勝ち組ママ友が放った屈辱的な一言。私を「一般人」と一緒にしないで!

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-08-16 18:06
投稿日:2024-08-10 06:00

セレブなママ友から予想外の一言が

 数日後のある日。

「葵さんのお母さま」

 授業参観で学校を訪れた昇降口にて、由香はつま先でスリッパを揃えていると、背後から声をかけられた。

「あら、鈴華さんの――」

「ごきげんよう」

 由香は時折幼い頃の癖で、足で動作を行ってしまうことがある。はしたない姿を見られたとヒヤヒヤしながら振り向くも、気に留めていない様子の穏やかな笑顔に由香は安心した。

 声の主は鈴華の母。この学園のOGで、夫は五大ローファームに勤務する弁護士だ。いつも姿勢が良く、彼女の腕にはいつも黒のバーキン30が当たり前のように提げられている。もちろん幼稚園から上がってきたママ友だ。

「伺いましたよ。葵さんのお母さま、最近愛舞さんのお母さまと仲がいいんですってね」

 彼女から発せられる不本意な言葉に、由香は慌てて否定した。

「あ、いえ、葵が仲良くて、一度自宅に招待しただけですよ。手土産も持ってこなかったことにびっくりしましたけど」

「まぁ…」

 一瞬、表情がよどんだような気がした。由香にはそれが“来良の非常識さにドン引きしている”ように見えた。

 由香は昂り、思わず感情を共有したくなってしまう。

「しかも、下品なロゴのシャツでいらして。どう思います? 校長様がなぜあのようなご家庭の方とこの学校とのご縁を繋いだのか、私には不思議で不思議で」

 眉毛を八の字に、嫌悪感を表して報告する。愚痴を言いあってスッキリしたい、その一心だった。

 しかし――返ってきたのは予想外の言葉だった。

「お二人は似たような雰囲気ですから」

「よくわかりませんが、お二人は似たような雰囲気ですから、合うと思うんですけどね」

 その表情は、いつにも増して穏やかだった。由香はわけがわからない。

「似たような…って、どういうことでしょう?」

 先日、来良にも同じことを言われたことを思い出し、由香は尋ねてしまう。

 彼女は言葉を選んでいた。

 モナリザを思わせる意味深な笑顔を伴って。そして、やっと回答を得る。

「強いて言えば、負けず嫌いなところでしょうか」

 皮肉を羽毛で包んだような遠回しな苦言だ。

 それは、直接的な嫌味よりも由香の心に深く刺さった。

#3へつづく:「負けず嫌い」に含んだ意味を理解した由香は…】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

ライフスタイル 新着一覧


白髪じゃないよグレイヘア 染める・染めないより大切なこと
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
有能でも「ママ」の肩書きに埋もれる現実。“報われない世代”が後輩ママにウザがられても助言するわけ
 タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は育休中であるが、復帰後もバリバリ働く予定だ。年収2000万超え...
バリキャリ→量産型主婦への変貌に愕然「仕事も結婚も…なんて無理だよ」心配ぶった“呪い”はもうウンザリ
 タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は0歳児の長女の育休中で、第二子を妊娠中である。先々を見据えてラ...
「専業主婦は文句ばかり」戦略的バリキャリママの主張。家庭と仕事、手に入らないのは“努力不足”でしょ?
 山森麗菜はタワーマンションが林立する街に暮らしている。  と、いっても豊洲や有明などの湾岸エリアでもなく、武蔵小...
そうそう、これが欲しかった。『リンネル』付録が大容量で使い勝手も良き♡ バッグは軽いほどいいですからね
『リンネル』2025年5月号の付録は、人気アウトドアブランド「コールマンの収納ポーチ付きバッグ」です。  大容量な...
「ただで済むと思うなよ」にゾッ! 距離を置きたくなるママ友の怖い言動
 今回は、距離を置きたくなった“ママ友の怖い言動”をピックアップしました。明るいママ友だと思っていたのに裏があったり、嫌...
タイプロ候補生で話題に…“歯ブラシ1時間”は有意義か?【歯科医監修】40代女性「正しい歯磨き」の方法
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
「ミルキー味の胡麻どうふ」はおやつかおかずか。誤解が生んだ美味コラボ、無限の可能性に震える!
 もっちり食感と香ばしさが魅力の胡麻どうふ。何となくとっつきにくい食材だと思っていませんか? 個人的にはちょっといい和食...
40代、このままでいいの? アラフォー女性が抱える漠然とした5つの不安
 40代になって「このままでいいの?」と悩みを抱える女性は少なくない様子。すでにプレ更年期に突入している30代後半の女性...
猫島の特設ステージにようこそ! “たまたま”の華麗な見返りに惚れぼれ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
雑草対策にもなるよ! ほっぽらかし園芸の超絶おすすめ草花は?【春植え付け編】
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋の仕事には、歩道や公園の脇に造成された花壇への草花納入もあります。その中には近隣も含まれ...
性悪“ルッキズム女子”嫌われる人あるある6選。見た目も大事だけど心がズキズキする…
 最近何かと話題になる「ルッキズム」。近年、美容医療が芸能人だけでなく一般の女性にとっても身近な存在になったせいなのか、...
渋谷はちょっと苦手になった更年期おばさん。着実に老化現象が進む予感!
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
自称・丁寧な暮らし派のいい嫁アピールLINE6連発!梅仕事に針仕事、新聞に毎朝アイロンがけまで…
 SNSを覗いてみると、「丁寧なくらしをする私はいい嫁アピール」が激しい投稿をよく見かけます。  そりゃあ、日々の生活...
Amazonで☆4つの高評価!「激落ちくん」お手軽価格&耐久性バツグンの神モップ“唯一”の弱点は?
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
気高きプリンスが降臨! 黒豹“たまたま”のお手入れは今日も完璧
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...