『光る君へ』は吉高由里子、『スオミの話』には長澤まさみ…人気脚本家“お気に入り俳優”の傾向は?

小政りょう ライター
更新日:2024-09-23 06:00
投稿日:2024-09-23 06:00

三谷幸喜――長年苦楽をともにする強固なファミリー

 映画監督として最新作『スオミの話をしよう』も公開された三谷幸喜。映画・ドラマ・演劇にかぎらず、三谷作品では同じ俳優さんを繰り返し使うことで有名です。『スオミ~』でも、2022年に放映されたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演した役者さんが揃っています。

 主要キャストだけでも、長澤まさみ、小林隆、坂東彌十郎、宮澤エマ、瀬戸康史などの顔ぶれ。ほか、西村まさ彦、梶原善、相島一之など主宰していた劇団・東京サンシャインボーイズの盟友たちはもちろんのこと、西田敏行、香取慎吾、大泉洋などが常連俳優として目立ちます。

 形式的に「前も起用したから」と役者を当てはめているのではなく、彼の持つコメディの世界観をちゃんと表現してくれる役者さんをちゃんと選んで起用しているのでしょう。

 なかでも、梶原善は、三谷作品の映画では皆勤賞だとか。梶原善といえば脱力感ある地味なキャラクターが持ち味ですが、『鎌倉殿の13人』では今までのイメージとはがらりと違うニヒルな仕事人の善治を演じ話題に。「梶原善ならどんな役でもこなしてくれる」という三谷氏の信頼を感じさせます。

 また、梶原さんの三谷さんへの忠誠心は絶大で、『鎌倉殿の13人』が向田邦子賞を受賞し、その受賞を祝って梶原さんがスピーチをした際、「三谷さんの脚本が役を引き立たせてくれるように書いていただけているから」と涙ながらに語っていたのが印象的でした。

福田雄一――フレッシュな俳優たちとのざっくばらんな交流も

“福田組”という呼称が業界内で当然のように通用しているほど、監督/脚本家・福田雄一の作品には常連の俳優が数多くいます。福田組の風神・雷神も言われているのが、ムロツヨシと佐藤二郎。テレビ東京系『勇者ヨシヒコシリーズ』、日本テレビ系『今日から俺は!』など、代表作には必ずといっていいほど二人が出演しています。

 また、山田孝之、賀来賢人、安田顕など常連俳優が多数。また、近年では、橋本環奈、戸塚純貴など若い俳優さん達も、積極的に起用されています。なかでも戸塚純貴は今秋、福田雄一が演出を手掛けるミュージカルにも出演予定です。福田組の顔のひとりとして常連の仲間入りをするのは時間の問題かもしれません。

 先日、福田監督が、自身のX(旧Twitter)で「来年、20代の若い役者さん集めた映画を予定してるんですけど、誰か、オススメの役者さんいたら、是非教えてください!」とポストし、多くのフォロワーから推しをすすめる返信が殺到したことが話題になりました。その間違いない個性あふれる作風や役者への面倒見の良さはファンとしても推しをいれさせたい監督さんなのでしょうね。

 ただ、そのファミリー感から、少しでも役者さんのことを呟くと単なる番組の感想でも「仕事に関する匂わせなのでは?」「ファミリーに入り?」と疑いが向けられてしまうのが悲しいところです。

信頼感で結ばれた、脚本家と役者の関係

 このように、名のある脚本家や監督さんの作品は、キャストの顔ぶれも似通っていることが改めてわかります。その理由として挙げられるのは、やはりお互いの信頼感に尽きます。

 監督・脚本家も自分の思い描いた世界に沿った演技をしてくれる役者さんを求めているでしょうし、キャスティングの担当も役者側が「○○さんの作品なら」と受けてくれる可能性が高く安心してオファーしやすい、役者側も未知の場所に飛び込むより作品に信頼を持って役に臨める方がやりやすいでしょう。

