年上が払う、おごる文化はご勘弁! 割り勘会計で気持ちよくいきませんか

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-01-22 06:00
投稿日:2025-01-22 06:00
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第14話は「年上が払う、おごる文化はご勘弁を」。

後輩だからおごられて当然なわけがない

 更年期について綴る『日日更年期好日』。今回は少し視点を変えて、中高年と呼ばれる立場になってからのモヤモヤを書いてみる。

 10~20代を経て、世間的には局(つぼね)と言われるポジションで仕事をして、当たり前のように後輩が一気に増えた。

 飲み仲間や友人も年下が多いし、特に年齢を気にせず行動していたけれど、周囲の自分に対する視線は少し違ってきている。そのひとつが「年上がおごる」ということ。視線に「先輩なんだからおごってくれるよね?」の期待が集中している。

 地元の静岡県浜松市へ帰省したときのこと。久しぶりに後輩と同年代の友人、3人で飲んでいた。あれこれ話しをして盛り上がり、酔いも回って会計時。伝票が店員から渡されると、後輩がこう言った。

「ごちそうさまでーす!」

 …はて? 飲みの場はすべて割り勘のつもりでいたけれど、彼の感覚は“先輩=おごる”という図式が完成されていたようだ。それは違うだろうと諭し、割り勘会計になった。

 持論だが年齢を理由におごったり、おごられたりしていると、飲みに誘いにくくなる。自分と出かけることで、財布の紐を緩めなくてはいけないと相手に思わせるのは、社交マナーとして成立しないと思う。後輩は「それは都会の常識で…」と酔いながら言っていたけれど、地方と首都圏で事情が違うとは思えない。

【こちらもどうぞ】「更年期じゃね?」「おばさん、更年期(笑)」適当な情報を鵜呑みした女子大生たちが悪いのか?

ごちそうさまは聞きたくない

 こんなこともあった。仕事をしていた某社の年下の担当さんから、飲みの誘いを受けた。私ははい喜んで、と言われた予算ひとり1万円で店を探して、ふたりで中華のコースを食べた。

 会話はそこそこの盛り上がり。が「はて?」はまた会計時に起きる。「ごちそうさまで…いいでしょうか?」と、担当さん。いいわけがない。これはそちらから誘いを受けた、仕事の会食。別に中華を食べたくてきているわけでもなく、親交を深めることが目的だ。

「いや~、最近、我が社も経費が切りづらくて。年上の先生(私)だと支払っていただけることも多いから、つい…」

 解せぬまま、後付けもよくわからない理由を並べられて、私が会計とはなんでしょう? 結局その場は割り勘会計となった。

 後日、担当さんのSNSにはあの日の中華料理が並んでいた。目的はこれだったんだろうか。会計を甘えるのはいいけれど、それならこちらから誘うし、予算も店も自分で設定するのに。

おごられるときの作法

 とはいえ、おばさんでもご馳走になることはある。例えば年商15億円の会社社長に私がおごると言ったら失礼にあたるので、ここは気持ちよくおごられることにしている。

 代わりに…といってはなんだけど、なるべく楽しい会合になるように努める。彼らは飲み会の席でいつも面白い情報を求めている。その情報をタネにして仕事をしているのだから、ここは私の情報量の見せどころ(?)でもあるのだ。

 あとは前述では成立しなかったけれど、メディアでは多い、飲食代を経費精算してもらえるときは気持ちよく飲んで、食べて、終わる。それが以外はすべて割り勘でお願いしたい。

若手におごってもらう時代の到来?

