ニコイチだった目黒蓮「海のはじまり」と松村北斗「西園寺さん」、株を上げたのは…?

こじらぶ ライター
更新日:2024-09-28 06:00
投稿日:2024-09-28 06:00

シンパパ設定かぶりとなった「海のはじまり」と「西園寺さんは家事をしない」

 夏ドラマで“シングルファーザー”設定かぶりで話題となった、Snow Man・目黒蓮さん(27)主演の「海のはじまり」(フジテレビ系)とSixTONES・松村北斗さん(29)出演の「西園寺さんは家事をしない」(TBS系)が、どちらも最終回を迎えました。

 この2作品、設定こそ同じでしたが、全く違うテイストがゆえに、お互いを補完し合ったニコイチ作品として両方見ていた視聴者も多かったのではないでしょうか(以下、ネタバレを含みます)。

「海のはじまり」は中絶や病気といった重い要素があるだけでなく、目黒さん演じる月岡夏が、どうにも絶妙に主体性や決断力が無い、人をイライラさせる、主人公にしては珍しいタイプの男性でした。

 大学時代に無理やり彼に中絶同意書を書かせ、別れを告げてきた元恋人・南雲水季(古川琴音さん、27)にも、また7年後に彼女が亡くなった際には、その母親と同僚にも、めちゃくちゃ厳しいことをたくさん言われました。さらには、その元恋人がひっそり産んでいた彼の実子である娘・海にも、ちょこちょこ無遠慮な鋭い言葉を浴びせられました。

 その上、仕事が出来て、何でもリードしてくれる、とっても美人な年上の恋人・百瀬弥生(有村架純さん、31)とも、結婚目前のお付き合いをしていましたが、娘の突然の出現により、泣く泣く別れる決断に至りました。

 このように踏んだり蹴ったりな経験をしつつも、責任と、父性の芽生えにより、夏が海の父親として2人で生きていく決断をするのが大まかなあらすじで、概ねシリアスかつ暗いトーンで描かれました。


【こちらもどうぞ】期待はずれと面白かった夏ドラマを調査!『新宿野戦病院』をよそにアラフォー世代に刺さったのは…?

「海のはじまり」と「西園寺さん―」それぞれの世界観は…


 月曜から気分がどんよりする「海のはじまり」を見た後、似たようなシチュエーションながら、スッキリ、カラッと前向きに心温まる父子の物語を展開した火曜の「西園寺さん――」で、心の“むー”っとしたものを晴らしてもらった、という視聴者が非常に多かったように思います。

 具体例を挙げると、弥生が一度は海の母親になろうとしたものの、夏との別れを決めたのは、夏と海といると、どうしても自分が知らない、今は亡き水季の存在を突きつけられるようで、疎外感を抱いてしまったからでした。

 一方、「西園寺さん――」では、主人公・西園寺一妃(松本若菜さん、40)に対し、松村さん演じる楠見俊直が、亡き妻・瑠衣の話をしょっちゅうしてしまい、「退屈ですよね、すみません。知らない人の話って」と謝るシーンがありました。それに対し西園寺さんは、「私はもっと聞きたいなぁって思ってる」、「知らない人って言っても、結局は楠見君の話じゃない? 楠見君の中の瑠衣さんの話でしょ?」と、亡き妻を想い続ける楠見をまるっと受け止め包むように返すのでした。

 また「海のはじまり」では、小学校の同級生に母親がいないことを聞かれた海が夏に相談すると、夏は「ママはいないけど、パパはいる」と返し、思うところあった海は家出をしてしまいます。

 夏は、母親はいなくとも2人で頑張ろうという意図でしたが、水季と仲良しだった同僚の元に行った海に、「ママがいた話すると夏君、ママいないって言うの」「ママのこと忘れたほうが良いの? もういないから」と、とんでもなく悲しいことを言わせてしまいました。

2作品がニコイチだった“最大の要因”


