お互いの「子どもの共通点」に愕然。平凡になったのは元彼と私、どっち?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-11-09 06:00
投稿日:2024-11-09 06:00

彼の子どもと名前に「共通点」がある?

 ドライブのBGMは彼の友人が編集してくれたというJ-POPヒット曲集。どれも真央の脇を通り抜けていたものばかりだったが、彼の趣味に合わせるように、あゆのSEASONSを慌てて覚えた。そして30歳の時に結婚…。

 その頃を思い浮かべながら、ソファの上でスマホを眺めていると、学生時代の仲間で銀二との共通の友人・賢雄からLINEが届いた。

『おっつう~』

 川崎で親の代から続く居酒屋を経営している賢雄とは、今でもたまに彼の店で顔をあわせる。映画マニアだが、仕事柄どこか軽さのある陽気な男だ。

 タイミングからして、銀二がこの再会をLINEか何かで告げたのだろう。

 真央は重たい気持ちで既読をつける。適当なスタンプで返信をするつもりだった。しかし、その内容に真央の目がとまった。

『真央の子どもの名前、リンとタケシって本当? 銀二の子供もレオンなんだろ!? やべぇな』

 やべぇな、とは。なにがいけないのか。

 答えを探る中で、しばらくしてやっとその理由にたどり着いた。

銀二が投げかけた「本当の」言葉の意味

 なぜ気づかなかったのだろう、と真央は再び、奇声を発したくなる。

 “武”と“凛”の名は、昔好きだった映画『恋する惑星』に出てくる俳優さんからとった。

 金城武と、ブリジット・リン。学生時代から子どもができたらセットで付けたいと温めていた名前だった。親戚や夫には適当に由来をこじつけ、納得してもらった。

 ――まさか、レオンくんも…?

 武と凛の名前を出したときの反応からして、銀二の息子も、あの映画に由来しているにちがいない。

 適当にあしらっただけでなく、その意味にさえも気づかなかった。

 変わったと言われても仕方ない。

 いや、もう変わってしまっているのだ。身も心も、すべて。

 時の流れに従っていれば人間が変わるのは必然だ。社会性を身に着けて、服装や言動が成長するのもあたりまえのこと。

 だけど自分だけは、どんなに見た目は変わっても、芯は変わらないと思っていた。変わりたくなかった。センスも志向も考え方も、「ちょっと変わり者」を自負していた昔のままであるはずだと。

 そんな、平凡な一般人になりきれない自分も好きだった。

 でも――。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


恐怖の親知らず抜歯!30女が超ビビりながら人生初抜歯した話
 皆さんは親知らずがまだ生えていますか? 筆者は30代になってもすべての親知らずが生えたままです。  歯は大切にしてい...
世帯年収1500万円でも越えられない壁。耐え難い屈辱を喰らった女の選択
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家で2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、ママ友と共に充実し...
え…? 優雅な御茶ノ水ママ友会をブチ壊した、地方出身者の悪気ない一言
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家に住む薬剤師の綾乃。2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、...
千代田区民は“勝ち”だよね。通勤ラッシュを知らない自分は上流階級層の女
――『東京の中心に暮らす、ということ』…なんてね。  鈴木綾乃の頭の中にマンション販売のコピーのような、そんな言葉...
「自責と他責」バランス上手な大人が口癖にしている神ワード
 ここ数年、自責思考・他責思考みたいな話題をよく見かけませんか? 私はもう見るたびに「うるせぇ~!」となっている反面、し...
たまにはこんな日もあるよね? 終電を見送ってしまった夜
 久しぶりの仲間との時間が楽しくて、「あと1杯だけ」「あと10分だけ」を続けていたら終電を見送ってしまった。  だ...
出張ホスト、ママ活、女風…女性の金目当てに上京する男性が増えている!
 近頃は地方移住が話題となっていますが、その逆に「地方では稼げないから上京する」男性も出てきています。  出張ホストや...
ご飯をありがとにゃ! お母さんが大好きな“たまたま”君たち
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
荒れる2024年幕開け 花屋が祈りを込めた「復興と希望」の花束
 2024年が明けました。今年は元旦から思いもよらないことが起こって、まさに辰年。大きな変化の年が始まったようでございま...
暇すぎ死にそう…大きな声じゃ言えないけど仕事中にばれない暇つぶし5選
 同じ仕事でも、忙しいと時間は早く過ぎ、暇すぎると永遠に時計が止まったように見えるもの…。とはいえ、仕事の拘束時間なので...
2024年こそシンデレラボディ!フェロモンジャッジで分かるケア&香り術
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
動物は「あったかい場所」を見つける才能があるみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
私「復縁希望?」女友達「あと2年で吹っ切る」失恋かまってちゃんLINE
 失恋をして心が傷つくと、少しでも誰かに気持ちを聞いてもらいたくなるもの。  でも、あまりにしつこかったり、常識が...
キャンプより安近短なべランピング!楽しむコツ&それでも失敗したエピ
 空前のキャンプブームが到来していますが、やはりイチからキャンプギアを集めてテントを張って…となると、ハードルが高いと感...
見上げた青空が眼に染みて…1日に1回くらいは空を眺めてみる
 青空が眼に染みると思ったら、しばらく空を見上げていなかった自分に気が付いた。  うつむいて歩くのがクセになってい...
「俺のソーセージも試食して」じゃねえ! 40女の成人の日の思い出
 1月8日は成人の日。晴れ着やスーツに身を包んだ新成人たちの姿は、眩しいものです。  成年年齢が18歳に引き下げられま...