老化、苦労、ボトックスとも無縁な御年50のハローキティちゃん

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2024-09-30 06:00
投稿日:2024-09-30 06:00

コンカフェの魔力よ

 かつて恋人に、今度の休みはポケモンカフェに行きたいと言われ、明らかになめた態度で直前に予約をしようとしたら2カ月先までいっぱいで、結局行けなかったことを思い出す。

 みんな、この高揚を知っていたのか。大人も子供も外国人も、キャラクターカフェがこんなに楽しいってことを、知っていやがったのだ。

“キャラ飯”をめぐる攻防戦

 人生3度めのキティブームが到来した姐さんと、それに巻き込まれる形で、にわかキティ信者になった私は、次の時間帯に予約しているガチキティファンが作り始めた行列の殺気に押される形で、ついにキティちゃんの顔に同じ場所からスプーンを差し込んでいた。

 キティ&ミミィ先輩のご好意を無駄にするわけにはいきますまい。それは後頭部である。そこからなら一見、無傷に見える。黒丸2つに三本線の顔を死守しようとする無駄なあがき。DNAに何か組み込まれているのだろうか。

 しかし私には、姐さんのキティちゃんの後ろ頭がばっくりえぐれているのが丸見えである。なかなかにホラーだ。

キティちゃんの世界観にまんまとどっぷり

 そしていよいよ退店時間。慌てて飲み込んだキティちゃんは、脳みそがスポンジとカスタードクリームでできていた。

 そりゃもちろん帝国ホテルのアフタヌーンティーとはくらべものにはならないが、チープでかわいらしい味は世界観を壊さず、なぜか9,000円越えになったお会計にも、まあキティちゃんだし、と納得して店を出たのである。

 次はポムポムプリンカフェで、ポムポムプリンをかたどったオムライスを食べたいな!

新井見枝香
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元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

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