したたかな女の「成功談」は嫌われる
ネットを眺めていると『パパ活女の悲惨な末路』がこれ見よがしに提示される。高慢で惨めな女は娯楽として消費されがちだから。
だけど、したたかな女の成功談は耳にほとんど入って来ない。
おもしろくないからだ。あっても、悪意ある表現で語られ、それが一歩踏み出そうとする女の呪いとなっている。
カウンターでひとり、鮨をつまむ友梨佳は格好よかった。
だけど、あのおじは惨めな女だと表現していた。同意できなかったことを思い出す。
「じゃあ、お疲れ様。がんばってね」
サロンから出ようとする友梨佳の背中が目の前にある。
7cmのハイヒールでまっすぐ立つその背中は大きい。距離は近いのに、まだ遠い背中。早く辿りつきたいと、素直に見上げる。
「後悔しないように生きます」
「まぁ、すべてが自己責任だけど」
友梨佳は、ニヤリと微笑んだ。清潔感あるヌードなルージュに彩られた口元から、綺麗にホワイトニングされた歯をちらりと見せて。
自分の選んだ方法で後悔したい
個人的な関係を誘って来たおじには、丁寧におことわりを申し出た。
以降、月を経るごとに連絡は途絶えがちになっているが、それはそれでいい。自分を尊重してくれるおじはまだたくさんいるのだから。
はじめてのギャラ飲みから半年。晴乃は、相変わらずの日々を過ごしていた。変わったのは友梨佳のテストに合格し、お客様の前に立つことができるようになったくらいだ。
色々言う人はいる。
だけど、後悔をするなら自分の選んだ方法で後悔したい。
言われたとおりにして、その選択が間違っても、その人は責任をとってくれない。だから、したたかに、まっすぐに、生きる。
後悔のない人生をしたたかに送ろう
休憩時間、Diorのチャームが揺れるiphoneで、母親へ今朝届いたお米2kgのお礼LINEを送った。
連絡帳を眺めていると、気がつけばここ数カ月、まひなからの連絡が来ないことに気づいた。
サロンにもやって来ない。
この前赴いたギャラ飲みの現場で、太おじに切られたとか、整形に失敗したなどという真偽不明な噂は耳に挟んだが…。
「ま、いいか」
知らせのないのは良い便りだと晴乃は思うことにする。
まひなが後悔のない人生をしたたかに送っているのを願いながら。
Fin
関連記事
ライフスタイル 新着一覧