「西園寺さん――」でも、自分に秘密の行動を取る楠見と西園寺を不審に思い、娘・ルカが家出をするシーンがあります。その後、楠見から“西園寺さんの事が一緒にいたいほど好き”と伝えられたルカは、「じゃあママ好きじゃない? 一緒にいれないから好きじゃない?」と楠見に尋ねます。

 楠見は「いるよ。ママはパパの中にいるの。これからもずっと一緒にいる」と胸に手を当て、自分の心の中にも、ルカの中にも、ひいては西園寺の中にも、亡き妻が“いる”ことを説いて見せました。

 このように「海のはじまり」では、父親である男性の新しいパートナーや、娘にとって大きな問題となった心の障壁が、答え合わせのように「西園寺さん――」で溶かされてきました。月曜、火曜という偶然の並びでしたが、これが2作品がニコイチであったと思わされる最大の要因です。

 見た人みんなをほっこりハートフルな気持ちにさせ、もとより名優と目されていた松本さん、松村さんの評判がうなぎ上りになった「西園寺さん――」に対し、重い展開と「思っていた目黒君と違う」という理由で、ストーリーと共に主人公演じる目黒さんに対してまで、賛否が分かれたのが「海のはじまり」でした。

 ただ、同じシングルファーザーを演じた松村さんと目黒さんですが、どちらも新境地とも呼べる素晴らしい演技を見せてくれたと思います。

夢のような理想と目をそむけたくなる現実

「西園寺さん――」が絶賛の嵐だったのは、父子家庭の厳しい現実にある楠見に対し、“こんな人いたらいいな”を具現化したような、120点満点の西園寺やその周囲の人々が、理想の世界を構築してくれたからです。

 原作漫画があるように、あくまでも虚構であり、だからこそドラマとしてほっと一息、現実から目を背けさせてくれる作品になりました。

 一方で「海のはじまり」は、ハッキリしない、共感性に乏しい、“顔だけはいいんだけど”と周囲に揶揄される主人公が、必要以上に尖った言葉を向ける厳しい人々に囲まれました。

 娘を勝手に産んでおいて、後で責任を負うよう仕向けた元恋人は身勝手だったし、途中まで母親になろうとした弥生も、西園寺のように大きな愛で主人公を包むことは出来なかったのだろうかとも思います。

 ですが、現実には「海のはじまり」に出てくるような人々の方が多いはずです。人間のリアルが詰まっているからこそ、イライラさせられたり、「怖っ!」と思わされたり、「勝手だな!」とツッコまされたりしました。

目黒蓮、松村北斗とも俳優業でもさらなる高みへ

 特に目黒さんは、これまで演じてきたさわやか好青年や天才的モテ男とは全く異なる夏を、繊細に、とことんまで突き詰めて演じていました。だからこそ、最初は夏にイライラしていた視聴者も、終盤になるにつれ“可哀想”だと我が事のように同情したのでしょう。

 ゆえに、理想郷でシリアスにもコミカルにも振り切った楠見を演じた松村さん、現実世界で“なんかこんな男いるよな”を演じた目黒さん、そのどちらも、今後もオファーが絶えないと確信できる名演を見せてくれたと思います。

こじらぶ
記事一覧
ライター
STARTO ENTERTAINMENT、秋元康系女性アイドル、ローカル、地下アイドル等数々の現場を経験。Xでもご意見を募集しております。

