「文春砲」炸裂の裏に喜田村洋一弁護士あり “守護神”が見守ったスクープ連発の舞台裏

更新日:2025-03-02 17:03
投稿日:2025-03-02 17:00

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

 喜田村洋一弁護士は文春砲の「守護神」といわれる。

 文芸春秋の顧問弁護士で、週刊文春が数々のスクープを放つことができるのは、彼の存在抜きにはあり得ない。

 花田紀凱が文春編集長時代から関わっているというから、40年ぐらいにはなるだろう。私が週刊現代編集長時代(1992~97年)には「文春の喜田村」の名は既に週刊誌業界にとどろいていた。

 その喜田村弁護士は、岩波書店から「報道しないメディア」(ジャニーズ性加害問題をめぐって)を上梓したばかりだが、サンデー毎日(3月2日号)のインタビューで、文春報道の舞台裏に触れている。

 どんな仕事をしているのかと聞かれ、

「こういうテーマで取材しようと思っているが、名誉毀損にならないためには何にどう注意すべきか。こんな情報を得たが、これ書けますか、といった相談に答えることだ。重要なのは、題材、トピックの社会的公共性だと思っている。離婚や不倫も一般人なら別だが、政治家や公人なら意味を持ってくる。原稿もチェックする。言葉遣いにも節度が欲しい。そこまでやっているメディア弁護士はあまりいないのではないか」

 文春砲はなぜ強いのか?

「組織的な取材で、きちんと事実関係を押さえているからだ。例えば、19年参院選を巡る河井克行、案里夫妻の選挙違反事件の時は、50人しかいない記者のうち13人を一斉に走らせ、(法定上限を超える報酬を支払った疑いで)ウグイス嬢ら関係者に対して同時刻に事実関係をあてた。言い逃れや事後調整を許さない取材で、脈々と受け継がれてきたノウハウでもある」

 情報を持ち込めば文春はしっかり取材し、書いてくれるという評価が確立し、筋のいいタレコミや内部告発が文春に集まるようになったのである。

 私がいた社にも顧問弁護士はいた。だが、その多くは法曹界の元重鎮で、私のような若造編集者が相談に行っても「そんな取材はやめておけ、訴えられるぞ」というだけで、聞いてもらえなかった。

 古い話を持ち出して恐縮だが、週現編集長の時に「オウム真理教麻原彰晃被告の自白調書」というスクープをやった時のことだ。その年の3月にはオウムによる「地下鉄サリン事件」が起き、5月には麻原を含めた幹部たちが逮捕された。

 調書は麻原の元主任弁護人から入手したものだった。大手メディアの何社かは同じものを手に入れていたが、警察や検察は「自白調書などない」と発表していたから、恐れて出せるはずもない。

 私は、これを1996年の新年合併号で独占掲載しようと決めた。だが、当時の顧問弁護士は「ヤメ検弁護士」だった。彼に話すと烈火のごとく怒り、止めようとした。だが、諦めきれなかった。一晩考えて、政府がオウムに破防法を適用しようとしているが、その是非を考えるために、調書を公開することには高度の公益性があるという理屈を捻り出し、早朝、専務に「やらせてください。(止めていた)輪転機を回します」と電話した。

 メンツを潰された東京地検は、麻原に「秘密漏洩罪」で私を訴えさせるという“禁じ手”まで使って、社をガサ入れすると司法記者たちにリークした。ガサ入れは社としても困る。仕方なく私は、深夜、社の某所で検察の人間と会い、調書のコピーを渡した。入手先は言わなかった。報道の自由は踏みにじられた。当時、喜田村弁護士だったら何とアドバイスしてくれただろう。聞いてみたかった。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

