朝ドラ史上、いやテレビ史上に残る名判決シーン。「政治の貧困」の言葉が胸に突き刺さる

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-09-07 06:00
投稿日:2024-09-07 06:00

第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」#115

 昭和38年6月、桂場(松山ケンイチ)は最高裁判事のひとりに任命される。

 竹もとで修業に励む梅子(平岩紙)、そして道男(和田庵)にも人生の転機が訪れる。寅子(伊藤沙莉)もまた、更年期の不調を抱えながら、認知症の百合(余貴美子)に向き合っていた。

 そして12月、ついに「原爆裁判」の判決が言い渡される日がやってきて――。

【他の画像も見る】余貴美子演じる百合さんが凄い

【本日のツボ】

竹もとと笹寿司、まさか!? のコラボ

 ※※以下、ネタバレあります※※

 ついに、梅子のあんこが桂場に認められる日がきました。私の記憶が正しければ、寅子が新潟から東京へ戻ってきた頃にはもう桂場の“お団子試験”は行われていたので、かれこれ8年以上はこのやりとりを繰り返していたことになります。

 梅子に店を譲りたい竹もとのご夫妻もよく耐えたものです。

 梅子が合格したその日、竹もとに寅子と待ち合わせていた道男がやってきます。笹山のおっちゃん(田中要次)が実はもうほとんど歩けないこと、そして、自分に店を継がないかと打診されたが断ったことを寅子に告げます。

「俺、バカだろ? 金勘定とか、店の客とのお喋りも下手だ。だから、料理は好きだけど、客商売には向かないと思うんだ」「せっかく俺の居場所を作ってくれたのに、ごめん」、寅子に土下座する道男。

「ばあちゃんにも、花江ちゃんにも合わせる顔がねえよ」。その言葉に反応した梅子が道男に「なら、一緒にやる?」と声を掛けました。

「和菓子とお寿司のお店をここで。ひとりで店をやるのは心細いと思っていたの。私だけじゃ、継いだところでそう長くはお店を続けられないし…」

「梅子さんのやりたいようにやったらいいわ」「ああ。梅子さんと彼で決めなさい」竹もとのご夫婦、なんという人徳の高い人たちでしょう。

「どうかしら? さっき、あなたが苦手と言ったもの、私、全部、得意。あと…私、頭はすこぶるいいわよ、うふふ」

 寅子のほうを見て茶目っ気たっぷりに微笑む梅子。これで契約成立。竹もとと笹寿司のまさか!? のコラボが決まりました。

 今でこそ、回転寿司にもいろいろなデザートがありますが、この時代、寿司と甘味の店は画期的です。どんなお店になるのか、楽しみです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている
 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ...
桧山珠美 2025-05-01 19:16 エンタメ
なにわ男子・道枝駿佑は“肉食女子”から守られたのか?「キャスター」男性俳優陣が気になるよ
 芸能界広しといえども清純派と呼べるのは芦田愛菜だけ。長年、そう訴えてきましたが、今回の一件が図らずともそれを証明したの...
共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている
 昭和11年、家族や嵩(北村匠海)に見送られ、のぶ(今田美桜)は女子師範学校の寮に入る。軍国主義の担任・黒井雪子(瀧内公...
桧山珠美 2025-04-28 18:40 エンタメ
「あんぱん」最後まで毒親だった登美子(松嶋菜々子)。去っていく彼女に問うてみたいこと
 受験したのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の明暗が分かれる。静まり返った柳井家で、寛(竹野内豊)たちに頭を下げる嵩。そこ...
桧山珠美 2025-04-26 12:50 エンタメ
春ドラマの評判を調査!『最後から二番目の恋』は令和の鬼渡?『あんぱん』『対岸の家事』の感想は
 2025年4月期も話題のドラマが続々スタート! 多すぎてどれを見るのか迷ってしまう…。そんな人のために忖度なしでドラマ...
「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ
こうでなくちゃ! 志尊淳の正解を「恋は闇」で見た。いい人よりも“妖しい姿”に妄想が駆り立てられる
 新ドラマ「恋は闇」(日本テレビ系)の志尊淳が良きです。  前クールの「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった...
「あんぱん」なんて贅沢!今が旬、河合優実の“目で語る”表現力と色気に驚く。俳優・ソニンのEE JUMP感を消した演技も見事
 なりたい夢を見つけたのぶ(今田美桜)は、女子師範学校合格に向けて猛勉強をし始めるが、成績が思わしくなく頭を抱える。同じ...
桧山珠美 2025-04-21 14:23 エンタメ
怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ
「あんぱん」登美子(松嶋菜々子)の登場が不穏…色っぽいけど。貴島中尉(市川知宏)は“あのキャラ”を意識?
 新聞社に出した漫画で賞金をもらい、ご機嫌の嵩(北村匠海)。一方のぶ(今田美桜)は、パン食い競走で転びそうになったところ...
桧山珠美 2025-04-17 16:02 エンタメ
カトパンへの嫌味に物議…新井恵理那は承認欲求のカタマリか、悪役を演じる聖人か?
 昨年3月、8年間出演して総合司会も務めていたテレビ朝日系の朝の情報番組『グッド!モーニング』を降板したフリーアナウンサ...
堺屋大地 2025-04-17 06:00 エンタメ
【募集】春ドラマ何見る? 面白かった&ガッカリを教えて!『最後から二番目の恋』『あんぱん』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「期待している」「面白...
笠松将、柳楽優弥を超えなければと思っていた。俳優業の“わからなさ”は「自分自身にビビッている感覚」『ガンニバル』シーズン2インタビュー
“この村では、人が喰われているらしい……”    2022年の年末にディズニープラス スターにて独占配信がスタートす...
望月ふみ 2025-04-15 06:00 エンタメ