手を握りながら新大久保の街を
――お支払いは僕がしますから、愛香さんは外で待っててください。
ソジュン君は私のコートをハンガーから取って羽織らせました。
――申し訳ないわ…私もかなり食べて飲んだし…。
――女性にお財布は開かせません。
彼はきっぱり言って支払いを済ませ、2人で新大久保の街を歩き始めたんです。
――ごちそう様。とてもおいしかったわね。
――愛香さんと一緒だと、いつも以上においしかったです。
彼は韓国なまりの日本語で告げ、細い路地を歩き始めたんです。
(これから、どこに行くの…?)
いつの間にか、彼の手は私の手を握っていたんです。
(えっ…)
驚きつつ、私もギュッと握り返しました。細い道の両側には韓流ショップや屋台が並び、道行く人も多かったですね…。彼と手を握りながら歩く街は、また別世界のような気持がして…。
イケメン通りですれ違った5人組
その時、道行く人から歓声を浴びている5人の男性たちがビラを撒きながら、練り歩いているのが見えたんです。
――愛香さん、ここの通りは『イケメン通り』と言います。ほら、ライブの宣伝のために韓流アイドルの卵がビラを撒いてるでしょう?
――ああ、ここだったのね。
過去に知人が教えてくれた『イケメン通り』と呼ばれる細い道があるのは知っていましたが、名前と位置がはっきりしなかったんです。ソジュン君に言われて初めて理解しました。
前方からは、通行人に手を振る男性アイドル5名がこちらに向かってきます。カジュアルシックなファッションに身を包み、メンズメイクでイケメン度をさらにアップせた彼らは全員が長身で、ソジュン君を若くした感じの初々しい好青年たちです。
近所にライブ会場があるため、定期的にボーイズグループ達が練り歩くそうで、私もビラを受け取りました。ハガキ大のそれには、彼らの顔写真と名前、裏面にはライブのスケジュールやマップが明記されていました。
――みんな若かったわね。二十歳ぐらいかしら。
思わずそう呟いた私は、ハッとしました。ソジュン君を見ると、案の定、困惑した表情をしています。
(私ったら…なんて失礼なことを…)
そう、ソジュン君は元々アイドルを目指してオーディションを受けまくり、芽が出なかったと27歳で諦めた過去があるんです。
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