私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-10-12 06:00
投稿日:2024-10-12 06:00

「ネタになるかもしれない」という下心

 バラエティ番組のディレクターをする彼は、よく現場での話を私にしてくれる。

 相当ストレスが溜まっているのだろう。コンプライアンス的にどうなのかという疑問はあるが、それだけ信用されているということが密かに嬉しい。

「わかるよ」「大変だね」私は彼の言葉を引き出すように、目の前に座り、笑顔で共感とねぎらいの言葉を並べた。

 激務で緊張感ある彼のストレスを少しでも解消させてあげたい…というのは建前で、単純にテレビの裏側に興味があるのだ。

 何かのネタになるかもしれない、という下心もありつつ――。

下世話な「ネット記事」で小遣い稼ぎする毎日

 翌朝。朝8時。

 私はいつものようにテレビを見ながら家事をこなす。若手人気俳優が薬物で逮捕されたというニュースが報じられたこともあり、ワイドショーも含めてチャンネルを回遊しながら穏やかな朝を過ごした。

 そして9時半、一通り見終わった後で、パソコンを立ち上げる。

 <ワイドショー出演者の発言にSNS騒然!「もう収録に参加していません」>

 <慶応卒新人女子アナ、薬物逮捕の俳優に「一緒に遊んだ…」と衝撃発言>

 <スタッフ恫喝も…関係者が語るM-1王者の裏の顔>

 企画案、と冒頭に記したテキストメール。他いくつかを、大学の同級生でwebメディアの編集長をしている友人・礼香に送ってみた。

 返事は即やってくる。

『ありがとう、みんなお願いできる? 上二つは明日までにもらえると嬉しい』

 了解、と返信してさっそく取り掛かった。

 私は専業主婦の傍ら、ネット記事執筆の仕事をしている。

 昨日出版社から来ていた封書は原稿料の明細。先月頑張って10記事を上げたことや、アクセス数トップだったボーナスも計上されていた。全部合わせて、6万円。専業主婦のお小遣いとしては十分な金額だ。

 ――夫からのお小遣いもあるし、全額貯金に回して、年末には…。

 午前中を使ってひと記事書き終えたところで、頭の中でチャリン、と音がした。

 頭の中にヴァレクストラのバッグを思い浮かべ、垂れ流しのテレビの前で私は口角を緩めるのだった。

#2へつづく:地味な女に負けた? 夢を諦めた“こたつライター”の「プライド」が砕かれるまで】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


出産で疎遠に…結婚後に態度が変わる女友達の特徴&無理しない付き合い方
 学生時代に仲の良かった女友達も、結婚した途端に疎遠になってしまったというのはよくある話です。どうせなら、結婚しても長く...
発達障害グレーゾーンの長男が憎い…ある一言で私の何かがプツンと切れた
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
パーフェクト“たまたま”の精悍&クールな眼差しに痺れちゃう
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ゴールデンボンバーの「女々しくて」は言い得て妙だった!
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
LINEのない生活は無理!父の死、仕事の失敗、自分の病…心が救われた話
 仕事で大きなミスをして落ち込んだり、大事な人を失って悲しんだりと、気持ちが沈んでしまう瞬間がありますよね。そんなとき、...
他人の不幸は蜜の味でも不倫より「よろめき」のほうが風情があっていい
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
義母が若すぎるとこうなるのか!介護の心配もジョークで交わせるって素敵
 年下の男性と結婚した場合や、夫の母親が若くして出産している場合には、若すぎる義母が誕生するケースがあります。中には、義...
ほっこり読み切り漫画/第59回「ボクは君で、君はボク」
【連載第59回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「「しっ...
「たかが、ものもらい」じゃなかった 30代女、霰粒腫の手術をしました
 先日、眼科で右目のまつ毛の生え際にあった“しこり”の切除手術をしました。「たかが、ものもらい」と思っていたのですが、こ...
久々に会ったペルシャ料理店の友人は変わらず元気だった
 お互いにいい歳。出合った頃より額は広くなったし、シワも増えた。  そして、なぜだか年々服装がハデになっていくんだ...
木下優樹菜はイチャイチャ公開…子の将来に悪影響を及ぼす母親の恋愛は?
 元タレントの木下優樹菜(35)が“アクセル全開”、SNSの投稿や出演番組があれやこれやと話題になっている。  た...
子供の言葉遣いが悪い時はどうすれば? 考えられる4つの原因
 子供が保育園や小学校に通い出すと、悪い言葉遣いを覚えて帰ってきます。また、悪い言葉遣いはSNSや動画サイトなどからも大...
“たまたま”の日常♡ この写真にぴったりな名前を選んでニャ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
コクハク専属ライバー コクハクリーダーズ第1期生を大募集!
 日刊ゲンダイが運営する女性webメディア「コクハク」では、メディア制作に協力してくださる「コクハクリーダーズ第1期生」...
金木犀の香りが空前のブーム!甘く懐かしくアンチエイジングに運気UPも
 とある量販店に行った時のことです。入り口付近に黄金色の商品ばかりが並び、遠巻きに見ると店舗全体が黄金色に輝いてみえる。...
タイパ? なにそれ。映画館で初対面の作品と出会う胸のときめき
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...