ママの誘いで店に行くと…
ママから『愛香ちゃん、今夜、店に来ない?』と連絡があったのは、2週間後ぐらいでしょうか。
――愛香ちゃん、いらっしゃい。座って。
店に行くと、ママがカウンター席に座るよう促してきたんです。しばらくすると、店の入り口の引き戸がガラガラと開き、
――ママ、遅くなってすみません!
声のほうに視線を流した瞬間、私は息をのみました。韓流スターさながらの長身男性が立っていたんです。
(誰? サイボーグみたいに完璧なスタイル!)
身長は軽く185センチはあるでしょうか。切れ長の目と高い鼻梁が、完璧な黄金比を描いている感じ…。小顔のわりに手足が長く、パリコレモデルでも通じるスタイルです。
声を出せずにいる私に、ママが、
――ソジュンくん、遅いじゃない。さあ、ここに座って。
超美形男性を私の隣に座らせたんです。まともに目を合わせられずにいる私に、彼は軽く会釈して腰を下ろしたのが分かりました。
超絶美青年の正体は…
――愛香ちゃん、紹介するわ。ソジュン君よ。ボーイズアイドルを目指していたけど、今は友人の動画編集をしているの。
――えっ…アイドルを?
私が聞き返すと、ソジュン君と呼ばれた彼がこちらを向き、頭をさげました。
――初めまして。ソジュンと申します。日韓のオーディション番組をいくつか受けたのですが、どこにも引っかからず、27歳になったのを機にアイドルはあきらめて、今は友人の会社を手伝っています。よろしくお願いします。
そう笑みを向けられた時、私は目をしばたたかせました。
(なんて肌がキレイなの…シミひとつない…。鼻筋が通って唇の形もキレイ)
まさに神が作った芸術品さながらの美貌です。よく見るとメンズメイクをしているのが分かりました。薄くファンデーションを塗り、眉を整え、アイラインも軽く引いています。メイクを差し引いても、透明感ある端整な顔立ちは、人間離れしていました。
オーディション番組の出演者が隣に…
――は、初めまして…愛香と申します。ボーイズグループの公開オーディションは、ネットでもよく見ていましたよ。失礼ですが、どちらのオーディションですか?
私がドキマギしながら聞くと、
――『P』と『I』と『E』です。
彼は大手事務所がプロデュースしているオーディション番組の名を挙げてきました。
――『P』なら観ていました。あら、もしかして、グループバトルでBTSの『I NEED U』でサブボーカルをしていた人…?
――そうです。見ていてくれてたんですね。嬉しいです。乾杯させてください。
――えっ。
『ほらほら、愛香ちゃん、乾杯よ!』ママはウィンクをしながらカウンター越しに腕を伸ばし、3人で乾杯をしたんです。
日韓の女性から注目を浴びた有名なオーディション番組の一ファンとしては、平静でいられるはずがありません。
すっかり舞い上がってしまい、どんな表情をしていたか、彼と何を話したか、どうリアクションを取ったか…。悔しいくらい嬉しさで記憶が曖昧なんです(笑)。
覚えているのは、彼の美貌と白い歯、耳ざわりのいい低音ボイス、そして、夏の海を思わせる香水の匂いです」
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