 いつから日本には先輩がおごる風習が根付いたのだろうか。あれこれ調べてみても論拠に乏しい。

 確かに私も後輩時代におごってもらった記憶はあるけれど、今から20年前の出版業界(元々出版社勤務です)は、令和と比べて圧倒的に景気が良かった。スマホを持つような利便さはなかったけれど、物価指数も今ほど高くなかった。

 そのうえ“おばさん”と言われる年齢になると、生活費以外にやたらお金もかかる。よくこの連載でも書いているが、更年期になれば婦人科に通い、漢方薬やホルモン剤のために多額の費用を払う。ほかにもリラクゼーションではなく、治療として鍼にも通う。

 そういえば最近、昔の銀歯が劣化して新しく変えることにもなったっけ。とにかくおばさんは金がかかるのよ。

 40~50代の賃金に未来が見えなくなる中、大卒初任給が36万円で年収500万円の企業も出てくるという。以後、若手におごってもらう…という風潮に変わってくれないだろうか。

 次回(#15)へ続く。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


自然の石を積んだ石垣でできた江戸時代から続く「棚田の村」
 見知らぬ土地で、山道を越えて現れた見事な石垣に圧倒される。ここまで積み上げる労力を想像すると途方に暮れるし、これが自然...
妙齢って何歳? 三省堂 現代新国語辞典のいまっぽい凡例に注目
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
#3 結婚で“輪”から去る友人への寂しさ。心地よい独身生活で失ったもの
【#2のあらすじ】  ミュージシャンの沙恵は高円寺に暮らし、毎晩芸人の卵や音楽仲間と飲み歩いている。高円寺はうんざ...
#2 友達の結婚、喜べないのはなぜ? 勝ち組を裏切りだと感じてしまう記憶
【#1のあらすじ】  ミュージシャンの沙恵は高円寺に暮らし、芸人の卵や音楽仲間と毎日飲み歩いている。高円寺はうんざ...
「最終的には学歴!」すごいですねー(棒)高学歴義母のマウントLINE3選
 義母が高学歴だとなんとなく上品でスマートな人柄が連想されますが、現実では学歴の高さと人格は比例しないようです。実際には...
2023-12-16 06:00 ライフスタイル
#1 夢を諦めきれない32歳の女。高円寺で燻る芸人らと酒に溺れる日々
 この街は、まるでネバーランドだ。  いつもの店に行くと、いつもの仲間がいて、相変わらずのバカな話で盛り上がれる。...
母親が施設から帰ってくる夢…認知症の予兆を「ボケたな」で済ませない
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
おひとり様全盛時代でも? 老後こそ“コミュ力”がものを言う
 ぶっちゃけ、私はあまり人づきあいが得意なほうではありません。一人のほうが気を遣わなくていいし、楽だから。  これから...
ムーミン好き必見!ESSEの時短レシピ&開運グッズ付録など使いこなす術
 今回ご紹介する雑誌付録は、「ムーミントラベルポーチ3点セット」と「別冊付録:保存版!ESSEのBest時短ベストおかず...
同僚のボールペン“カチカチ”に敏感反応!繊細すぎる人へのLINEどう返す
 世の中には、人一倍豊かな観察力や感受性を持つ人も存在します。そうした人は「優しい」「気遣いができる」などの長所をたくさ...
黄金色の葉と朱赤の柿の景色 心まで秋色に染まるような日
 秋は色鮮やかな季節。まるで黄金色のイチョウの葉、鮮やかな朱赤の柿。  心まで秋色に染まるような日だった。 ...
「何で後ろから撮るにゃ?」“たまたま”の質問攻めにきゅん♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
年末大掃除、夫が戦力にならない…今年こそやる気を出してもらう方法4つ
 年末の大仕事といえば、家の大掃除ですよね。やはり、一年の汚れを綺麗にしてから、新しい一年を迎えたいものです。でも、何か...
コスパ最強!シクラメン超長生き育成術、この冬は美しい姿をキープさせる
 暖冬にも程がある2023年師走ですね。  カントリー風情たっぷりの立地にある猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花...
日用品は見た目も大事よね♡ 好みの香りで良質な睡眠時間を
 コクハクリーダーズ1期生の「あんず」と申します。今回、ワクワクしながら新商品を使う機会に恵まれました。  日常生活で...
2023-12-16 17:32 ライフスタイル
「見慣れる」ってこわい 散らかった部屋を眺めて考えたこと
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...