山珠美 2024-04-05 15:14 エンタメ
「虎に翼」シン・朝ドラの予感!わずか1話、たった15分で心つかんだ描写
 昭和6年・東京。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は父・直言(岡部たかし)、母・はる(石田ゆり子)から次々とお見合いを勧...
桧山珠美 2024-04-01 22:28 エンタメ
僥倖!世界に挑む赤西仁ほど「サムライマック」のCM向きな俳優はいない
 マクドナルドのCMにイケメンあり!  そんな声をちらほら耳にするようになりました。たとえば4月2日から全国放送さ...
平野らTOBEがドーム公演大成功の一方、暗雲立ち込める旧ジャニの逆転は
 3月14日から17日にかけて、滝沢秀明氏創設のTOBE所属アーティストによる東京ドーム公演「to HEROes ~TO...
こじらぶ 2024-03-30 06:00 エンタメ
ブギウギ最終回、水を差すようでスンマセン! 残念すぎる4つの演出と描写
 スズ子(趣里)のさよならコンサートが始まる。客席には懐かしい多くの面々がかけつけている。茨田りつ子(菊地凛子)、愛子(...
桧山珠美 2024-03-30 11:41 エンタメ
スズ子引退会見、“天敵の文屋”鮫島の「シャッポを脱ぐ」演出を読む
 歌手・福来スズ子(趣里)の引退会見の当日。スズ子は結局、羽鳥善一(草彅剛)とは話ができないまま会見に臨むことになってし...
桧山珠美 2024-03-27 14:30 エンタメ
超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