エンタメ 新着一覧


魂のラインダンスに涙、涙…入浴シーンの「四季の宴」趣里、歌うまい!
 山寺でのストライキは団員たちの要求が全面的に受け入れられ、幕を閉じる。  山を降り、ようやくいつも通りの練習を始...
桧山珠美 2023-10-25 16:30 エンタメ
梅丸少女歌劇団による山寺でのダンスシーンはニュースになった“アレ”
 山寺でのストライキが続く中で、大和礼子(蒼井優)はスズ子(趣里)に自分の過去の話をする。両親に反対されて、縁を切ってま...
桧山珠美 2023-10-24 17:03 エンタメ
道枝駿佑“マイハル”の無表情は拙い?いいえ、ラストの笑顔のためだった!
 秋の新ドラマがスタートしています。いくつかチェックしましたが、ミステリーや考察ドラマって疲れて帰ってきた頭と体にはなん...
色恋に敏感なリリー、昭和8年が舞台の朝ドラに「百合」の描写は必要?
 大和礼子(蒼井優)はストライキをするしかないと言い出す。一方、橘アオイ(翼和希)は、お客様が大切だと言い、また、礼子が...
桧山珠美 2023-10-20 16:20 エンタメ
直撃!俳優・藤原大祐の恋愛観「告白するなら年上、1回目のデートで」
 10月20日から全国公開となる新感覚ホラー映画「リゾートバイト」。小さな島の民宿でアルバイトする大学生たちに様々な怪奇...
2023-10-20 06:00 エンタメ
【写真特集】藤原大祐を直撃! ここでしか見られない本編&未公開カット含む全29枚!!
                                        ...
2023-10-20 06:00 エンタメ
労働争議で板挟み…“スズ子の恩人”林部長役・橋本じゅんの意外な一面
 世界恐慌の波が押し寄せ、USKの賃金削減と人員削減が告げられる。一部の楽団員と新人の劇団員は解雇されてしまった。 ...
桧山珠美 2023-10-19 15:40 エンタメ
大和礼子(蒼井優)さまの箴言…誰にも負けないスズ子の個性とは?
 昭和8年。デビューから6年が経ち、スズ子(趣里)は脇役ながら劇団の中心メンバーとして活躍し、新人の教育係にもなっていた...
桧山珠美 2023-10-16 14:30 エンタメ
タバコの逢引き場面にズキュン!“喫煙イケメン”柳俊太郎にやられます
 コンプライアンスなるもののせいで、昨今のドラマはなにかと不自然なことが多いようで。  犯人が車で逃げるシーンで「...
朝ドラ本編とは別にオリジナルの舞台演目フルver.も制作、手が込んでいる
 鈴子(澤井梨丘)は1週間で稽古に復帰し、同期3人で切磋琢磨して稽古を続けた。  単独公演まで1カ月となり、鈴子た...
桧山珠美 2023-10-14 13:30 エンタメ
宝塚からセクシー女優に転身、“芸能人の有名税”となぶっていいのか
 セクシー女優という職業は、昔と比べると女性にとっても身近に感じる職業となってきました。モデルやグラビア、アイドルなど、...
大和礼子(蒼井優)が手渡したトンボ柄の布は…主人公・鈴子そのもの
 公演で橘アオイ(翼和希)の衣装の羽を忘れたことをきっかけに鈴子(澤井梨丘)たち3人は仲違いをしてしまう。  そん...
桧山珠美 2023-10-11 16:15 エンタメ
物語が動き出した2週目、鈴子指導役は宝塚不合格の現役OSK男役スター
 鈴子(澤井梨丘)は梅丸少女歌劇団(USK)に研究生として入団する。鈴子たち新入生は、まず先輩の稽古を朝から見て覚えてい...
桧山珠美 2023-10-09 15:20 エンタメ
ご意見番GACKTがバカなフリしてジャニーズ問題連投の訳、「貝」も得意
GACKT様(歌手、実業家・50歳)  GACKT様はセルフブランディングに余念がなく、常に自身の好感度アップのた...
堺屋大地 2023-11-14 16:25 エンタメ
ジャニーズの看板消滅…北公次のバク転から始まったイケメンアイドルたち
 ジャニーズ事務所の名称が10月17日からSMILE-UP.(スマイルアップ)に変更されるそうですね。頭では理解している...
近藤真彦がジャニーズの長男坊と呼ばれた必然、逃げ上手と無責任のプロ
近藤真彦様(歌手・59歳)  近藤真彦さんことマッチ様と言えば、40年以上にわたりジャニーズ事務所のタレントとして...
堺屋大地 2023-11-14 16:26 エンタメ