更新日:2025-02-08 06:00
投稿日:2025-02-08 06:00
【横浜の女・林 愛子33歳 #1】
冬の突き刺すような西日が差すリビングに、不安げなマウスの音が響いた。
時計の秒針が12を指したことだけを確認し、愛子は刺繡をする手元に目を戻す。肩を寄せてパソコン画面をじっと見つめる夫と娘を、ただ背中で見守っていた。
とりあえず何も考えないように。それだけを、ずっと考えながら。
「合格だ!」
飛んで行きそうな甲高い声に、思わず振り向く。
「やった! わたし、やったよ」
嬉しそうにおろおろ震える娘と、言葉さえ失ってただ彼女を抱きしめる夫の姿がそこにはあった。
合格した娘を祝えないのは…
ずっと見たかった、はじける娘の笑顔――親という贔屓目なしに見てもとても美しかった。12歳でこうなのだから将来はさらに磨きを増すのだろうか、と他人事のように思ってしまう。
「ねえ、ママ、合格したよ」
彼女が母親の祝福を求めているのを肌で感じた。その長いまつ毛の大きな瞳に愛子は根負けする。
「おめでとう…」
「ねぇ、もっと喜んでよ。わたし、がんばったんだよ!」
もっともだ。人生で、最初で最大の困難と言われる中学受験に挑んで、勝利を得たのだから。
しかも第一志望の超難関校に。
仕事人間の夫でさえ面接の日は勿論、今日の発表も仕事を休み結果を見守るくらいだ。普通の親であれば天に昇るくらいの気持ちなのだろう。
だけど、愛子はうまく笑えなかった。
なぜなら――。
ライフスタイル 新着一覧
忙しい日々の業務中、無駄な会議やミーティングが差し込まれると「それ、私が出る必要あります?」とイラつくことも正直ある。...
男から見て「みっともないな」と感じるような女性の特徴、みなさんご存じですか? 男性って意外と女性のことをシビアにチェッ...
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
特にJK界隈がソワソワする卒業式シーズンに突入です。自分がもらう側の卒業生であっても、彼氏に、彼女に、そして仲良しのお...
女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
令和の今、昭和の価値観を引きずった「昭和おじさん」に違和感を抱く人は少なくありません。特に仕事の場面では、上司である昭...
不注意でどこか抜けているうっかりさんは、周囲に迷惑をかけてしまう人が多いですよね。でも、本来なら被害を被って怒りたいと...
先日、愛猫のもんさまが亡くなりました。苦しむことなく、穏やかで立派な最期でした。
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ママ友の世界には、周囲に取り巻きのママ友を引き連れて威圧感を与える「ボスママ」が存在します。みんなに慕われるリーダー的...
【連載第90回】
ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場!
「しっぽのお...

知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
友達や同僚、彼氏など、身近な人から重い話をされたとき、大抵は「力になってあげたい」と思うはず。
でも時間がなかった...
横浜に暮らす経営者の妻の愛子。小学生の長女・美愛と横浜山手御三家と呼ばれる女子校に狙いを定めて、中学受験に臨んでいる。...
横浜に暮らす経営者の妻の愛子。長女の美愛はまだまだ甘えん坊の小学生。横浜山手御三家と呼ばれるお嬢様女子校に狙いを定めて...