ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-03-22 14:30
投稿日:2024-03-22 14:30

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第25週「ズキズキするわ」#121

 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度をしていると、股野(森永悠希)と水城アユミ(吉柳咲良)が訪ねてくる…。

 そして、いよいよ本番。羽鳥善一(草彅剛)はテレビの前で、愛子(このか)は客席で見守る。茨田りつ子(菊地凛子)も楽屋に応援に来た。

 水城アユミは「ラッパと娘」、福来スズ子は「ヘイヘイブギー」。新旧2人の歌合戦が始まる。

【本日のツボ】

スズ子の涙

 ※※以下、ネタバレあります※※

 決戦の大晦日です。スズ子の楽屋に挨拶に来たアユミは自信満々。「福来先生に負けないように精一杯歌います」と。

 これを聞いたマネジャーのタケシ(三浦獠太)の「フンッ! 100年早いっていうことがわかりますよ」という台詞があまりも学芸会演技だったので、100年早いのはそっちだろ、とつい意地悪な目で見てしまいました。

 気を取り直して、いよいよ「第7回オールスター男女歌合戦」の幕が開きます。

「トップバッターは坂本敏郎さん、歌は『自転車行楽』です」とアナウンサー。この年の「紅白歌合戦」の記録を確認しますと、白組のトップバッターは岡本敦郎『自転車旅行』。“旅行”を“行楽”と変えたのは脚本家の遊び心でしょうか。

 一(井上一輝)がファンだと言っていた三橋美智男は三橋美智也のことでしょう。この年の「紅白」に「哀愁列車」で初出場しています。

 燕尾服に丸眼鏡は東海林太郎と思われます。直立不動で歌唱、昭和のものまね番組では誰かしらがよくものまねしていたものです。

 女性陣に目を向ければ茨田りつ子もいます。モデルとなった淡谷のり子は「ルムバ・タムバ」という歌でこの年3回目の出場です。どんな歌なのか興味津々ですが、残念ながらりつ子の歌唱シーンはありませんでした。

どんなもんじゃい! な表情のアユミ

「日本歌謡界に颯爽と現れた期待の新星、時代のエース、水城アユミさんの登場です。曲はなんと尊敬する福来先生の歌から『ラッパと娘』を歌います。張り切ってどうぞ!」と紹介され、真っ赤な衣装で登場し「ラッパと娘」を熱唱。

 歌い終わった後、大歓声の中で「どんなもんじゃい!」と勝ち誇ったかのようでした。

 一方、舞台袖でアユミの歌を聴いていたスズ子。なぜか目から涙が流れていました。いったん楽屋に戻ったスズ子、そこにりつ子の姿が…。

「あなたの様子を見に来たのよ。怖じ気づいてやしないかって」

福来スズ子の一番の理解者

 りつ子のこの気遣い。口は悪いけど優しさはピカイチ。誰よりもスズ子のことをわかっているようです。

「いやー凄いですわ、あれはほんまもんでっせ。歌がうまいだけちゃうわ。お客の心をつかむ何かを持ってはる。茨田さんもいつか聴きはったらよろしいわ。ええ刺激になりまっせ」とスズ子。

 化粧直しをして、楽屋を足早に出ていき、ステージに上がると、歌で勝負するのかと思いきや、「え~、ホンマにワテが大トリということなんでっけどね~。いままでの皆さんえらい凄かったですね~」と喋り出します。

「…特に水城アユミさん、ね~、なんや若い頃のワテにそっくりで~。特にあの可愛いお顔! どうぞ、ここ笑うとこでっせ。ハハハ。もう一発でファンになってまいましたけど、まだまだワテも負けてられまへん。それではお聴きください。『ヘイヘイブギー』!」

 そう場を和ませて、空気が温まったところで歌い出し、観客と一体となって圧巻の素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

温存していた「ヘイヘイブギー」

 この「ヘイヘイブギー」、これまでにも歌詞は出てきましたが、ステージシーンは描かれず、ここまで温存していたのがわかるような気がします。

 ♪笑う門にはハッピーカムカム、なんてふざけた楽しい歌詞でしょう。口ずさむと幸せがやってくるような気がします。羽鳥先生、さすがです。

 にしても、アユミはどうしてあんなにスズ子を敵視していたのか、いまいちわかりませんでした。まるで「母の敵」扱い。

 ただの負けず嫌いというだけでは腑に落ちないものが…。

 泣いても笑ってもあと1週です。どうせなら、ラストもハッピーカムカムでお願いします。

桧山珠美
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TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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