 これから監督・脚本家と役者さんの関係性に注目しながら、作品を見ていくと新たな発見があるかもしれませんよ。

小政りょう
記事一覧
ライター
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


一攫千金のチャンス! 万ちゃん・寿恵ちゃんの“ほのぼの焼き餅”プレー
 お金の相談をするため、叔母のみえ(宮澤エマ)の料亭「巳佐登」に行った寿恵子(浜辺美波)。給金の前渡しということで、その...
桧山珠美 2023-08-24 15:30 エンタメ
長谷川さんキス魔?「バチェラー」5 Ep8まで復習 2023.8.23(水)
 成功を収めた1人の独身男性=バチェラーとの“真実の愛”を得るため、様々な女性たちが競い合う婚活サバイバルシリーズ、「バ...
「田邊教授溺死」とあだ名「ユーシー」の謎、虚実皮膜の脚本が光る
 大学を離れた田邊(要潤)は穏やかな日々を過ごし、聡子(中田青渚)と子供たちを連れて海へ。万太郎(神木隆之介)の元に、大...
桧山珠美 2023-08-21 15:35 エンタメ
「VIVANT」櫻井海音は堺雅人に似てる? 父・ミスチル桜井のDNAは継承
 今、オジサンたちが夢中になっているドラマ。それが日曜劇場「VIVANT」です。あくまでもボルドー太田調べではありますが...
万太郎敗れ、チーム東大に軍配も…田邊は大学追放の“鉄拳制裁”を受ける
 田邊(要潤)は、今後は欧米の学者に頼らず、日本人自らが学名を与え発表すると、西洋の植物学者たちに宣言。植物採集で出会っ...
桧山珠美 2023-08-18 14:00 エンタメ
バチェラー長谷川さんとさかい珈琲がコラボ 2023.8.17(木)
 成功を収めた1人の独身男性=バチェラーとの“真実の愛”を得るため、様々な女性たちが競い合う婚活サバイバルシリーズ「バチ...
長谷川さん激変!「バチェラー」5 Ep6まで振り返り 2023.8.16(水)
 成功を収めた1人の独身男性=バチェラーとの“真実の愛”を得るため、様々な女性たちが競い合う婚活サバイバルシリーズ。真実...
「倉木さん、大好きじゃ」万太郎の別れの挨拶、チョイスが絶妙!
 万太郎(神木隆之介)のもとに、土佐の小学校教師たちから植物についてたずねる手紙と標本が届くようになる。  それか...
桧山珠美 2023-08-14 15:55 エンタメ
西畑大吾のガッカリ熱愛報道…24時間テレビで相手の御尊顔を拝する?
 なんといいますか、いろいろ残念でした。“女装男子”、じゃなかった、なにわ男子・西畑大吾(26)のことです。  見...
『ミッション:インポッシブル』観るなら4DX 2023.8.12(土)
 7/21に公開された『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(以下、『ミッション:インポッシ...
植物研究費に糸目をつけない万太郎、同じ草でも寿恵子の場合は質草まみれ
 高知の山奥で出会った虎徹(寺田心)少年に「こんまいお遍路さんがおるがです」と案内されて、珍しい植物を発見した万太郎(神...
桧山珠美 2023-08-11 15:00 エンタメ
「万太郎と竹雄のイチャイチャ」は過酷な試練を見守った視聴者へのご褒美
 万太郎(神木隆之介)のもとへ、竹雄(志尊淳)、綾(佐久間由衣)がやってきて、峰屋ののれんを下ろしたことを詫びた。そして...
桧山珠美 2023-08-09 15:00 エンタメ
「バチェラー・ジャパン」推しメン2人も脱落からの~! 2023.8.8(火)
 8月3日、ついに恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』シーズン5が始まりました。  成功を収めた1人の独身男性=...
NEWS小山は実姉みきママが履歴書を送付!存在感放つ“美姉美弟”の面々
 なにかと話題のジャニーズですが、以前から、その入所経緯が気になっていました。というのも、よく聞くのが「姉が勝手に履歴書...
愛娘・園子の早すぎる死、滑稽噺「寿限無」に込められた思い
 空が青く、ヒメスミレが咲く季節に天国へと旅立った園子。悲しみに暮れる万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)のもとに、...
桧山珠美 2023-08-04 16:05 エンタメ
福原愛ドロ沼騒動、泣き虫愛ちゃんはいずこへ…長男を巡る対抗姿勢の行方
 卓球の元日本代表で五輪2大会連続メダリストの福原愛(34)と、元夫で16年リオデジャネイロ五輪台湾代表の江宏傑氏(34...