爪痕を残そうとせず謙虚に演じる
また、前出の制作会社勤務のAさんはこうも言います。
「『本職は芸人』という矜持があるからなのかもしれませんが、役者としても成功している芸人さんは、ドラマの中ではいい意味で謙虚に自分の役割を演じきっているように見えます。変に幅を見せようとせず、キャラを作品の中に溶け込ませるのがうまいんです。
その中でもオリエンタルラジオの藤森さんはチャラいキャラの印象はありつつも、シリアスにもコミカルにも演じ分けることができ、その違和感がないのがいいですよね」
戦場であるバラエティは、笑いのスキルを見せたり、目立って爪痕を残すことが良しとされていますが、ドラマや映画ではその逆で、監督の思い描く通りに演技することが求められています。
オファーが続く人は作品や現場の空気感を読むことが本職の俳優さん並みにうまい、そして安定した演技の信頼感を制作者側に与えている人なのでしょう。
問題を起こさないことが最も重要
Aさんはさらに続けます。
「忘れてはならないのが、脛に傷を持っていないか、ですね。もしかすると一番重要な点かもしれません」
塚地さん、藤井さん、今野さん、原田さんなど、芸人として活躍する役者さんのほとんどが品行方正なイメージがあります。コンプライアンスが厳しい昨今、一人のキャストが薬物、暴行や交通違反などで問題を起こせば、作品そのものがお蔵入りすることもあります。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で、重要な役柄として起用されていた徳井義実さんは、撮影後に発覚した所得の申告漏れによって活動自粛に追い込まれました。その結果、出演シーンは大幅にカット。大河ドラマとしては異例のお断りのテロップが冒頭に放映されるほどの対応に追われました。
また、次長課長の河本準一さんは、生活保護不正受給が騒がれる2012年までは『タイガー&ドラゴン』(TBS系)などで好演を見せるなど、コンスタントに映画やドラマに起用されていたものの、それ以後は数えるほどしか出演をしていません。
「俳優として起用されたことで身辺に気を付けるようになった芸人さんもいるかもしれません」と最後にBさんは言います。
他にも、スケジュールの入れやすさという観点から生放送のレギュラーを持っていないこと、そして話題性、知名度などもポイントになるといいます。
お笑い好き兼ドラマ好きの人にとっては、それだけでドラマを見るきっかけになります。今後も芸人役者の起用が増えていくことでしょう。
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