エンタメ 新着一覧


【おむすびにモヤっと】結ちゃん不在2週目。米田家、居候たちの部屋割りはどうなっているのか?
 結(橋本環奈)は、歩(仲里依紗)やチャンミカ(松井玲奈)がやっている古着ショップに泥棒が入ったことを翔也(佐野勇斗)に...
桧山珠美 2025-01-31 16:57 エンタメ
2025年冬ドラマ「火曜放送枠」はイケメンが大量発生!最大の楽しみは…
 冬ドラマがスタートしています。皆さまもうお気づきでしょうか。火曜が凄いことになっていることを。ゴールデンから深夜まで、...
【おむすびにモヤっと】歩の音痴設定が消えたご都合主義。未視聴でも困らない1週間だった
 ひみこ(池畑慎之介)が米田家の面々を一斉に呼び出し、チャンミカ(松井玲奈)の店を襲った強盗犯は歩(仲里依紗)だと言う。...
桧山珠美 2025-01-25 06:00 エンタメ
キンプリ永瀬廉が菊池風磨超え!? 主演ドラマ「御曹司に恋はムズすぎる」ポンコツナルシストのギャップが圧巻
 2025年冬期ドラマが順次スタートした。King & Prince・永瀬廉(26)が主演を務める「御曹司に恋はムズすぎ...
こじらぶ 2025-01-25 06:00 エンタメ
THE RAMPAGE藤原樹、日本酒擬人化ドラマで「違いの分かる大人になりたい」メンバーへのクレームも告白!?
 THE RAMPAGEの藤原樹さん(27)が連続ドラマ初主演を務める『あらばしり』(木曜24時59分~、読売テレビほか...
望月ふみ 2025-01-23 06:00 エンタメ
『東京サラダボウル』松田龍平の発音に異議あり!中国関係者のリアルな声
 1月よりスタートしたドラマ「東京サラダボウル」(NHK)。「クロサギ」の黒丸による同名漫画を原作とした本作は、外国人犯...
【おむすびにモヤっと】ヒロイン不在中にやりたい放題? スピンドラマでも歩の言動に高低差ありすぎ
 ルーリー(みりちゃむ)は、歩(仲里依紗)が東日本大震災で被災した人たちに何ができるか今も悩んでいることを愛子(麻生久美...
桧山珠美 2025-01-22 17:30 エンタメ
“国内唯一”弁護士芸人・こたけ正義感に刮目! 話題沸騰ライブ『弁論』は「袴田事件」ネタで度肝を抜かれた
 弁護士芸人・こたけ正義感(38)の単独ライブ「弁論」が話題となっている。かつて年間100本以上のライブに出演し、自身も...
帽子田 2025-01-22 06:00 エンタメ
あのちゃん、もうコミュ障じゃないでしょ。特番で見せた「普通の芸能人」への進化にガッカリ
 ブッ飛んだ不思議ちゃんキャラで人気を博しているアーティスト・タレントの「あの」ちゃん。  2021年、『水曜日の...
堺屋大地 2025-01-21 06:00 エンタメ
【おむすびにモヤっと】管理栄養士勉強中のテイで撮影抜け→既報の下関デートに繋がった放送回
 結(橋本環奈)の家に福岡でギャル仲間だったルーリー(みりちゃむ)が、突然訪ねてくる。  話を聞くと、勤めていた福...
桧山珠美 2025-01-20 17:30 エンタメ
イケメンな「NEXT中居正広」は誰? 即戦力、対抗馬、野球枠…余人をもって代え難しは幻なり
 あの中居正広(52)がこんなことになるなんて、誰が予想できたでしょうか。  昨年12月にソニー生命保険が発表した...
【おむすびにモヤっと】すべては結のおかげ、動かずして感謝されるヒロインの今後は?
 2012年1月17日。結(橋本環奈)は神戸で両親や商店街の人たちと17年前の阪神・淡路大震災の犠牲者を追悼して黙とうす...
桧山珠美 2025-01-31 16:57 エンタメ
【おむすびにモヤっと】結の出産も大震災直後の描き方もショートカットが凄まじい…米田家の呪いはどうした?
 テレビを見て、東日本大震災が発生したことを知る結(橋本環奈)たち。歩(仲里依紗)は被災の映像を見て呼吸が荒くなり、そば...
桧山珠美 2025-01-15 18:30 エンタメ
冬ドラマを調査!炎上騒動『べらぼう』への評価は? 『ホットスポット』や『御上先生』への期待も聞いた
 2025年冬ドラマが続々とスタートしました。まだ初回放送前の作品もあるなか、それでも今期のドラマに期待している人は多い...
【おむすびにモヤっと】“不揃い”な春キャベでロールキャベツ? 平成のバカップルにこうのとりが…
 2010年春、結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)は大阪のアパートで新婚生活を始める。家事を分担しながら共働きをして公私と...
桧山珠美 2025-01-13 18:30 エンタメ
横浜流星は“まだ誰のモノでもない”感も含めて尊い! NHK大河が「べらぼう」に面白い
 NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」がスタートしました。主人公の蔦屋重三郎を...